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経営人材育成(2)オーケストレーター

経営人材について前回含め5回に分けて書くと宣言しておきつつ、プロジェクトに追われてかなり間があいてしまった。
我々が主導した経営人材育成プログラム構築・運用プロジェクトでは、経営人材が保有すべきスキルセットを定義しているが、その一つに「オーケストレーター」を挙げている。
オーケストレーターというのは、決して私が発明した概念ではなく、既に経営者や経営学者が、表現は違えど同様の概念を提唱しているが、そのほとんどは人物の類型もしくは役割として提唱しているのに対し、我々はそれをこれからの経営を担う人材が有すべきスキルの一つとして定義していることにある。
オーケストレーターは、言い換えるとすればinclusivenessであったり、巻き込む力であったり、横串が刺せる人であったり、それぞれ親しみのある言葉で置き換えて理解していただいても差し支えない。私は決して学者ではないので、そこに厳密な定義の正確さを問うつもりはまったくない。実務上有益であればそれに越したことはない。
ただしあえて厳密に定義しようとするならば、少し長くなるがこんな感じである。(特に大)企業においては部門間の壁が高く、かつどの業務においても(デジタルしかり)専門性が高度になることもあって、壁は高くなることこそあれ低くはなりにくい。そこでますます重要になる能力が、異なる専門性、異なるバックグラウンド(中途採用も増えるし、グローバル化も進む)の人たちのスキルを活かし、かつクロスさせて価値を出していけることになってくる。
自分の専門領域もしっかり持ちつつ、違う領域の専門家(多くの場合話す言葉も違う)と意思疎通できることが大前提だが、往々にして価値観も異なり、目指すものも違う。
オーケストレーターと名付けた理由は、オーケストラ(管弦楽団)の指揮者がまさにそのような能力に長けた人物であることがメインの理由である。オーケストラには様々な楽器のスペシャリストがいる。バイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、フルート、ピッコロ、クラリネット、オーボエ、ファゴット、トランペット、ホルン、パーカッション(もちろん編成は楽曲により変わるが)・・・、それぞれがきわめて能力が高くかつ楽器が違えば人種が違うとまで言われる上に個性と主張が違うプロの集まりであって、ひとつの交響曲をひとつの世界観をもってまとめあげつつ、各パートの各奏者のポテンシャルを最大限に発揮する、というのは至難の技以外の何物でもないが、それを求められるのが指揮者なのである。
もちろんビジネスと音楽は違うが、むしろ決して予定調和になることはないビジネスの世界だからこそ高いレベルで求められるスキルであると思う。

以上、経営人材の重要性が増すと思うスキルについて書いてみた。次回は新規事業について書く。

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