「買い物袋の写真」には、語り尽くせない「ドラマ」が詰まっている🛍️
ある日、友人からブランドのロゴが入った紙袋を手に持った写真が送られてきました。
「ついに……ついに買ったよ!」とメッセージ付きで送られた来た写真は、ちょっとブレていて、何だか躍動感があって、友人の静かで激しい興奮が伝わってきました。
私は知っていました。
友人がそのバッグ(まさしく演歌バッグ)をずっと買おうか買うまいか悩み続けて、何度も何度も試着をしていたのを。手にする日を夢にまで見ていたのを。ずっと前から「このバッグ気になるんだよね」「でも高いし」「奨学金も返せたし」「ああ、でも」と話してくれていました。
「買う」と決めるまでに、お店の近くのカフェで一時間、買おうか、やっぱり辞めようかとグルグル悩んだそうです。カフェを出てからは店の周りを1時間、ウロウロ歩き回ったそうです。
よしっと覚悟を決めて、店舗に向かい、ついに「これください」と言った声は、今までの人生で一番きれいなビブラートがかかっていて「カラオケなら高得点出ちゃいそうだった」とのことでした。
ブルブル震える右手を左手で押さえながらクレジットカードの決済サインをして、ずしっと商品が入った紙袋を受け取り、その様子を「記念写真」として私に送ってくれたのです。(そりゃブレるわけですね)
その写真には友人の葛藤と決意、そして大きな達成感が映し出されていました。「買えたことが嬉しくて嬉しくて、いま涙が止まらないんだよね」と電話をくれて、私まで涙ぐんでしまいました。
そのとき交わした店員さんとの会話、クレジットカードをサインするときのペンの重さ、限度額を超えないかドキドキしたこと、出された飲み物の味、お店の窓から見た表参道の景色、店内で聴いたジャズ、店内の香水の香り、「買う」と決めたらプロボクサーに殴られたように脳が揺れたこと、その一瞬で人生の走馬灯を見たこと。
30分くらい電話で話しました。友人は「……生まれて初めて買い物袋の写真を撮る人の気持ちが分かったよ。この写真は本気で葛藤した人しか撮らないものなんだね。いい経験ができた、と、思う。聞いてくれてありがとう」そんな風に言って、電話を切りました。
友人の口調は、まるで神田伯山さんの話す「中村仲蔵」のような語りでした。思わず私は泣きながら笑っていました。いい買い物をすると、人は講談師になる。
その「ブランドのロゴ入りの紙袋」の写真からは友人の葛藤と決意、そして達成感がありありと映し出されていました。私は一緒に泣きながら笑いながら「本当に良かったね」と100万回言いました。
一枚の写真がSNSに上げられただけでは分からないかもしれない。
けれど、私にはその写真の「意味」が伝わっていました。
ずっとずっとその写真が、目に焼き付いて離れませんでした。
👗「服を買う」以上の覚悟と体験
なぜ、友人のお買い物に泣くほど心を打たれたのかというと、そんな経験が私にもあったからです。2021年に憧れていたフェンディのピーカブーというバッグを買いました。払ったことがないくらい高額のバッグに頭がクラクラし、頭蓋骨が割れそうなほど考えました。
・本当に長く使えるのかな?
・高価なものを買って後悔しないかな?
・なんで私は、こんなものを欲しがってしまったのだろう??
