僕、盲腸になって良かった
(2019年12月29日公開)
※本文中に出てくる登場人物の発言や行動は全て本当にあったノンフィクションであり、一切の誇張や過剰な演出はありません。
過去に、僕が二度に渡って盲腸になった顛末を記したブログ投稿がありまして、
投稿したのはもう3年前にも関わらず、実はなぜか今年の初頭くらいから突如この二つの記事のアクセス数が急激に伸び出し、今や僕のサイトのトップページさえもはるかに上回るページビュー、さらに「盲腸 ブログ」で検索するとトップ表示されるという、もはや我がサイト上の堂々のキラーコンテンツと化している状態なのです。やはり初めての病気になった人がやることは一緒なんだなと誠に腑に落ちる次第な訳で、盲腸になった方々の参考に少しでもなっていればとても嬉しいのですが。
そんなノー虫垂ライフを送っていた今年の夏のある日、面識の無いインスタフォロワーの方から、こんなメッセージをいただききました。
四国は愛媛在住の鍛治職人さん(元ドラマー)ジュンペイさんという方からのコンタクトでした。
突然の知らない方からのメッセージで、こんなにも何度も読み直した文面は最近なかなかありません。鉄のスティック?無料?篆刻が入っているかのような、この丁寧な箱。しかも僕のブログで世の中の広さを知ってくれたなんて。
とても興味のあるご提案で、恐縮極まりないのは重々承知の上ですが、
いらない
超絶いらない
だってこれでドラム叩いたら一瞬でヘッド貫通、ともすればフープ歪曲、ウッドシェル粉砕、手首崩壊、そう、良いこと一つありません。
これはどうしたものか、でもせっかくご縁を感じてコンタクトをとってくれたのに無下にはできません。そこでダメ元ではありますが、こんな提案をさせていただきました。
打楽器奏者ならば知る人も多いこの楽器、こんな感じの楽器でオリジナルを作っていただけたら、最高じゃないですか。ダメ元といえど持ちかけてみた訳ですが、なんとご本人から快諾のお返事を頂き、11月に東京に来る際にお会いして実物をくださる運びとなりました。頼んでみるもんです。僕だけのオリジナルな楽器を作ってくれるなんて、盲腸にもなってみるもんだわ〜と、当時の痛みも忘れて感慨に浸っていた訳ですが、
・・・え?
盲腸はつける?
僕が以前投稿したブログでも言及していますが、目が覚めかかった手術直後の僕の眼前にぶら下がっていた虫垂、腫れ上がった唐辛子、血まみれのかりんとうが頭に浮かんだのは言うまでもありません。これをどう鉄の打楽器に盛り込もうというのでしょうか、全く想像がつかないどころか、入院時に一番辛かった尿道のバルーンの痛みが脳裏に蘇り、しかもそれを俺はわざわざスティックで叩くのかと思うと、もう不安を超えて恐怖しかありません。
しかしジュンペイくんも僕もある意味ものづくりで食べている同士、必ずや期待以上の仕上がりで僕の恐怖をクリエイティビティの快楽へと転じさせてくれるのであろうと、逆に盲腸どんとこい、なんなら2つ3つ付けてくれくらいの意気込みで楽しみに待たせて頂きました。
そしていくつかのやりとりを経て、いよいよ11月、ジュンぺイ君ご本人にジマスタへお越しいただき、例のブツをいただく日がやって参りました。
いいじゃん!
もう、盲腸自体じゃないですか。いいじゃないですか。しかもシンバルスタンドにマウントできるようにアタッチメントもついてるんですよ。最高じゃないですか。
実際の音はというと、
http://jimanica.com/contents/wp-content/uploads/chusui.m4v
いいじゃないですか。盲腸って、スティックで叩くとこういう音がするんですね。
と言うわけで、僕の予想を上回る素晴らしい楽器を頂けることになりました。とても嬉しいです。ジュンペイ君、本当にありがとう。そして虫垂に感謝です。虫垂炎になっていなかったらこの楽器は手に入っておりません。病気にもなってみるもんだ、と心から思った次第です。
そんな後、ジュンペイくんのやっていたバンドや現在の鍛治職人としての活動などを伺いながら昼食を一緒に食べ、入院時の苦労話などを互いに交換した訳ですが、蓮沼執太フィルで管楽器を担当する某メンバーは今まで4回虫垂炎になっていながら毎回薬で散らし、今も爆弾を抱えて暮らしているという話をした時の「ほ、本当ですか!?」と目を丸くした彼の顔が今でも忘れられません。
ジュンペイくん、本当にありがとうございました。活動を応援しております。この世に二つとない楽器、チュウスイを大事に使わせていただきます。
盲腸も悪くはありません。何かを失うと何かが訪れるものです。
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