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残業が減らないのはトップの本気度が全て

トップは本気になっていないのでは?

電通の違法残業がまたニュースになっていました。

働き方改革とは言うものの、違法残業への対応は各企業とも苦戦しています。

なぜ、問題が解決しないのか?

こんな想像をしてみてください。

組織のトップが、違法な残業や長時間残業を本気でなくしたいと考えたならどうするでしょうか。

やろうと思えば、私のような人間でも、方法は思い浮かびます。

百戦錬磨の経営者であればなおさら、人を動かす要諦は心得ているはずです。

①本気で伝える
②環境を整える

この2つを実行できれば、物理的には残業をなくすことなど簡単なはずです。

ではなぜ、これだけ残業がなくならないのでしょうか。

こう考えると、答えは、「トップが本気にやろうとしていないから」ということになります。

①も②も難しいことではありません。

大小問わずリーダーであれば、あらゆる方針を指示する際に、当たり前のように取り組んでいることです。

結局、従業員の健康や幸福よりも、短期的な業績、株主などを優先する判断の結果、残業問題に本気で取り組まないことをトップが選択しているということです。

①本気で伝えたら行動も変わる

①の本気で伝えること、これは多くのリーダーが本気になれば、すぐに伝わります。

残業の制限を設けて厳密に運営させる旨、本気で指示して、進捗をフォローするのです。

特に難しいことではありません。

本気で伝えるということについて、私が会社員の時の例を挙げます。

私はほとんど営業職に属していましたが、当時の部署のリーダーの方針は明確でした。

「訪問件数を増やせ」です。

(良い悪いは別として)訪問件数を増やすことが、成果を出す条件であると本気で考えておられたはずです。

朝の会議、帰店後の報告、定期面談、その他いかなる時でも、訪問件数を増やすよう指示されました。

朝10時時点でまだ社内に残っていたら、「出ろ!」と言われました。

指示に対して徹底して進捗を中間管理職にフォローさせ、自分からも指示を出します。

逃げ場がなく大変でしたが、本気で部署のリーダーは「訪問件数」にこだわっていたことは疑いようもありません。

こうして、私たち営業部員は、毎日訪問件数を増やすよう試行錯誤したのでした。

②進捗管理の仕組み作りで環境を整える

先ほどの、訪問件数の例で言えば、毎日帰店後に訪問先と提案内容について報告することを徹底されていました。

リーダーは、どんなに忙しくても、報告を聞くようにしていました。

少しでも気になることがあると、質問攻めにされるので、ごまかせません。

簡単な仕組みですが、私たち営業部員にとって、大きなプレッシャーとなり、いつも頭の中に訪問件数を意識させるものであったと振り返ります。

残業の件で言えば、システムを少し整備するだけでよさそうですが、多くの企業が実施していません。

単純に、勤務管理のシステムと、社内イントラのログイン時間やパソコンの起動時間などを連携させて、「参考指標」としてウォッチすることもできるはずです。

勤務管理システムでは夜7時までの労働となっているのに、イントラやパソコンは朝の3時まで起動していたら、すぐに疑わしいことがわかります。

そんなことが、月に何度もあれば、消し忘れや業務外の作業とは言えません。

日本人の社員が残業を選ぶ理由は多様

トップが本気でないと、下にいる人間も本気で動こうとはしません。

特に日本人の残業というものはやっかいで、それぞれ置かれている環境や考え方によって実に多様な残業理由がありますので、上が強く推奨しないと進みません。

忖度も加わり、指示したことが、全く違った趣旨で伝わることも少なくありません。

社員が残業する理由は様々です。実際に私が会社員時代、多くの人に聞いた回答です。

1、無益な会議、無駄な会議資料、報告資料などの作業が多くて仕事が終わらない。(役員が関係すると忖度も激しくなり、地獄)

2、上司が残業するので帰りにくい。帰った後で面倒なことになるのが怖い。

3、残業が好き、静かな空気の中でまったりと仕事するのが好き。

4、みんなで残業していると一体感や達成感を感じる。

5、残業代が欲しい。

6、欲しがりません!勝つまでは!(成果が出ないなら、残って仕事をして当然。)

このように、色々な人が、色々な立場にいながら、

残業に対して異なる考え方を持っているので、トップが本気で意向を示すしかありません。

GEの談合事例

トップが本気でないと、下にいる人間に伝わらず、大事件にまで発生した良い例があります。

1950年代、アメリカのGEを中心とした大規模な談合事件です。

現在の価格で数百億ドル規模の談合が、複数年にわたって常態化していました。

内部告発により明るみに出たのですが、GEのトップ2名は、「事実を把握していなかった、指示も出していなかった」と証言しています。(実際に法的なおとがめは無し)

それどころか、幹部には直接訓示をして、倫理規範の遵守について伝えているというのです。

実際のところは、トップの言葉を真に受けず、忖度した経営幹部たちを中心に談合が行われていたというのが事実のようですが、

これだけの歴史的大規模事件で、トップ2名が知らなかったということなどあり得るでしょうか?

大企業のトップに登りつめた人たちです。人を動かす要諦は誰よりも習熟しているはずです。

本当に倫理規範を遵守させることを重要視したならば、訓示だけで終わるはずはありません。

それだけで、全社員に浸透するはずがないことくらいはわかります。

繰り返し伝えること、定期的に状況を報告させ、怪しいところがないかチェックすること、監視する部門による抜き打ち検査を実施することなど、いくらでも方法はあったはずです。

結局のところ、トップ2名は、談合撲滅に対して本気ではなかったと言わざるを得ません。

談合が見つからなければ業績も良くなりラッキー、万一見つかっても、自分は談合の指示も出していないから裁判所では罪に問われない、といった考えがどこかにあったのではないかと推測します。

トップが本気にならなければ、大きな組織に方針を徹底することが難しい事例でした。

悲しい事件を起こさないために

低成長が続く中、どの企業も生き残りをかけて、経費削減に取り組んでいます。

経費削減策をやり尽くした後、次に来るのは、人を使い倒すという選択になりがちです。

勤務記録以上に実態は長時間働かせることで、実質的な人件費削減を行なっています。

厳しい競争環境の中で、何とかして会社を成長させようとトップは考えます。

イノベーションを伴うような大転換や、非効率な体制や業務を一掃するような組織改革などを目指していくべきですが、当然簡単には成し得ません。

そのような名案もないまま、残業を減らすように徹底するのは難しいことも理解できます。

しかし、「残業をなくすには?」というシンプルな問いの答えは、「トップが本気で取り組むこと」が全てです。

何でも欧米企業と比べるのはよくありませんが、世界から賞賛されるような企業のトップは、至る所で、自社の理念や目指すべき姿について壮大で高邁な展望を語っています。

強い意志の表れとも言えるでしょう。

電通事件のような悲しい事件が発生しないよう、舵を取るのはトップしかいません。


以上、ここまで読んでいただきありがとうございました。


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