「今日買おう!」と決めてからも、しばらく足が動かずに、カフェでコーヒーを飲みながら考えました。寒い日にも関わらず、手の汗がどんどん粒になって手のひらを滴ってきます。「こんなに水滴がきれいに落ちることあるんだ」「汗ってグミみたいに出ることあるんだ」としばし眺めてしまったのを覚えています。
何年も前から「いつか買おう!」と決めていたのに、数日前に決意を固めたのに、この有様です。
「買うor買わない」がルーレットのように目の前でチカチカ光っています。脳内は「東京フレンドリーパーク」のように観衆が沸き「パジェロ!パジェロ!」の音で「フェンディ!フェンディ!」とダーツの針の行方を見守っています。
「いつか買いたいと思っていたけど、今なのか?」
「この色で本当にいいのか?このサイズで本当にいいのか?」
「私は一体、誰なんだ?」
まさしく、一世一代の自問自答。自分のことが分からなくなりかけました。
「これください」と店員さんに告げた時、頭の中で「もう後戻りはできない」というゾクッとした気持ちと「ついに手に入れたね!」というファンファーレが流れて、情緒がぐちゃぐちゃになりました。
「今、人生が変わったんだ、私が変えたんだ」ということだけが、はっきり分かりました。大袈裟かもしれませんが、自分にとってはそれくらいの出来事だったんです。
店員さんが品物を包んでくれる間、まるで長い長い戦いを終えた勇者のように体中から力が抜けていきました。フルマラソンを走り切ったように肩で息をしながら店を後にして、買ったバッグを抱きしめながら熱い熱い涙が類をつたっていきました。
ついに、私はついに憧れのバッグを買ったんだ、買えたんだ、私の人生で買えるなんて思っていなかった。でも買えたんだ。その紙袋は「自分の人生を豊かに生きるんだ」と決めた決意表明のようでした。フェンディのイエローの紙袋は誇らしく、喜ばしく光っていました。
🛍️紙袋は命を賭した戦いの証
SNSに買い物の紙袋の写真を投稿する光景、みなさんも一度は目にしたことがあるかと思います。
「限定品のコスメを買ったよ🛍️」
「おしゃれなプランドのバッグを買ったよ🛍️」
という言葉に添えられたブランドの紙袋が映った写真。
もし、私がこんなふうに覚悟を決めたお買い物経験がなかったとしたら、
「なんで紙袋の写真をSNSに載せるんだろう」
「いいものを買える環境の人が羨ましいな」
「わざわざ紙袋を写真に撮るなんて、自慢みたい!」
と感じて、モヤモヤしてしまっていたかもしれません。
しかし、私ももう「経験者」です。
インスタやtwitter(X)に挙げられた写真をみると、とても愛しい気持ちになります。立ち上がって拍手喝采したくなります。良かったね、って声が枯れるまで伝えたくなります。自分の買い物、友人の買い物の軌跡が頭を巡り「お疲れさま」と声をかけたくなるのです。年末の「第九」のような壮大で、生きることへの喜びを詰め込んだ「歓喜のうた」が脳を巡ります。
ファッションを選ぶときに、「見えない壁」になってしまうものって、実はたくさんありますよね。「世間体」「普通」「年相応」「親が悪く言わなそうなのは」「パートナーが望むのは」「友達に褒められそうなのは」周りのことを考えると「買えない理由」が後から後から浮かんできて、時にがんじがらめになっていきます。
そんな中で自分と真剣に向き合ったお買い物の経験は、とても尊いものだと思っているのです。紙袋の写真は、命を賭した自分との戦いの証です。
✈️海外旅行に行った父の話
話は少し変わって、私の父親が海外旅行に行ったときの話です。
(父は相当な変わり者なのですがその話はちょっと置いておいて)
父は24歳の時に、仕事が上手くいかない自分に嫌気がさして、会社を辞めると同時にイギリス旅行に行ったそうです。(為替の勉強がしたかったと言っていました)
今から50年前の1974年、当時1ポンド800円だった頃のイギリス。
父はお金がなかったけれど、本当に人生に行き詰まってしまって「どうしてもイギリスに行かないと人生が進まない」と思ったそうです。
