「JUGGZINE(ジャグジン)2024」が出ています

JUGGZINE2024

出ています。

今年で第2号ともいうべき、雑誌JUGGZINE(ジャグジン)の二冊目になります。価格は1500円(税込)+別途送料。
私も寄稿しており、筆者のうちの一人として、私以外のメンバーの文章の紹介を書くことにします。
お買い上げいただいた方には、お手元の雑誌を再度読み直してもらい、また、お買い上げでない方には、どんな内容なのか、購入検討の参考にしてもらえればと思います。

「ジャグリングの」雑誌だ、という紹介の仕方をしたくないくらいには、ジャグラーを超えてすべての人に届いてほしい本だと私は思います。


熱海 凌 「EJC紀行」

あたみん氏の紀行。
ポーランドのルブリンで行われた2023年のEJCというジャグリングイベント報告レポ、に留まらない内容になっている。
日本の毎年のジャグリングイベントであるJJFは3日間の日程だが、EJCはそれより長い日程だ。宿泊を伴うイベント参加は、その旅・イベント・生活が、ひとつながりとなって、それらの感想は切り離せない。
もちろんイベントの中身と満足度も重要だが、手荷物、行く場所・そこまでの足、料理や飲み物(コーヒー・お酒)、見る景色、会う人、人、人との会話。そこでの生活から垣間見るその土地の暮らし(と政治)。何度かの『また明日』の次は、『また来年』となる間柄・人間関係があるということ。
そうした、旅に含まれるいくつもの物事こそが、このEJCというイベントに日本から参加するということをよく表しているのかもしれない。
いくつかの写真や、所々で出てくる外国のジャグラーの名からも、異国旅行記の趣を楽しめる。

私は旅をほとんどしない(ここ数年間は一年に一度は国内のどこか地方都市に宿泊を伴う旅行をしている)ので、特に外国にしばしば旅に出る人たちがどのような視点をもって楽しさを見つけているのかを知るきっかけになる。
また、ジャグリングイベントの作られ方がその土地それぞれに、楽しみ方が人それぞれに、さまざまにあるのだ、ということも考えさせられる。

空や海が青く見えるのは距離のせいというが、”ここ“から移動して、違う場所からここを見てみると、どんな風に見えるだろう?

中西 みみず 「明日」

みみず氏の小説。
ジャンルはSF(スペキュレイティブ・フィクション)、でいいのだろうか。ジャグリングの評論を書こうとする主人公のいる2088年のジャグリング界隈が、面白おかしく、また皮肉的に描かれる。(皮肉的に読んでしまうのは私の癖かも。だが、ジャグリングの批評というテーマは私に刺さるのだ。)
ところで、最近は世間では「SFプロトタイピング」といった言葉も注目され、「地域SFアンソロジー」も出たりしている。創作が、単なるお話と一笑に付されるだけではなく、現実に影響を及ぼすことも考えつつ、それでも本作をただ楽しんで読み終えることも可能だ。

私が一番好きなシーンは、p42の下段『俺は即座に4ボールファウンテンに切り替える』という描写だ。ここが主人公の内面的人格をも描写しているのだという感想は、ジャグリングオタク的でない読了者にどこまで伝わるのだろうか。

それで、あなたはこの話が本当ではないと?

古谷 正幸(まさやん) 「皿回しの石碑になった芸人:百年前のインテリ皿回し芸人「お伽丸柳一」のお人柄」

まさやん氏の伝記。
皿回しの石碑から始まった歴史的な調べものは、それだけで一つの研究成果としてよく調べられ、まとめられている。と同時に、まさやん氏がシンパシーを覚えるような「お伽丸(おとぎまる) 柳一(りゅういち)」という人物の人柄もよく見えてくる読み物となっている。
当時も今も生きやすい生き方ではないだろう、「芸人」というものの一人の人生に思いを馳せる。

私は個人的には歴史という科目・研究について全く面白みを感じられていない(学校教育での私の経験も原因の一つにあるのだろう)、が、伝記を読むのは嫌いではない。
技術も演目も、「ある人がいた」という記録も、残さなければ失われてしまうということを改めて感じて、今残っているものを残してきた人たち(例えば、石碑を立てた人たち)の思いについても、考えてしまう。

私は、過去生きた人たちとどのようにつながっているのだろうか。
世界において、何が後世に残るべきものなのか?

板津 大吾 「ジャグ人の日記:2023年5月11日~2024年4月30日」

板津氏の記録。
板津氏は、「PM Juggling」の屋号で道具作りをしている。
ちなみに、PM Jugglingのサイトでも、雑誌が買えます。

板津氏は昨年のJUGGZINEにも同様に、過去の日記から一部(50記事)を選出してまとめ直したものを寄稿しています。今年は30記事が選出されています。
板津氏の日記自体はnoteを遡ればすべての記事が読めて、ジャグリングのイベントのこと、ものづくりの作業のこと、家族のこと、日々の中で気づいた大事なこと(大げさに言えば「信仰」)など、色々と書かれているが、再度、この雑誌への寄稿にあたって日記を板津氏が読み直し、まとめ直しているということが、この寄稿の特殊性にもなっている。

なお、記事に乗っている2024/3/2~3/3のJUGGZINE合宿のときの日記を私も書いていて、合わせて読むと面白いかもしれない。

それで、私は世界に何を残したいだろうか?

