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アメリカナマズのさばき方

はじめに

一般には釣った淡水魚を食べるには、魚を生きたまま持ち帰り清水で数日間泥抜きします。しかし、アメリカナマズは特定外来生物に指定されているため、生きたまま運搬することが法律で禁じられています。そのため、釣り場で〆る必要があり、従来の臭み取りの技法は使えません。

アメリカナマズを試食した感想をネットで検索すると9:1の割合で美味しかったという感想が多いのですが、中には臭かったという感想もあります。釣って食べようとする意志には敬意を表しますが、せっかくなら美味しく食べてもらいたいところです。今のところ、何が原因で臭ったのか完全には把握できていませんが、現時点でのアメリカナマズの処理法についてまとめてみます。

私のさばき方

釣り場の選択
まず、釣った後にあれこれ処理するより釣り場を選ぶことがなにより大事です。臭いは生息場所の水質や捕食しているエサに原因がある可能性が高いため、できるだけ水質の良い所での釣りを心がけ、特にヘドロが溜まりそうな港内、下水処理場付近での釣りは避けます。

エサから臭いが移っている場合もあります。特に、魚の大量死が起こった際は、その腐肉を大量に捕食している可能性が高く、その流域での釣りは避けた方が無難です。

また、土浦周辺で釣りをしている私の感覚では、春先が泥臭い個体が多い印象があります。

釣り場における処理
私はナマズの内臓を食べたことはありませんが、下記のリンク先を見ると、血の塊の臓器である肝臓が特に泥臭く、血が泥臭い原因と断定されております。

さらに、血抜きの際に魚を湖水につけると浸透圧の影響で湖水が体内に入り泥臭くなるという懸念があります。

また、アメリカナマズを捌くと血に独特の臭いがあることに気が付きます。そのため、私は釣り場で以下のような処理を行っています。

持ち物 
クーラーボックス、保冷剤、包丁、70%エタノール、清水

①清水+エタノールでアメリカナマズを養生します。
②時々、エラと体表をなでて粘液を落とします。
③生きているうちに頭を落し内臓を取り出し清水で洗います。
 また、腸を傷つけて内容物が切身につかないよう注意します。
 これで鯖折り状態となり血抜きになります。
④氷漬けで保存します。

Tips

泥抜きの効果を疑問視する声もありますが、茨城県水産試験場内水面支場では泥抜きの効果を検証していて、環境やエサから身に臭いが移る反面、清水で養生することで比較的容易に身から臭いが抜けるそうです。http://mobile.pref.ibaraki.jp/nourinsuisan/naisuishi/bullechin/documents/bull2806_1.pdf

ネット上の情報では泥抜き時に、塩(2~3%程度)や酒(5%程度)、酢を清水に加えるとより泥抜きの効果があるという書き込みがありました。

マナマズの養殖に関する新聞記事によると、鮎やスジエビを食べているナマズは臭くなく、アメリカザリガニを食べているナマズは臭いらしいです。また、エサから身に臭いが移る現象を逆に利用して、柑橘類の皮を養殖魚に食わせる技術もあります。
http://exci.to/2Z6XVIe

自宅における処理
三枚卸しにした後、身を牛乳や酒につけて臭みとりをする方もいますが、私はそのような処理をしなくても臭わないのことを確認しています。
私が自宅で行う処理方法は以下の通りです。

①蒲焼のため皮を残す場合は魚にお湯をかけて体表のぬめりを落とします。
②三枚に卸します(腹骨はキッチンバサミで切断)。
③皮をはいでフィレにします。
④血合骨はないけど柵取りします。
⑤身をクンクンして臭いをチェック。臭いがキツイ場合は廃棄。
⑥生臭さがある場合、血合をトリミング。もしくはトーチで血合を焼く。

Tips

血合は臭うことが多く、パンガシウスの加工業者やアメリカナマズの原産国でも血合のトリミングが行われています。

パンガシウスの加工風景

血合を包丁の端で血合を削り落とすので市販のフィレに血合がありません。
https://www.youtube.com/watch?v=TU_NHWsxTiE&feature=emb_logo

アメリカでの臭い処理
血合をトリミングして塩水+酢に漬けます。
https://www.youtube.com/watch?v=E7C68uE2Oxo
https://www.youtube.com/watch?v=R0V2BmqS9CE&t=70

臭い消しの方法

臭い消しは、臭い物質を蒸発、分解、水や油に溶解させ、人間の臭覚の下限以下まで下げることです。以下の方法が臭いの抑制に効果があると言われています。

*鮮度を保ち臭い物質の発生を防ぎます。
*身を水や酒にしばらく晒します。
*身に塩ふってしばらく置いてからペーパーで水分をとります。
*身に湯通しし湯に臭いを移行させます。
*酢など酸性の食品で漬け分解や中和させます。
*臭みは揮発性のため、よく焼き揮発させます。
*揚げ物にすることで油に臭いを移行させます。
*燻製にします※。
※昔のナマズ料理には杉で燻した杉焼という調理法がありました。現在では、針葉樹より広葉樹で燻す燻製が一般的です。燻製は臭みを軽減する効果があり、身に多少臭いがあっても美味しくいただけます。

臭いの成分

泥臭さは、微生物が生成するゲオスミン、2-メチルイソボルネオールが魚の体に濃縮されることが原因です。ゲオスミンは酸性条件下では不安定であると言われています。

淡水魚の生臭さは、リジンが分解して生成されるピぺリジンやγ-アミノレバラール、γ-アミノ吉草酸などが原因です(海水魚の生臭さの原因物質はトリメチルアミンで、タラの独特な風味はこの物質です)。そのため、〆た後に鮮度を保つことが重要です。

脂質は時間が経つと過酸化脂質に変化して臭いの原因になります。血中の鉄がこの酸化を促進するため、〆た後に鮮度を保つ必要があります。また、クエン酸はこの金属をキレートして脂質の酸化を遅らせる効果があります。







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