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読書記録|窪田新之助/山口亮子『誰が農業を殺すのか』

読了日:2023年4月19日

 農政の怠惰、JAの既得権益、法の障壁、政党との癒着…
 どこの業界にもあるような悪辣な絡み合いが農業の世界にも存在していて、「またか」と呆れてしまう。
 人が生きるのに絶対的に必要な農作物、これを取り巻く環境がこんなに私利私欲に塗れていては、もしもの時に日本は保たない。

 日本の食料自給率は38%(2021年)。コメに関してはほぼ100%ではあるが、小麦16%大豆6%などで、殆どを輸入に頼っている。
 驚くべきことは、日本人の食生活に欠かせない醤油や味噌、豆腐、納豆などの原料である大豆の自給率がたったの6%ということだ。
 また、家畜の飼料である大豆、菜種、とうもろこしなどに至っては殆ど輸入に頼っている
 ここで一つ疑問に思うのが、例えば牛の餌となるのは本来は牧草だが、穀物主体の「濃厚飼料」としてるのは何故なのか?
 ”栄養価が高いから”という理由で与えられているが、本当にそうなのか?牛の本来の主食が健康な牛を育てるために一番理想的なのではないか?
 この辺りの内情は、故・関岡英之氏著の『国家の存亡』、『拒否できない日本』を読めば見えてくることがある。

 これらを踏まえ、極論ではあるが何かを発端に輸入農産物を止められることがあったら、日本は生き残っていけるだろうか?
 食料自給率38%の日本で兵糧攻めなどされようものなら、もちろん自分たちの食料も危機に陥るし、それ以前に家畜を育てる輸入飼料も手に入らない、なんてことにもなりかねない。
 日本という国はあっという間に滅びて、どこかの国の植民地にになるのではないか。
 私はそれぐらい危機を感じている。

 たまに農業を営んでいる方と会話することがあるが、種子法廃止種苗法の誤解には辟易してるようだ。
 (あらゆることに言えるが)間違った情報がSNSで拡散され、それが農政の悪態に加え更に農業と国民の意識を混乱させている
 そのあたりのことも、この本で詳しく、そしてわかりやすく説明されている。

 どんな政策にも”反対派”は一定数いるが、それは与党に反発したいだけの政党潰し+SNSによってそれにうまく煽動されてしまった国民、という組み合わせて成り立ってることが多い。
 もちろん、悪政を正すための”反対派”の場合もある
 国民である私たちは、そのあたりをよく見極める力を持たなければならない。
 この本で、その答え合わせをしてみてはどうだろうか。

 少なくとも、「食糧難に向けてコオロギを食べよう!」なんてキャンペーンに付き合ってる場合ではない。

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