見出し画像

察しない日記



今日は上司の仕事ぶりについて意見できる場があり、思いの丈を話すことができた。


・新卒でもしないようなミスをしまくり、部下が尻拭いに奔走する

・契約書にフリクションペンで書き込み、半日のあいだ取締役に叱咤される

・話が長く要領を得ないため、顧客との電話でキレられること多数

・スケジュール管理能力がなく、意味のないミーティングを繰り返す

・態度が不遜でいいかげんなため、取引先から信頼されておらず、こちらの提案がほぼほぼ通らない


じゃあ上司の良いところって?


と聞かれて、私や、上司を知る多くの人は一度声につまった。


しかしなんとか絞り出し、


・クレーム対応に強いこと

・メンタルが異常に強いこと

が挙げられた。



上司は鈍感力に優れており、こだわらない、執着しない、共感をしない。

通常の顧客対応にはまったく向いていないが、クレーマーに対してはとても強い。

共感せず、慈悲もかけず、淡々と対応するために負けない。黙らせることができる。


そしてメンタルが強すぎるため、普通の人なら重く感じるような責任を、重く感じない。

これは責任感があるわけではなく、何も重く捉えていないために、ことの重大さに気がついておらず、ずっと呑気に過ごせるという特異な性格をしているのだ。

重要な案件や、どちらに転ぶかわからないイチかバチかの案件では、普通の人に責任を取らせたらつぶれてしまう。こんな時は、この上司を矢面に立たせて責任を取らせるに限るのである。




つまりRPGでいうと、

上司を仲間にすることで、メンバーのHPはずっと減り続けるのだが、

いざ最終局面になると、

ラスボスに対して上司は自ら突っ込んでいき、自爆しながらラスボスを倒してくれるすごい奴なのである。


人には何かしらのお役目というものがあるのだと感ずる。


そのような話し合いを経て、普段から感じている溜飲を下げてみると、上司に対するストレスを緩和できた気がする。


そんな折、顧客から謎の問い合わせが来ていた。

混乱しているのか日本語も怪しく、精神的に追い詰められているのか、妄想も混じっている文章だ。非常に独善的な雰囲気も感じられる、一言でいうと「困った顧客」である。

敏感力の私は、この顧客の言っていることをなんとか噛み砕いてやりたく、返信文を作った。

上司に添削してもらうと、

「こんなに察してあげる必要はないんじゃない?」

という、これまで私の中には存在しなかった見解を述べられた。


「ははあ、これが鈍感力か」

と恐れ入った。


上司いわく、


「察してあげることで頼られる。甘えられて、擦り寄られる。必然、にれさんの周りには構ってちゃんや察してちゃんが多くなるわけだよ。にれさんが察してくれるからお客さんは嬉しいんだろうけど、こういう人をずっと相手するのは難しいでしょう。察しないことだよ」


まさに。


察しないこと。


これに尽きる。


いや、察した方が良い場面もたくさんあるが、察しない方が良い場面も、この世の中には溢れかえっているのだ。


私とは真逆の性格をした上司が、これまで得てきた処世術の中には学びたい部分が大いにある。


私が察するあまり、私の周りには私と同じような繊細な顧客が集まり、彼ら彼女らは最初は察してくれる私に「察して」「構って」と群がってくるのだが、そのうち刺激を求め始めて、
死にたいだの、消えたいだの、受け止めきれないようなことを言ってきてはダウンしてしまう。

私はある種のメンヘラ製造機なのだ。


察することは私が非常に得意な分野なのだけど。

これはもう極めたから、

次は察しないことが、人生の課題なのだろうか。


取り組んでみるか。

そう思っている。




仁礼(にれ)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?