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早稲田精神昂揚会:インタビューサークル、サークルインタビュー vol.9

人物研究会サークル横断インタビュー。今回は“現代に生きるバンカラ集団”早稲田精神昂揚会さん。今年は・・・明治153年だっけ?

談○早稲田精神昂揚会
  飯久保正幹事長、敷嶋副幹事長(広報)

取材○人物研究会(世羅、瀧澤、篠崎)
構成○人物研究会(世羅、瀧澤)

幾時代ありまして

──先ずは早稲田精神昂揚会さんがどういったサークルなのかを伺えますか?
飯久保 全国唯一の学風昂揚サークルですね。学ランが象徴的ですが早稲田の元々の学風を絶やさずに形としても理念としても続けていこう。大雑把に言えばそういったサークルです。
──昂揚会さんが掲げる「早稲田精神」とは?
敷嶋  確かに我々は「早稲田精神」を掲げて日々行動しているのですが、同時に「早稲田精神とは何であろうか」を模索し続けてもいます。これは「早稲田精神研究」と呼ばれ、早稲田大学三大行事の「本庄~早稲田100キロハイク」(※1)や「夏合宿」を終えた秋の総会の時には「早稲田精神とは何か」をテーマに会員個々人が研究発表をしています。それを基に全員が「早稲田精神」への考えを深めていく。……。まあ「早稲田精神」とか適当なことを言って好き放題にやっているみたいな感じなんですけど。
飯久保 これは凄く難しい問題です。早稲田精神昂揚会は昔、早稲田精神研究会という名前だった時期もあるんですよ。「早稲田精神」を学内に伝播させるより一人一人が自分の中で答えを出すサークルだったんです。敷嶋が言った「早稲田精神研究」では色々な答えが出ますがサークルとして「これが早稲田精神だ」と言える答えは未だに出ていない。一年生はこれまでの「早稲田精神研究」を綴った研究成果が見られるので、そこはもう入ってみるしかないという感じですね。
──新入生は「あの学ランの人達は何だろう?」と思うかもしれませんが、昂揚会さんは早稲田生の注目と人気を集める特異なポジションですよね。大学内でこのような立ち位置になったのはいつ頃からなのでしょうか?
飯久保 学ランが大学の制服だった頃から昂揚会は続いています。我々が異端になったのは早大生が学ランを着なくなってしまった頃かな。確かに僕らの学ラン姿は何も知らない人からしたら「あの格好は何?」となってしまうので。
敷嶋  諸説あるのですが、周りが西洋のハイカラにどんどん様変わりしていく中、我々が学ラン、角帽、高下駄を身にまとってバンカラな行動をとる姿が時代とのギャップを生み出し注目されてきた。言わばアンチテーゼですね。他にわかりやすい理由としては100ハイの存在が大きいんじゃないかな。そもそも100ハイの前身はアメリカ横断なんですよ。昂揚会員が東海岸に行くつもりがうっかり西海岸に行ってしまった。それじゃあ仕方ないからこのまま東海岸まで歩いて行くかって。昂揚会員は早稲田駅の出入り口でしか東と西って概念を使わないので東海岸と西海岸もそれくらいの距離だと思って歩き始めたら死ぬほど遠かったという。でもすごい日数をかけて結局横断しているんですけどね。
飯久保 ケネディに会いに行ったらしいです。
敷嶋  でもケネディは「そんなバンカラな奴がおるんかっ!」とニッコニコで出迎えようとしていたところを暗殺されたらしいです。
飯久保 まさに「昂揚会に会うゾー!」って時に暗殺されてしまったので。アメリカの諸勢力から昂揚会が危険視されているから暗殺されたという説もあるくらいですね。
敷嶋  なんやかんやそんな事をしている内に昂揚会のイメージが出来上がったんじゃないでしょうか。
飯久保 アメリカ横断は昂揚会ができてすぐの頃なのでこの話が早稲田で広まってなのかな?まあ昂揚会が何かしたというよりは周りの早大生がバンカラからハイカラにシフトしていき我々が残った感じですかね。
──昔は皆がバンカラだったと。
飯久保 そうですね。学生運動もありましたし。
敷嶋  「昂揚」という文字は昂らせていく、気持ちを盛り上げるという意味がある。失われつつあるバンカラをもう一度我々の手で温めていこうといったところですかね。……。そういうのを大義名分にして好き放題やっているのが目立ち過ぎているのかな。昂揚会も昭和、平成を経て令和。令和はどうしようかなという感じですね。

