米国の退職金制度改革から学ぶ:日本の人事担当者が知っておくべきこと

皆さん、こんにちは。今日は、米国の退職金制度に関する最新の研究結果と、そこから日本の人事担当者が学べることについてお話しします。

参考:https://www.shrm.org/topics-tools/news/how-to-tweak-401-k--programs-for-fairer-outcomes

401(k)プログラムとは?

まず、401(k)プログラムについて簡単に説明しましょう。これは、日本の確定拠出年金制度に似た、米国の退職貯蓄制度です。従業員が給与の一部を積み立て、雇用主がそれにマッチングして拠出するのが一般的です。

現状の問題点

最近の研究で、この401(k)プログラムに予期せぬ問題があることがわかりました。

  • 黒人やヒスパニック系の労働者、低所得家庭出身の労働者は、相対的に低い割合しか積み立てていない

  • その結果、雇用主のマッチング拠出の恩恵を十分に受けられていない

  • 早期引き出しによる税金のペナルティも、これらのグループに不利に働いている

つまり、善意で設計された制度が、実は格差を拡大させているのです。

提案されている解決策

研究者たちは、以下のような改善策を提案しています:

  1. 雇用主の拠出方法の変更

    • 現在:従業員の拠出額に応じてマッチング

    • 提案:従業員の給与に対して一定割合を拠出(従業員の拠出額に関係なく)

  2. 税制優遇の仕組みの変更

    • 現在:退職貯蓄に対する税制優遇

    • 提案:政府が一回限りで各従業員の口座に拠出

これらの変更により、人種間や世代間の退職貯蓄格差が大幅に縮小すると予測されています。

企業ができること

制度の大幅な変更を待たずとも、企業ができることはたくさんあります:

  • 全従業員に退職貯蓄の重要性を教育する

  • 自動加入制度の導入

  • 金融ウェルネスプログラムの提供

  • 従業員のニーズに合わせたサポートの提供

日本の人事担当者への示唆

では、この米国の事例から、日本の人事担当者は何を学べるでしょうか?

  1. 制度の意図せぬ影響を注視する

    • 全従業員に平等に見える制度でも、実際には特定のグループに不利に働くことがある

  2. データに基づいた制度設計

    • 定期的に制度の効果を検証し、必要に応じて調整する

  3. 従業員教育の重要性

    • 制度があっても、理解されていなければ効果は限定的

  4. 多様性を考慮したアプローチ

    • 従業員の多様なバックグラウンドや経済状況を考慮した制度設計が必要

  5. 金融ウェルネスへの注目

    • 退職貯蓄だけでなく、総合的な金融健康度の向上をサポートする

おわりに

米国の事例は、私たち日本の人事担当者にとっても多くの示唆に富んでいます。制度の「公平さ」を表面的なものだけでなく、実質的な結果の面からも考える必要があることを教えてくれています。

皆さんの会社の福利厚生制度は、本当に全ての従業員に公平に恩恵をもたらしていますか?今一度、検討してみる価値があるかもしれません。

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