「無我夢中だった」「周りが見えないほど集中した」「英語を死ぬ気で学んだ」「周りに海外に行ったことがある人が一人もいなかった」「飛行機もはじめてで死ぬほど怖かった」「キャビンアテンダントさんが優秀で、飛行機に乗るのも、CAさんと会話をするのもとんでもない恐怖を感じた」と言っていました。睡眠時間もロクに取らずに2週間、イギリスの街を歩いて歩いて見つくして「そこに住んでいるイギリス人よりもロンドンに詳しくなった(自称)」と言っていました。(当時はまだインターネットがなかった時代で、ガイドブックに載っていないことが山ほどあったらしいです)
そして父は旅行の最終日に「ここに行ければ、自分はこの先日本で何でもできると思う」という覚悟で高級なレストランに行ったそうです。
目の前でウエイターさんがお肉を切り分けてくれて、ガチガチに緊張しながら食べていると、隣に座っていたアメリカ人の方がめちゃくちゃ大声で笑いながら食事をしていて、「水を持ってきて」とか、「新しいナイフを持ってきて」とか、普通に頼んでいたとのこと。
そこで父は気づいたそうです。「なんだ、そうだった。これはただの食べ物、人によってはただの食事。そしてちゃんと言葉で伝えないといつまで経っても水はこない。」
このイギリス旅行の経験の話を提げて50年間、父は大声で笑いながら生きています。「200万かけて1ポンド800円のイギリス旅行に行った話」は転職の面談でも、母と出会った時も、息子と娘の教育にも「俺のイギリス旅行記」として遺憾無く語られされ、
「一番高いレストランへいけ」
「震えるほど高いものを一度は買え」
「現地の人の知識を超えるくらい土地を調べ尽くせ」
「言葉ではっきり伝えないと、水はこない」
「一度飛び込めば、この先の人生怖いものがなくなる」
「写真を撮って、何度でも人に語れ、自分の中で50年色褪せない宝になる」
と教訓を語っていました。
話す相手によっては「海外旅行なんて贅沢だ」「意味がない」「お金がないのにどうして」「無職なのに」と言われてしまうこともあったそうです。
「それでも」と自分で覚悟を決めて思って思い切って経験したことが、父の動じない性格を作ったんだなと思いました。この話を聞いた人は「海外旅行は贅沢だ」と言っていた人も、もれなく「頑張って行って良かったね」「自分も海外行きたくなってきた」と言ってくれるそうです。
私が高価なバッグを買った時も「俺が24歳の時にイギリス行った時と同じような経験だな。一度自分のお金で大きな買い物をすると度胸がついていいよな。」と言ってました。
確かに、父のイギリス旅行記は50年経った今もイキイキしていて何回聞いても面白いし、私がバッグを買った話は3年経った今も実に克明に語れます。旅行も買い物も「強烈に印象に残る経験」って、なんだかんだ「その人を作る」いいものなんだなと思います。
📖少ない服で豊かな人生を
私は現在、年間大体4~5着(3セット上限)までしか服を買いません。
そのため、1回1回のお買い物はそれはもう真剣勝負です。調べて、試着してみて、計画を練り直して、大変だけど楽しいです。
正直もう「人が何て思うかな」と考える次元はゆうに超えてしまい、自分との対話がメインとなってきました。服を買う数を減らしてから、今までよりもまっすぐな眼差しで欲しい服を追い求められるようになりました。
みなさんにも「少ない服で生きてほしい」「真剣勝負してほしい」「いい服を買って欲しい」といっているわけでは全くありません。けれど「服を買うときにちょっといつもより時間をかけて考えてみると、見えなかったものが見えるようになる」とは思っています。ファッションだけでなくって、人生も生活もより一層面白くなります。
心の声に耳を傾けながら一つずつ選んでいくと、雑音がピタッと止み、気持ちに「凪」がやってきます。他の人が着ている服も、心から「いいね!」と称賛できるし、ちょっと落ち込んでしまった日にも「この服を着ていれば、またチャレンジできる気がするな」と思わせてくれます。
震える手で撮った「買い物袋の写真」には、語り尽くせない数々の「ドラマ」があるものです。
みなさんもSNSで紙袋の写真を見かけたら「きっといい伝説が生まれたんだな!」と思いを馳せて見てください。
そしてみなさんもお買い物をしたらぜひ「紙袋」の写真を撮って、語ってみてくださいね。きっと、買い物したその日の記憶が思い起こせる宝物になります。(この先50年語れるかもしれません)
そしてみなさんの買い物袋の写真を見たら、私が大きな声で祝福の第九を歌います🤝
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