人情の碗、悟りの微笑~『茶の本』に日本人の内なる調和を覗く
「岡倉天心」という名前を、誰しも一度ぐらいは聞いたことがあるだろう。
本名を岡倉覚三(1863-1913)という美術思想家で、横山大観など我が国を代表する大画家を数多く育てて世に送り出した、近代日本芸術の発展に大きな功績を残した人物である。あの東京藝大の前身となる東京美術学校の開祖でもある。そしてもう一面、東洋の美術と文化、精神をいち早く世界に向けて積極的に発信してきたことでも知られている。
なかでも本書『茶の本』は、天心が日本の茶道を諸外国に向けて紹介するために英語で書