与謝野晶子の戦争詠

『白桜集』「連峰の雲その他」より抜粋

日の本の大宰相も病むわれも同じ涙す大き詔書に

水軍の大尉となりてわが四郎み軍に往く猛く戦へ

子が船の黒潮越えて戦はん日も甲斐なしや病ひする母

子が乗れるみ軍船のおとなひを待つにもあらず武運あれかし

戦(いくさ)ある太平洋の西南を思ひてわれは寒き夜を泣く

三千とせの神の教へに育てられ強し東の大八島びと

底本:『定本 与謝野晶子全集』第七巻歌集七 講談社
昭和五十六年六月十日第一刷発行
*旧字は新字に改めた

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