きぞはる 「きぞはる七つの自戒」

きぞはる氏の戒め。
きぞはる氏については、後のインタビューの話し手としても登場するので参照してほしいが、「きぞは工房」という屋号で道具作りをしている。
その道具作りの中で、きぞはる氏が「良きものづくりはこうあるべし」と考えていることが綴られている。見開きで一覧できる箇所は、こだわりが壁に貼ってあるラーメン屋みたいな感じがあり、良い。
(自分の活動に信念がない奴はダメだと私は思っているので。)

なお、制作についての思考を対外的に公開することについて、きぞはる氏が影響を受けているのは、MTGの開発チームのサイトだと言う。

私の活動(研究・批評・執筆活動)は「ものづくり」から少し離れたものだと思っているが、無関係ではないと思うし、ジャグリングと「モノ」は切り離せない関係にある。
また、ジャグリングに限らず、ものづくりに関わる職人のエッセンスがこの自戒には散りばめられていると感じる。そしてそれは実経験から叩き上げられたものであるがゆえに、一定の強度(上滑りしない「確からしさ」)が感じられるのだ。

私にとって自分の活動の訓戒(discipline)とすべきことについても、考えてみよう。

聞き手:山下耕平
「きぞはる ジャグリングの町 尼崎」
「宮田直人 ジャグリングの文化的な側面」

山下氏のインタビュー。ジャグリングのイベント・団体の運営に関わる人へのインタビュー企画を昨年から引き続き行っていて、今年は二人から話を聞いている。
一人目は、きぞはる氏で、ものづくりの活動のほかに、地域(兵庫県尼崎市)で立ち上げたジャグリングサークル「あまのジャグ」についての話が聞ける。
二人目は、「ジャグリング・ユニット・フラトレス」での活動でも知られる、宮田直人氏だ。フラトレスは、JJF2024のパフォーマンスゲストにも呼ばれている。が、ここでは特に「WJD in 京都」のイベントの運営・裏方について焦点を当ててインタビューしており、なかなか他では聞けない談話になっている。

山下氏のインタビュー企画は、ジャグリングの社会学的な研究をするときには重要なものとなるだろう。(「東京の生活史」「大阪の生活史」的なアプローチというか。私の研究活動領域にも深く関わってくるものだ。)
まず、ジャグリングが社会の中で位置づけられるとき、エンタメ・娯楽・芸術産業の中での「パフォーマンス」といったくくりで扱われることが多いと思うが、「パフォーマンス」には、観客から見えている部分のほかにも、見えていない部分の領域があり、その点を研究対象から抜かしてしまわないように、制作や裏方といった領域にも目を向けなければならない。
また、ジャグリングというもののあり方が、(投げ銭を含む)対価を払った観客に向けて行われる、という特定の「パフォーマンス」の態様に限らず、違ったイベントの形式やジャグリングの関わり方がある、ということを、個別の例を提示することによって、世界に喧伝していく意義がある。
今回のインタビューは、ジャグリングのコミュニティの話という視点では、後の花田氏の論考と通ずるところがあるだろう。

私は、他人の人生の一端に触れる度に、そんな”変な“生き方もあるのだなあ、と思ってしまう。(←失礼。これは褒めてもいるのだが)

花田 充 「サークル、イベント、次に増えるのがジャグリング業界発展のキー」

花田氏(はなぽん氏)の論考。
私の花田氏に対する認識は「イベンター」(イベントの企画・準備・運営をする人)なのだが、その花田氏からの視点で、一度のイベントを超えたつながりについて、例えば道具間で、世代間で、地域性で、と個別的な例を挙げながらも見ていくことで、さらなる発展に必要な重要な概念を突き詰めていくことになる。
論考内の分析としては近年の一部のデータをとりあげており、論証としては薄い部分もあるが、2010年代以降のジャグリング界隈(cf.)のつながりを概括的に論じているものは、私はこれの他に知らない。

花田氏は「生涯ジャグリング」のテーマを掲げてもいて、一生の中での様々なライフスタイルの変化と、そこにおける適したジャグリング活動のスタイル(、そしてそれが行える場所)といった角度からもこの論考をさらに深めていけるだろう。

それで、私たちはどこで出会い、つながるのか?
イベント・場所をひらくこと、そして、本をひらくことを、類比して考えてみる。(JUGGZINEが場所となるということ

じん 「遠くからの手紙」

私の寄稿については、別の機会に補足・解説を書くつもりです。
手紙の形式にした手前、載せなかった参考文献などもそのときに紹介できたら。

12/15(日)のイベントの宣伝

さて、大阪で2024/12/15(日)に、JUGGZINEのゆるいイベントがあります。
JUGGZINE編集部メンバー全員参加ではないですが、一部のメンバーが参加し、また、オープンに来たい人を募集しています。レンタルスペースを借りて、飲食物持ち込み可でおしゃべりしましょう、というもの。聞くだけの参加でもOK。

詳細は上記ツイートを確認ください。(雑誌を持っているか、現地で購入される必要があるので注意。)
上記ツイート内のGoogleフォーム(https://t.co/0lr8z0Rert)から申込みいただくと、参加のための詳細連絡があると思います。

当日はすぐ近くで、ジャグリング・ユニット・フラトレスの第8回公演もあるため、ぜひ合わせてチェックしてみてください。↓


以上、じんでした。
良かったら、12/15に大阪でお会いしましょう。

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