TOUGH BOY

──サークルとしての昂揚会さんのアピールポイントをお願いします
飯久保 アピールポイント?先ず男子はオールワセダ。女子はインカレ。昂揚会は顔選もあって毎年100人は応募が来るから倍率は10倍くらい。イケメンが好きな人達には良いのかなって思っていますね。
──インカレ女子は現在何名ですか?
敷嶋  インカレ女子は居ないです。
──インカレ女子の応募はどれ程でした?
飯久保 今年は何人だっけ?58人……?
敷嶋  全員早稲田精神足らずで落としたので。
──他大の女性にも早稲田精神を求めている?
飯久保 それはもちろんですね。前例が無い訳ではないですね。OB会にも偶にOGが来たりします。まあ顔に自信がある方はどうぞ。
──アピールポイントは皆さんのお顔ということですね?
飯久保 そうですね。顔面偏差値です。
敷嶋  あと僕達は肉体が屈強な人間を求めています。昂揚会は「夏合宿」で300~400㎞は歩くので屈強な新人じゃないとへたばってしまう。去年は島根の出雲大社から福岡の博多までを10泊11日で踏破しました。……。まあ普通の奴が「夏合宿」で結構強くなったりしていますんで。
──昂揚会独自のトレーニングがあったりします?
敷嶋  当然あります。新人は「敷嶋メソッド」で鍛えます。
飯久保 そもそも我々の学ランは特注品で一着30kgあるんですよ。
──えぇ〜!?
飯久保 僕ら常に学ランを着ているじゃないですか?これは昂揚会から支給されていて日々着ているだけで鍛錬になるんです。普段は言わないんですけど学ランは鍛錬のために着ています。
──30kgもあると洗濯が大変そう。
飯久保 学ランの裏地にポケットが付いていまして。そこに純金製の重りを入れる仕様なので洗濯するときは重りを抜いてという感じですね。
──見た目より随分お金が掛かっている……。
敷嶋  下駄も実は鉄下駄ですね。
飯久保 あとは早稲田精神昂揚会の正会員が付けている徽章も15㎏あるので総重量50㎏届く位?
敷嶋  早稲田を闊歩しているだけでも肉体が強靭になっていくということです。
──本当ですか?
飯久保 え?なにがですか?どこがですか?
敷嶋  アピールポイントはこんなところかな。

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飯久保正幹事長(中央)と敷嶋副幹事長(左)

バカサバイバー

──昂揚会さんに代々伝わる事件やエピソードはありますか?
飯久保 迷いますね。どこまでお話ししていいのか。
敷嶋  本当に色々あるからな。
──お二人のお気に入りをお願いします。
飯久保 お気に入りか。「琴ヶ浜パージ」いくか?もう時効だろ?
敷嶋  いや、アレは反社だよ。
飯久保 駄目か?俺はアレしか思い浮かばない。もう溶けて消えただろ?
敷嶋  アレが気になる方は「ぜひ入会を」って感じよ。
飯久保 じゃあ何言う?粗相関係?
敷嶋  それはあまりにも昂揚会の日常が過ぎるでしょ。
飯久保 色々あるんだけど、こう言われてみるとなあ。
敷嶋  ええと。昂揚会は世代毎に特色があるんです。数年前には伝説のポケモン並みのガタイの人間しかいなかった武力強めの頃があって。その年の「夏合宿」は山だったんですよ。それで「夏合宿」には界隈(※2)の方々が「救援物資」を送ってくれるんですけど、その中に昂揚会でも見たことない巨大な焼酎瓶となぜか緑色の着色料の粉末が入っていて。当然、緑色の焼酎ができあがる訳です。
飯久保 通称「カクテル昂揚」ですね。
敷嶋  物凄い炎天下の中で山道を歩きながら○○さんという方がその「カクテル昂揚」をごくごくと飲んでいたんですが、突然倒れたかと思ったら毒々しい緑色をしたものを噴き出したので急いで病院に担ぎ込んだんです。
飯久保 昂揚会の「夏合宿」には規則があるんですけど、その中に「一日の飲食に掛けていいお金は100円」っていうのがある。
敷嶋  とりあえず病院の前までは運んで来たけど「点滴は飲食に含まれるのではないか?」とその場で議論になってしまったんですね。
飯久保 ぶっ倒れた○○さんの点滴代が「夏合宿」の規則に適用されるのかどうかで揉めたという話ですね。
敷嶋  昂揚会の「夏合宿」は外部の参加者も募っているんですよ。その時は昂揚会以外の良識がある人が参加されていて。その人が「人命が掛かってんだぞ!!!」って言ったのでなんとか点滴が許されて一命を取りとめたそうです。その後、○○さんは身内の不幸があってそのまま帰ったらしいです。これが近年のバンカラな事件ですね。
飯久保 この場でお話しできるのはこれくらいという感じです。
敷嶋  他の話はとても世間様には公表できないですね。

