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劇団木霊:インタビューサークル、サークルインタビュー vol.11

人物研究会によるサークル横断インタビュー。今回の特集は演劇サークル劇団木霊さんです。早稲田と言えば?やっぱり演劇ですよね!

談○劇団木霊 幹事長  重村さん
       新人担当 原田さん

取材○人物研究会(橋本、篠崎)
構成○人物研究会(橋本)

「365日演劇ができる」

──まずは劇団木霊さんの活動におけるポイントを聞かせてください。
重村 木霊は早稲田に「アトリエ」を持っているのが大きなポイントです。早稲田大学には大きな演劇サークルは6つありますが、稽古ができて公演もできる「アトリエ」を持っているサークルはうちを含め2団体だけなんです。木霊は「アトリエ」で24時間365日ずっと演劇ができる。そういった拠点で活動できるのが強みでありアピールポイントです。
──木霊さんの「アトリエ」は座席配置や舞台の形を変えられますよね。
重村 学生会館にも公演用のスペースがありますが使用できる時間と場所が限られてしまうんですよね。演劇には「小屋入り」と呼ばれる期間があって。たいていは金曜始まりなんです。学生会館を使うと急ピッチで作業するしかないのですが「アトリエ」は我々だけが使えるので客席や舞台の準備に使える期間が長いために工夫をできる可能性が高くなっているんですね。
──「演劇サークル」と聞くと「役者」さんが浮かぶのですが木霊さんにはどういった役職がありますか?
原田 これも木霊の特徴なんですがスタッフ専門の人がいます。また木霊の公演の脚本は多くがオリジナルです。つまり公演ごとに「脚本」を書く人がいて「演出」の人がいる。「作演」もいますね。スタッフは「音響」、「照明」、「制作」など全てを劇団内で賄っています。「役者」も公演によってはスタッフを務めます。
──公演の方針はどのように決めていますか?
原田 総会で主宰となる劇団員が提出した企画書を基にみんなで話し合い協力して企画を詰めていきます。企画書は「作演」は誰とか、「脚色」の場合はこの小説を誰が演出するとかを事前に劇団員にオファーしてから作ります。
──練習の頻度はどれくらいですか?
原田 公演直前の場合には稽古はほとんど毎日です。スタッフや舞台作業は役者の稽古とは別に動きます。スタッフの活動は本番が近いときに集中的にやったり稽古が始まる前から宣伝活動をしたりとまとまった活動が常にある訳ではないですね。
──スタッフさんは係ごとに活動するのですね。
原田 劇団員全員で大掃除や舞台を建てる日もあります。
──公演をするには資金が必要ですよね。活動費はどうされていますか?
重村 私はスタッフとして「制作」という広報や会計をするセクションにいます。木霊が1つの公演をするには約50〜70万円掛かっているのですがその資金全てを自分たちで賄います。公演ごとに大きく異なりますが、役者は1公演あたり約25,000円を参加するために払い、スタッフも約10,000円を払います。そうやって集めた資金を「制作」が各所に分配します。公演のチケットはカンパ制でお客様にお気持ちのほどを封筒に入れて頂くという形になっていますが毎回の公演は全部赤字です。
──ほかの演劇サークルさんと比較した際の特色はありますか?
重村 例年ですと木霊の公演には5月頃に新歓公演として行う「本公演」9月頃に新人のお披露目会として「新人公演」があります。実はスタッフを自分たちの劇団で全員賄える団体は少ないんです。ほとんどの団体さんは外注しています。ですが木霊は役者もスタッフも全て自前です。そこから生まれる公演の統一感、一体感は木霊の売りの一つです。

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アトリエ内部の写真をお借りした。

やっぱり演劇が好き

──これまでのような新歓が中止となった状況で新入生に向けた活動は?
重村 3月末に学生会館が利用停止になったのと同じタイミングで我々も自主的に「アトリエ」を閉鎖するということを決定しました。そこからはオンライン新歓の方法を劇団員で話し合いました。まずは新人担当、新歓公演と本公演を主宰する劇団員がそれぞれどういう思いかという声明文を発表しました。ほかには未来の劇団員に向けて声明文を発表し、過去の公演や劇団員を紹介しています。新入生との双方向的なコミュニケーションがとれるオンライン新歓も行います。
──どのような新入生の入会を期待しますか?
原田 やはり「演劇がしたい人」ですね。あとは何に対しても誠実に向き合う姿勢の持ち主です。例年通りに行なえるかは検討中ですが「新人育成」の課程で「自分にどうやって向き合っていけるか」を考えて努力してもらいたいです。
──演劇サークルには個性豊かな方が多い印象です。木霊さんのメンバーはどういった方でしょうか?
重村 僕の所感としては木霊には演劇に限らず様々な文化的知識に精通する人が多いかなと思います。例えば是枝裕和監督の授業で映画を撮っている人や美術に詳しい人など様々な分野と並行して演劇をやっている人がいます。
原田 木霊の人は演劇以外にも好きなことがあって。でも自分はどうかと言われるとどうだろうという感じです。
──「演劇一筋」ということですか?
原田 演劇はもちろん大好きですが「演劇一筋」というより「みんなで集まってアトリエで劇を作る」のが好きなんです。
──「木霊一筋」ですね。
原田 そうかもしれませんね。「このメンバーでやりたい」という意識が強いです。

目の前で起きているって面白い

──現在、新型ウイルスの影響であらゆるものがオンライン化しています。劇場での公演ができない状況で、リアルタイム・対面で「公演をする」ことへはどのような想いでいますか?
原田 最近はプロの劇団でも「Zoom演劇」をしていて演劇自体が新しい方法を掴み始めていると感じています。しかし同時に、お客さんの目の前で何かが起こることの面白さについても考えました。もちろん新しい表現にもチャレンジしたいですが、「アトリエ」でリアルで演劇をして実際に会ってその場で感じるものがあるということの全てが演劇だったんじゃないかと。いまはそう思っています。
重村 演劇ってとんでもない「三密」だったんだなと思うんですね。小さい劇場に70人位のお客さんがいて、その前で10人位の役者が大きな声で喋る。こうやって密接、密集した場所での公演は、みんなが健康でないと成り立たない贅沢なものだったと思い知りました。この先、活動が再開できる時にはお客さんも自分達自身も期待値は相当上がっていると思っていますね。いまはその時に向けて力を蓄えていきます。
──人物研究会では最後に「座右の銘」をお聞きします。お二方のサークル活動への意気込みを教えてください。
原田 私は岡本太郎の「迷ったらつらい方を選べ」という言葉が好きです。自分や劇団が大変な時こそ新たに大切なものに気がついて成長できると思ってます。演劇をつくる時も大変な方を選んだらお客さんに届けられるものが増えるかなと考えてます。
重村 僕は中高の間は剣道部でした。その当時に先生から言われた教訓の中に「成功は苦境の日に始まり、失敗は得意の時に原因がある」という言葉があります。この言葉を自分の幹にしていて。自分が逆境に立たされているときが成功までの1日目であるといったマインドでいます。
──本日はありがとうございました。

取材日:2020年4月29日
Zoom使用

人研編集後記

我々が演劇を見ているとき、演劇もまた我々を見ているのだ。次回公演が楽しみである。あと「ガラスの仮面」の世界はフィクションだそうです。

☆劇団木霊☆

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公式HP:劇団木霊公式ホームページ

★人物研究会★

「会いたい人に会いに行こう」をモットーとする1965年創立のインタビューサークル。早稲田祭などでは講演会の企画運営も行う。どことなく人生劇場。新会員募集中。

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