【感想・あらすじ】ケルトの薄明

基本情報

◆タイトル ケルトの薄明
◆著者   W.B.イエイツ / 訳:井村君江
◆レーベル ちくま文庫
◆発行   1993年12月

あらすじ

長さがバラバラの短編が40ほど入っていたので割愛。あらすじを書くまでもない短いお話が多い。

◆特に興味を惹かれたもの

14 「そして美しく恐ろしい女たち」
  →ケルト神話に登場するメーヴ女王(女王メイヴ)と、実在のヴィクトリア女王を比べている、幻想世界と現実世界が曖昧な世界観の象徴のような
20 人さらい
  →風景としては美しいかもしれないが、起きている事象は恐ろしい印象。ヨモツヘグイの概念とも類似。
21 疲れを知らぬ者
  →本体は別のところに存在する神性・魔性のものというのは、日本の御魂移しなどに概念が近いなと。
31 宝石を食べるもの
  →美しく素晴らしいものを飢え乾くように求める獣のイメージが印象的。
38 教訓のない夢
  →シンデレラと類似の話だけど、男女の立場が逆で面白い。

感想

本自体は薄めなのに読了まで結構時間がかかった。純粋な民話集というわけではなく、著者のイエイツがフィールドワークで集めた説話を自身の考えや感想を交えて記述しているものなので、その前提がないと読み始め戸惑う。

加えて翻訳ものにありがちな独特の文体なので、気軽に楽しむ小説というよりも、不思議体験を浴びるように摂取するようなイメージ。不条理を不条理として受け入れるモードで読みたい本。説話の類型を頭に入れるにはいいと思った。

「おもしろいなー」と思いながら読んではいなかったけど、内容は興味深かったので、もしかしたらまた似たような本を読むかもしれない。

~~~~~【以下追記】~~~~~

どんな人向けっぽいか

・昔話が好きな人
・不条理なファンタジー耐性がある人
・説話、民話を数多く知りたい人(?)

文体とか

◆人称・視点
 ・「私」であるイエイツの語りではあるが、語りの中の人物に関しては三人称だったり一人称だったりバラバラ。視点も「私」に戻ったり、語りの中の人物の視点になったり、客観視点のままだったり統一性はあまりない。
◆心情描写方法
 ・心情の描写はほとんどない(あっさり触れられてはいる)
◆記号・改行の使い方
 ・「」の前に改行がなく括弧書きの後に句点がついたり、補足として ―― が使われたり () が使われたり、最近の小説的なルールではない書き方が随所にあるので、読み慣れてないと読みにくい。
 ・読点の打ち方に規則性がない上多いので、どこで文が切れるのかが分かりにくい。
◆その他
 ・主述の関係がごちゃごちゃしていたり、装飾のかかる位置が独特で、何度か読み返すことも

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