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少なくとも25年目ではじめて花を咲かすことがある


はじめに

 なじみのある植物は毎年花をつけるものが多い。ああ、今年も咲いてくれたなと、植物のようすから微妙な季節のうつろいを感じさせてもらえる。

ところがまったくそうしたリズムおかまいなしに見えて、突如としてようすを変える植物の存在に気づかされた。ごくごく身近な玄関先で。勝手に花をつけない観葉植物と思いこんで咲いた花。

いつもとちがうよ

 4月なかばのこと。

 新芽の形がおかしいなと玄関脇のドラセナを見ながら家に出入りしていた。あまりにひんぱんに刈り込み、芽のかたちをおかしくしたかなぐらいに思っていた。わが家の庭木はどれも災難と感じているだろう。この家のぬしが気分しだいでおかまいなしにチョキチョキ切ってしまうから。

話はいきなり飛ぶが、玄関の軒下に毎年のようにツバメのつがいが来る。この春も居候しており、むしろこちらのようすをながめてから家にはいる。

毎年つかわれているツバメのお宿

そしてもどってドラセナ。この観葉植物は地味な存在だ。どちらかというとほかの植物の引き立て役。25年のあいだ同じ場所で毎年のように刈り込まれツバメの巣のもとでいすわりつづけている。

刈り込まれ大きくならないドラセナ

玄関を正面にみて東にこのドラセナ、西にガクアジサイ。東を向きつつ家に出入りするのは10回のうち1回ほど。この植物はそれほどドラスティックに変化しないし、へんちくりんな新芽のようすなど10日前に一度見たきりでそのまま忘れていた。

そののち家族が「ドラセナからへんな茎が伸びてる。」という。なんだと見にいく。どうやらわき芽ではなさそうだと思った。

忙しいツバメに見とれて…

 そのあいだもツバメのつがいはせっせと昨年旅立ったあと、ほったらかしにあき家なっていた巣を値ぶみするように、なんどかキュルキュルいいながら訪れては何日かもどらずをくりかえしていた。どうやらほかの「賃貸物件」と比較しながら選びあぐねていたのかもしれない。

というのも、ことしのわが家では庭先でイタチを目撃している。どうやら夜の窓の外にもれるあかりにあつまる窓の外の虫たちをねらいヤモリがやってくる。夕食にありつくため。

そのヤモリを夜食にねらってイタチが来はじめた。そのうちイタチが昼間もやって来て営巣中のツバメのひなを新たな獲物候補として見つけてしまったからだ。

そのため、例年以上にツバメたちはこの場所を巣にすることをしばらくのあいだ躊躇していたのではないだろうか。苦労して育てるひながイタチの昼ごはんになっては元も子もない。

ツバメのかげで花が咲く

 ツバメに気をとられているあいだに、ドラセナはすぅ~と穂先を伸ばしたくさんのつぼみをつけていた。ながいこと庭の同じ場所に葉のみをしげらせていたドラセナがはじめて咲いた。


開花のはじまったドラセナ



地味な花がたくさんと思っていたものはじつはつぼみで、これから開花をむかえるところだった。


つぎつぎ開花しそうで、けっこう大きな花の房になりそう。ネットで開花時期を調べてみた。やはりあたたかいせいかずいぶん早く咲きはじめているようだ。

おわりに


 25年のあいだゆっくりと根を張ってようやく咲かせられたのだろう。はじめて咲いた花。せかせかすごしているところに「地道にやろうよ。」とドラセナがおしえてくれた。貴重な経験ができたと思う。

庭をあらためて見わたすと、そういえばこれもけっこう古いなと見なおすものがいくつかあると気づいた。ひとつひとつ愛でてやらないと。

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