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【読書記録】諦めないオーナー プロ野球改革挑戦記(宮内義彦)

オリックス球団といえば少し前までは「万年下位で人気もない」イメージだったのですが、最近はパ・リーグ3連覇を果たすなどすっかり強くなって、観客動員も以前より伸びています。

そんなオリックス球団のオーナーを長く務めた宮内氏の著書ということで、強くなって人気も上がった秘訣が何か書かれているのでは、と気になり手に取りました。

ちなみに、当記事では「オリックス球団」という表現を使っていますが、これは歴史的にチーム名が
ブレーブス→ブルーウェーブ→バファローズ
と変化しており、時代ごとにチーム名を書き分けるのがややこしいためです。
特に バファローズ=近鉄 というイメージを持たれている方も多いと思うので(私もその1人です)、そのあたりも考慮して「オリックス球団」と表現してますが、他意はありませんのでご了承ください。

絶大な宣伝効果

私が物心ついてプロ野球の存在を知った頃には、すでにオリックス球団になっていました。
今振り返ると、阪急から譲渡されてまだ間もない頃だったようです。
オリックスは元々オリエント・リースという企業で、オリックスに社名を変更するタイミングで球団譲渡の話が来て、知名度向上のためにそれを受けたと宮内氏も語っています。
オリックスが何をやっている会社なのかは当時小学生だった私には全くわかりませんでしたが、球団の存在よってオリックスという社名は知っていました。
おそらく大半の日本国民にとっては同じ状況だったでしょうし、今なおそれは同様だと思います。
そう考えると、球団を保有することの宣伝効果はやはり絶大です。
国内に12球団しかなく、メディアで毎日のように報じられる試合結果に「オリックス」の文字が出てくるわけですから。

ちなみに、買収の話を持ちかけられてから決断するまでたった2ヶ月(!)しかなく、デューデリジェンス(事業に価値があるかどうかの査定)もほとんどできなかったと宮内氏は述べています。
そんな中で賭けのような決断をして今に至るのですが、もしそこで慎重に「やっぱりやめておこう」となっていたら、今のオリックス社とプロ野球はどうなっていたのでしょうか。
想像するだけでも興味深いです。

赤字縮小にこだわりすぎた失敗

知名度向上という点では大成功をおさめたオリックス球団ですが、しばらくすると宮内氏は疑問を持つようになります。

  • プロ野球は赤字経営が当たり前になっているが、本当にそれでよいのだろうか?

  • スポーツとはいえ、ビジネスである以上は独立採算で運営できるようにすべきではないか?

経営者であればきわめて真っ当な発想です。
そして、そこから「少しでも赤字を減らすように」と球団に求めていくのですが、これが裏目に出てしまいます。

赤字縮小のためには売上拡大よりも支出削減の方が手っ取り早いので、選手の年俸やチームのための経費がどんどん減らされていきます。
そうなると戦力は低下し、いい選手が育ったり定着したりする環境もなくなり、成績が低迷すればファンが減り、売上が落ちてさらに支出を削減しなければならなくなる、という負のスパイラルです。
支出を減らしてもちゃんと事業がまわる仕組みをあらかじめ作っておかなければならなかったのですが、そこを飛ばして赤字縮小だけに執着してしまったがゆえの失敗でした。

その後、オリックス球団はその反省を生かし、時間をかけながらも若手選手を育ててチームを強化する方針へと転換します。
2015〜2020年の6シーズンはずっとBクラスで最下位が3回、という苦しい時期が続きますが、それを覚悟を持って乗り越えたことで選手が台頭し2021年からの3連覇につながりました。

宮内氏は現場の人ではないので、育成の具体的なメソッドや環境整備については本書では触れられていません。
そのあたりは別の資料で確認する必要がありますが、いずれにせよオーナーのいい意味での心変わりが、今のオリックス球団の隆盛につながったのは間違いありません。

3連覇後のこれからにも注目

本記事を書いている時点で2024年のシーズンは1/3ほど経過しましたが、オリックス球団は5位と低迷しています。
主力の移籍など要因はあるのでしょうが、今シーズンに限らず中長期的にここからどう立て直していくのか、本書を読んだことでより興味が湧きました。
野球観戦からはしばらく遠ざかっていますが、いつか大阪や神戸での主催試合にもいつか足を運びたいです。

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