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【コンテクストリサーチ:3】スターバックスの禁煙ブランディング〜潜在と顕在〜

#スターバックス禁煙方針のワケ

スターバックス(以降スタバ)が日本に進出した1996年の喫煙率は、男性58%、女性14%。男性の方がコーヒーを嗜み、大多数の男性が喫煙をしていた時代に、スタバは全面禁煙に踏み切る。最大の理由は、創業者ハワード・シュルツ氏のコーヒーへのこだわり。シュルツ氏は、五感のすべてで「スターバックス体験」を楽しんでほしいと考え、コーヒーの「いいにおい」という体験に価値を置いていた。スタバジャパン社長の角田雄二氏は、喫煙スペースを慎重に減らし、売上を落とすことも大きな不満の声が上がることもなく、最終的に全面禁煙への転換を決意。その結果、来店する客層も女性客が増えていった。禁煙方針は、一人のこだわりを超えて、新たなファンを生んだ。それまでコーヒー消費の主なターゲットでなかった人々の来店を後押しし、若い女性たちを中心に「スタバっていいね」という声が広がっていく。

#こだわり (潜在的)からブランド(顕在的)へ

90年代において、禁煙のカフェは経済合理性で説明できない。ユーザーの半数以上を失う可能性がある中で、「コーヒーのいいにおい」という目先の損得を超えたDNAを埋め込んだブランディングは、コーヒーの波と新たな顧客を生んだ。大事なことは、一人のこだわりがブランドになる理由だ。その一つが、潜在的価値を顕在化すること、と言える。

一人の熱狂やこだわりは、他の誰かの潜在的な好きを帯びているかもしれない。その熱狂は少なからず少数の好きにグルーブし、応援されていく。応援者にとっては「もともと脳内にあった潜在的な価値を明確にしてくれた」という個人的な文脈へと落ちるのだ。人はわかるもの(顕在的)に惹かれてしまうが、潜在的に好きなものに対して顕在的価値を見出すとワクワクする。スタバは、(多くの人も潜在的に好きだったかもしれない)「いいにおい」へのこだわりを顕在化させた。

体験が重視されている現在、「映え」な設計に加えて、複雑で連続的な世界観も見直したい。一人のこだわりから発露するアイデアを積み重ねた体験は、データ算出の平均的なそれより独特でユニークであり、そして長期的なブランディングにつながるのでは、と勝手に妄想している。


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