マガジンのカバー画像

思想で読み解く企業経営

8
単なるビジネス書ではなく、企業や事業の構想や理念など、上流にある思想的な部分を、人文学における思想などと絡めて読める本を紹介した記事を集めます
運営しているクリエイター

#書評

生きた世界の認識論~『情報なき国家の悲劇』

(副題)大本営参謀の情報戦記 太平洋戦争。第二次大戦中の1942年に開戦し、太平洋の広範な海域を含む戦線で日本とアメリカが真正面からぶつかった激戦である。 結果としてその後1世紀に渡る我が国の歩みを定めることになった一戦の舞台裏では、いったい何が起こっていたのか。 本書は、太平洋戦争において日本軍の大本営で情報参謀を務めた著者による、生々しい敗戦の原因考究の書である。 日本軍は情報戦に破れ、組織の内側から大破した。みずから軍中央で戦略の指揮を取った著者が、忸怩たる思い

大衆文化を生む経営~『セゾン 堤清二が見た未来』

「セゾン」という単語は知っていた。ただ、たった1代で、200社-4兆円にも届く巨大企業グループを築きあげた異能の経営者堤清二については、本書を読むまで寡聞にして全く知らなかった。 著者の日経記者時代の取材と、豊富なリファレンスに基づくセゾングループの社史であり、堤清二の解剖記録でもある本書。ビジネス書としてはまぁまぁな出来であるが、財界/民間から国と社会の文化をどう睨み、どう導いていくかを示す文化論としては打って変わって相当面白く読めた。そして、”ビジョナリー”堤清二のスケ

『論語と算盤と私』朝倉祐介

(ダイヤモンド社) 企業経営についての本ではあるが、企業における経済活動とは何か、「経営する」とは何か、と言った視座から、歴史的な系譜も交えながら、よい経営の在り方について紐解いていく。 経営に直接携わる人だけでなく、日々の実務に追われる事業リーダーや役職者にとっても、自身の活動をその根っこの部分に立ち戻って見つめ直すことができる良書。