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根源を問う~哲学のススメ

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哲学書のレビュー集です。自身、専門家ではないので、比較的読みやすい本の紹介や、読みにくいものであっても非専門家の言葉で噛み砕いていきます
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#読書の秋2021

もしも『手の倫理』をタコが読んだら

ずいぶんと話題を読んだ本である。 じっさい、おもしろい。気軽に読めるし、読後はやわらかな希望の光に包まれるようなやさしい気持ちになれる。それなのに、それでいて、陰々とした思考の渦が幾重にも巻いてしまうようななにかが残る。 『手の倫理』~危うさのあわいを遊ぶ西洋で支配的だった視覚中心のものの見方に待ったをかける、「ふれる」ことから考える倫理の本である。 美学研究者の著者は、まず「ふれる」と「さわる」の日常的な使われ方の違いに注目する。先行研究も引き合いに出しながら、われわ

マルクス資本論入門の快作〜『超訳・資本論』

言っちゃ悪いが、まず著者の経歴が怪しさ全開だった。 ゲームクリエイター出身の投資家。 2013年には韓国のセキュリティソリューション企業、株式会社アンラボの大株主のひとりだった。 KAIST(旧称・国立韓国科学技術院)大学院卒(工学修士)。 「Kingdom Under Fire」シリーズなどのゲームの企画・プログラミングに参加。 様々なプロジェクトの経験から、組織作り・リーダーシップを研究するようになり、ビジネス・リーダーシップ関連の著作を多数執筆。 主な著書に『超訳 孫