2019年の読書記録など

2019年の読書録として、ちょっと想考(草稿)を書き留めておきたい。

2018年の末に「美学をやるかー」となり、
2019年の前半は分析美学系(※参考:「分析美学邦語文献リーディングリスト」by森功次)が多くて、9月に出した「ジャグリング論集」の参考文献一覧とか見るとだいたい9月まではカバーできるとは思う。
その中から一つだけ挙げるとするなら、ミゲル・シカール(訳:松永伸司)『プレイ・マターズ 遊び心の哲学』(2019)を挙げる。
訳者の松永伸司氏(http://9bit.99ing.net/)はビデオゲーム研究が専門領域だが、本書は広義の「遊び」論を展開しており、第三章「おもちゃ」の章は特にジャグリングに引きつけても興味深い。
いくつか引用すると、

『人間が持つ能力のうち、もっとも興味深いもののひとつは、目に入る物をほとんど何でもおもちゃにしてしまえるという能力である。人間は、石ころや木の枝であれ、あるいはもっと複雑なテクノロジーの産物であれ、そうした物に対して期待・意図・推奨された使い方とは別の仕方でそれらを使って、遊びを楽しむことができるらしい。人間は、しばしば思いもよらない仕方で自分の手や身体を使って物を流用し、物が持つ[本来の機能や意味とは別の]機能や意味を探る。』(p70)
『おもちゃは、遊びを示唆し、流用への扉を開く。それは究極の遊び道具だ。おもちゃは、それ自体の中身があまりないおかげで、想像力次第で遊びがいろいろな形をとることを可能にする(原注15)。おもちゃは遊びのツール、つまり遊びの活動と遊び心にとって役立つ物だ。それゆえまた、おもちゃは、自分を表現するための、自分を知るための、そして自分を探るための道具でもある。』(p75-76)

「流用[appropriation]」は本書のキーワードでもあるが、ある事物をその本来の文脈や用途から外れて使用することを指す。(※appropriationは「私物化」や「盗用」などと訳される場合がある)
私が論集で示した「ジャグリング的態度」の語は、本書に大きく影響を受けている。要は、ここ(2018)で書いていることのアップデートだ。


9月に論集を出してから、10月に上妻世海『制作へ』(2018)を読み始めた。確か、みみず氏がTwitterでオススメしてたはず。

ちょっと何が良いのかを上手く言語化できないんだけど、「ルーチン創作法概論」草稿(2018)を書いたときから私は「全員が創作をやれ」とは言っていて、その点が本書と共通なこともある、
なんか諸々のタイミングもあって、この時期に読めて、刺さり、良かった。

思うに、多分。
今年は途中でマジック(手品)の論考を書いたのもあって、フィクション論から派生して、
『「パフォーマンス」は、作品(作品世界)と現実世界が境界のない/重なる作品形式であること』
『パフォーマー(手品師)は(現実)世界を引き受けないといけないこと』
などを思った。
手品師が世界(観客)に対してどのような立場;スタンスで対峙するのかという問題と同様に、ジャグラーは、より物理的/身体的/physicalな(触覚的な?)方向で世界との対峙の仕方を問われている、はずなのだ。
その問いに対する答え方を考えるためのものとして、(考えるべきだと背中を押すものとして)『制作へ』は有用だったのかもしれない。
またいくつか引用する。

12 僕たちはモノを合理的に分析し、鑑賞したり、観察したり、消費するといった特権的で安定的な定点を失っている(p130)
13 僕たちは消費者から制作者へと変化すべきなのではなく、せざるを得ない(p130)
35 僕たちは複数の身体を得るためにその身体と振る舞いを再度、別の仕方で転用し、意味、目的、機能などを組み替えていく為のコンパスを必要としている(p132)

他に、ハイデガーからグレアム・ハーマンの論を述べている部分もあって、非常に興味深かったので、グレアム・ハーマン『四方対象: オブジェクト指向存在論入門』(2017)をいま読み進めている(けど途中で止まっている)。

関連して、岩内章太郎『新しい哲学の教科書 現代実在論入門』(2019)の第二章を並行して読んでいる。
ジャグリングの素材の片方である「モノ」とは何か、物性/道具性(thing-ness)とは、「物の経験」とは、そしてジャグリングでよく言われる(?)「物を”本当に”見る」(※関連?)とはどういうことなのか、を考えるのに役に立つだろう。


読めてない本はたくさんある。

・手品美学研究関連
https://note.com/jin00_seiron/n/n9201db104c49#owuvU

・西村清和『イメージの修辞学 : ことばと形象の交叉』(2009)

・https://mazlog.com/blog/dramaturgy-2#outline__6_1
の中から特に一冊
・ハンス=ティース・レーマン(谷川道子 [ほか] 訳)『ポストドラマ演劇』(2002)

・ 平田栄一朗『ドラマトゥルク : 舞台芸術を進化/深化させる者』(2010)

・ピントクル曰く、「ジャグリングを考える上で読むといい本

・https://twitter.com/jin00_Seiron/status/1211868884132745216


またinputとoutputの繰り返しだというのは分かっているんですが、さすがに「ブックマップ」が必要だよなあ、と。
自分のためにも、後進(そんな奴いるのか知らんが)のためにも、なにかしらでまとめておきたいよね。

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