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書肆神保堂
2017年9月8日 19:18
人間の顔が悪魔に見える事についてしづかに考へよ、林の中の高い木が悪魔に見えることについて林に入りてその木を抱け、太陽が悪魔に見えることについてはるかなる空をあふぎ見よ。我々の為めにうつくしい世界はどこへ行った か、我々の為めに幸福な世界はどこへ行つたか、太陽はくらくさびしくなり、木はくらくつめたくなりあらゆるものが悪魔に見える。さまざまの悪と不幸が来て、うれひとかなし
2017年9月7日 22:30
さまざまの人種がゐる白い顔黄色い顔南蛮人の銅(あかがね)色おそろしい尖つたくちびる豚の如き尻尾のある者、―そこに不思議の動物がゐる―そこに人間の動物園がある黒ん坊の子はだだひろき砂浜に走り出て幾度も幾度も蜻蛉返りをなし、砂浜に腹匍ひてふくれ上りし腹の跡をつけそれを又足で踏み消して逃ぐ高き山の頂によぢのぼりゆけどもゆけども限りなき森の中をさまよひ或は遠き曠野を横切りて
2017年9月6日 22:41
何かしらぬが深い地の底にかくれてゐるうすぐらい空を飛んでゐる又ははるかの地平の上にけぶれる夢の如く立つてゐる―何か知らぬが靴の鼻に立つ、靴は光るステツキの銀環にとまる、環は光る―ポケツトのくらい底へ不意に手をさし入るるおそろしさよ何か知らぬかすみつこにかくれてゐるたましひの前にかげの如く佇み鳥の如く風に乗りて経廻り甘い眠りが深くしみ入れば夢の中にもフヰルムの如く現はれ
2017年8月31日 00:17
神さま空のまんなかにさんらんとしてかがやく神さま私が今高く高くさしあげようとするまつくろい人間の手にそのしづかなる動かざる変らざる空のまんなかの光りを握らせて被下いませ私は世界の未来を考へますおそろしい人間の過去に仍つておそろしい未来のそのまた未来の空々たる人間の世界を考へますそうして神さまそのおそろしさに堪へられずなりますと私はまつくろいけだもののような手をしづかなる空