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【書評】「文化」の表象を読み解く

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世界各国の文化論や文化史について書かれた本の紹介マガジンです。
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#読書

前-記号的、舞う身体~イリナ・グリゴレ『優しい地獄』

精霊のような本である。著者が、というよりもこの本自体が、現し世のものとは思えないような浮…

『聖書』初めて読んだらトゲトゲしさが思いの外すごかった

さいきん、やっぱり聖書読まなきゃダメだよなぁと思うことが増えてきてたので、手始めにAudibl…

人情の碗、悟りの微笑~『茶の本』に日本人の内なる調和を覗く

「岡倉天心」という名前を、誰しも一度ぐらいは聞いたことがあるだろう。 本名を岡倉覚三(186…

心を無に、血湧き肉躍る大アマゾンの冒険へ~開高健『オーパ!』

むせ返るような熱気、香りたつ種々雑多なスパイス。目を閉じればハチの羽音と、足元の河にピラ…

絢爛で魔術的な文化論の”超”作~高山宏『近代文化史入門―超英文学講義』

ついに出た。2020年私的ベスト本の急先鋒。 博覧強記の文学者にして「学魔」と呼ばれる著者高…

世界を捉え、自らを超えるまなざし~ジッド『ソヴィエト旅行記』

1936年6月、フランスのベストセラー作家アンドレ・ジッドはロシアの地を訪れていた。 目的は…

差異と共生の認識論~『多文化主義とは何か』センブリーニ

多文化主義とは、異なる民族集団が持つ文化や風習、価値体系を等しく尊重し、社会の中で共生を図る考え方を指す。 20世紀後半に出現した概念で、カナダやオーストラリア、アメリカなどを中心に、現に目の前にある社会問題と密着する形で議論が発展してきた。古くからの問題としての帝国主義的な異文化の同化政策に対して、あるいは新しい問題としての人種のサラダボウル的な移民の混合状況に対応して、政策展開を含むさまざまな運動が多文化主義の旗印のもとに起こっている。 しかし、既に社会に根差している

"日本人"のルーツへの問い-『文字とことば』(シリーズ 古代史をひらく)

「ひらがなや漢字はいつ、どのようにして日本で使われるに至ったのか?」 そういえば、よく知…

日本人の豊かな信仰世界を覗き見る~柳田国男『禁忌習俗事典』

忌みとは、不吉の象徴である。避けるべきものである。 古代日本には、清浄の思想があった。清…