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夏合宿の写真をお借りした。「救援物資を受け取る昂揚会員」。詳細不明。

だまって俺についてこい

──昂揚会さんはどんな新入生を求めていますか?
飯久保 とりあえずやる気のある奴は応募してこい。あとは我々が判断するのでどれだけ倍率が高くても挑戦してほしい。
敷嶋  早稲田を愛して止まない。昂って昂って仕方がない。そんな熱意のある新入生が来れば自分たちは歓迎するんで。己を変えるつもりで来てほしい。
──新型ウイルスで新歓が中止になりました。昂揚会さんではどのような対応を?
飯久保 昂揚会はその性質上、他のサークルのようなオンラインでの新歓はしていません。SNSは更新していますが新歓は終息したら改めて行います。それまではサークルを安売りして新入生に媚びる真似はしないです。
敷嶋  やはり新入生には大学構内に入れるようになってから直に我々の姿を見てもらいたい。参考までに昂揚会のツイッターでこれまでの新歓ブースが見られますけどね。当時の幹事長が釣り竿に自分の現金とクレカをぶら下げて新入生を釣っていたり、現金とクレカはそのままどっかにいったんですけど、お湯を沸かしたドラム缶を構内に持ち込んでシャンプーのサービスをしたり。
飯久保 オンラインだと新入生に変な先入観をもたれてしまう。
敷嶋  オンラインで小出しにするよりいきなりインパクトある方がいい。そうやって60年以上続いてきた伝統がある。
──もし現在、新入生から連絡が来たら?
飯久保 LINEの新入生用グループに入って待機してもらっています。来るものは拒みません。
敷嶋  ツイッターのDMを受け付けています。そこら辺の昂揚会員でもいいですし、早稲田精神昂揚会のアカウントでも。いつでもウェルカムです。
飯久保 メールアドレスは僕に繋がっているので。連絡が取れれば手段は何でも構わないって感じですね。
──ツイッターでも注目度が高いですよね。その秘訣は?
飯久保 先代が積み上げてきたものが大きいです。
敷嶋  主にツイッターを運用しているのは副幹事長・広報担当の僕です。僕は昂揚会のツイッターを10年遡り研究したのですが当初から注目を集めていた訳ではない。ただスタンスが現在まで変わっていない。昔から馬鹿な投稿しかしていない。あとは広報担当が代替わりしても「おすおす、昂揚会だ」とかもはや伝統様式になっているフレーズがあること。やはり先代からの積み重ねですね。
飯久保 昂揚会の「近寄り難いけど面白い」と思われている部分が遠巻きにでも気軽に見られるSNSに合っているんじゃないかな。
──今年はさらに注目度が増している印象です。昨年のテレビ出演の効果ですかね?
敷嶋  それは広報担当の敷嶋の腕がいいということで。ありがたい限りですね。まあメディアへの露出は要因かもしれません。実は今年もテレビの取材が来るんじゃないかと春休みはずっと大隈講堂の前で寝泊まりして過ごしていたんですがテレビはコロナの方に行ってしまったようですね。悔しい限りです。
──新型ウイルスの影響がある中で今年度はどういった活動を予定していますか?
飯久保 大きなイベントは時期をずらして開催します。秋までに収束していたら9月に新歓をして、100ハイや合宿も時期はイレギュラーにはなりますが行います。
敷嶋  欲張って全部やろうかなと。例年とは違う形で半年間に詰め込みますよ。何ならもう一個面白いことを増やしてやりたい。早く終息して早稲田で何か出来る日が楽しみです。
──今回はオンラインにも関わらずお二人はやはり学ラン姿です。新型ウイルスの流行で外出を自粛してお部屋で過ごしている早大生に向けて昂揚会さんから「早大生はお部屋でこう過ごすべし」というのを教えて頂けませんか?
飯久保 家にいても早稲田精神を昂揚させられる方法ですね。それは……。
敷嶋  何と言っても一日5回大隈銅像の方角に向かってお祈り!そしたら次に校歌と『紺碧の空』を大隈銅像の方角に向かって唱える。これで常に「早稲田!あっ目の前に大隈銅像がきたあああ!」となります。早稲田が目の前に広がってきますね!
飯久保 大隈銅像は偶像でもありまして。僕らは大隈銅像に足を向けないです。例えば新歓ブースの時を撮影した動画を検証してほしいんですけどね。一日5回はきついなって人は学ランを着ればいいんじゃないですかね?僕らは寝るときも学ランですからだんだん汚くなって黒くなってしまいましたね。
敷嶋  それも面倒ならえんじ色の服を着てください。
──人研員が偶然にもえんじ色の服を着ています。
敷嶋  それが早稲田精神!
飯久保 わかっていますね。
敷嶋  やっぱりえんじ色着ると健康的になるんで!
飯久保 格式でいえばやはり学ランなんですけどね。まあ簡易的な礼装としてね。
敷嶋  学ランといえば実は昂揚会では下駄を販売していまして。裏に早稲田の文字を焼き印してあります。
──お値段は?
飯久保 3,400~3,500円。増税の影響で値上げをするかを検討中です。一つ一つオーダーメイドで作っているので値は張りますが月に1、2個売れています。
敷嶋  こういった感じで早稲田を身近に感じて頂ければと思います。

