マガジンのカバー画像

思想で読み解く企業経営

8
単なるビジネス書ではなく、企業や事業の構想や理念など、上流にある思想的な部分を、人文学における思想などと絡めて読める本を紹介した記事を集めます
運営しているクリエイター

#哲学

ストックオプションと分裂症

マルクスが『資本論』を書いて、グレーバーが『負債論』を書いたので、当然そろそろ『ストック・オプション論』も必要だろうと思う。以下はそのうちのほんの片隅の試論である。 『資本論』が労働者の労働生産物からの疎外を言うとき、資本主義において生産手段の所有者と実際に生産を行う労働者との不一致という事態が大きな役回りを担っていた。労働の対象化たる生産物が、資本(家)の価値増殖運動のうちに労働者の手を離れて自立化し、独立した存在として労働者に対して支配力を振るう局面である。 現在の株

ビジネスを加速させる問いの技法~『哲学シンキング』

哲学をビジネスの現場で活かし、いかに考え、いかに創発するか、そのための思考や対話の方法論をまとめた本。著者の会社は、実際に本書の方法をベースにして、大手企業に対してコンサルティングやセミナー等を実施しているとのこと。 著者が哲レコ(哲学レコーディング)と呼ぶ議論の可視化/コンセプトマッピング手法や、本書内で紹介されている問いの基本パターンなどは、とてもよく整理されており分かりやすかったし、十分に実践的で有用なものであると感じた。 以下、かんたんに抜粋しておくと、「問いの基

『論語と算盤と私』朝倉祐介

(ダイヤモンド社) 企業経営についての本ではあるが、企業における経済活動とは何か、「経営する」とは何か、と言った視座から、歴史的な系譜も交えながら、よい経営の在り方について紐解いていく。 経営に直接携わる人だけでなく、日々の実務に追われる事業リーダーや役職者にとっても、自身の活動をその根っこの部分に立ち戻って見つめ直すことができる良書。