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momorisuu
もういないひとが不意に夢に
みっつ上に、憧れの先輩がいて、高校卒業時と同じ様子で夢にでてきて、どうして今頃と起きてからぼんやりした。
夢の中でわたしは、自分の家に帰ったばかりで、どうしてだか先輩は、わたしの家から帰るところだった。
あの頃、わたしはきやすく声をかけたりできなかったのに、どうしたんですか、と驚いたままそれを隠さず声をかけていた。
ちょっとね、心臓を悪くしてね。
と先輩はちょっと言いにくそうにしながらそっと笑ったけど、違います、肺です、とわたしは夢で思いながらも言えなかった。
じゃあ、もう帰るね。
と、浴衣のような薄いみずいろの着物に臙脂の羽織りものを肩にかけて、うちの玄関から出ていった。
いつからいらしたのだろう。
もっと話したいことがあったのに。
どうしたんですか、なんて。どうだっていいじゃないか。
なくなったひとが不意に夢にでてくると、あれは何であったかといつまでも考えてしまう。
たぶんなんの意味もなくて、でも何か意味があればいいなとあれこれ思ってしまう。
きれいで、でも声が低くて、佇まいに雰囲気があって、きらきらしていた。ちょっとしたスターのような存在の方で、憧れる下級生がたくさんあった。
わたしはその方の、言葉の選び方が好きだった。いただいたお手紙で、知らない言葉を知ることもあった。性という字を、さが、と読むことを中学生のわたしは知らなかった。
なんの意味もないだろうけれど、こんなふうに思い出してあれこれ考えるのは、かなしくて、懐かしくて、また会えたようで、すこしうれしい。
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