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昨年は「モヤさま」に出演。昂揚会の日常。

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焼き印された「下駄」。昂揚会の日常。

世界が終るまでは…

──早稲田の伝統的な学風を重んじる昂揚会さんから見て現在の早稲田に嫌いな部分はありますか?
飯久保 過激な言い方になってしまうのですが、慶應化してきているというか。慶應側に染まってきている。
敷嶋  大衆にね。
飯久保 なのに早慶戦の時とか慶應がいるときだけ「ワセダ!ワセダ!」って。
敷嶋  もっと普段からバチバチであってほしいですね。大衆に迎合しないでほしい。早稲田はもっと自我を強く持ち、自分を主張してやっていってほしいな。嫌いな部分というよりもそうあった方が絶対に楽しいだろうと思う。
飯久保 僕らは早稲田が大好きなので。もはや早稲田の全てが恋人だからそこも可愛げではあるけど少し気にはなるかなといった感じですかね。
敷嶋  そう……。そうですね。
──時代に合わせて早稲田も変わっていく中で昂揚会はどこまで続いていくと思いますか?
飯久保 早稲田が続く限りでしょうね。一回解散を経験しているんですが復活したんです。
敷嶋  激動の時代があったりもしたんです。
飯久保 僕らがいなくなったら早稲田も潰れるんじゃないかな?早稲田が潰れたら僕らも潰れざるを得ない。
敷嶋  運命共同体みたいなところですかね。
飯久保 答えは早稲田が潰れるまで何年でも、といった感じでしょうか。
──最後に「座右の銘」をお聞きするのが人物研究会の伝統です。昂揚会さんには「座右の銘」といったものはありますか?
飯久保 なんだっけ?ボディランゲージ
敷嶋  何やそれ?
飯久保 ちょっと待って。サークルの……。
敷嶋  ここはね!やっぱり「早稲田精神昂揚宣言」だよ!
飯久保 長すぎやで!?
敷嶋  いやいや!あれが全てだって!……。という訳で。いっちゃう?「早稲田精神昂揚宣言」!
飯久保 いやいや。書き起こしが大変だから。
敷嶋  「早稲田精神昂揚宣言」というのは昂揚会の創成期から存在する一種の訓戒でして。それを圧縮して圧縮して簡単にまとめたいい言葉があるんですよ!「バンカラ」ですね。
──ああ……。
敷嶋  昂揚会員は何でもすぐに「バンカラ!バンカラ!」って言いますね。このバンカラ一つで63年間も続いてきた会ではあるので。とにかくバンカラかな!
飯久保 やっぱりバンカラですかね。
──ありがとうございました。

2020年4月24日
Zoom使用

※1 「本庄~早稲田100キロハイク」とは、埼玉県本庄市から東京都新宿区の早稲田大学までの100kmを二日で踏破する一大イベント。雨天決行。
※2 「界隈」とは、早稲田大学に勢力を有するサークルの連合組織の呼称のこと。早稲田精神昂揚会、稲吟会、思惟の森の会、早慶戦支援会、鵬志会の5つのサークルで構成される。

人研編集後記

昂揚会員の方から改まってお話を聞くのは初めてでしたがやっぱりスゴイな。本当にいつもバンカラバンカラ言っているんですね。(世羅)
顔選があってケメンが多いとは知らずノーマークでした。これからは注目していきたいです。(瀧澤)

☆早稲田精神昂揚会☆

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Twitter:早稲田精神昂揚会@kouyoukai62
    第58回本庄〜早稲田100キロハイク@100kmhai
公式HP:早稲田精神昂揚会公式ホームページ

★人物研究会★

「会いたい人に会いに行こう」をモットーとする1965年創立のインタビューサークル。早稲田祭などでは講演会の企画運営も行う。トリビア「100ハイで初めて仮装をしたのは人物研究会の大阪太郎」。新会員募集中。

Twitter:早稲田大学人物研究会@jinken_2017
公式HP:人物研究会公式ウェブサイト