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JR学研都市線・同志社合格発表前の駅


 半世紀ほどまえだ。正確にはおもいだせない。【JR学研都市線・同志社前駅】という駅があった頃だ。

ボクはMと会うために駅にむかった。

 道を聞くために薬局により、自分のたどってきた道に誤りのない事を確かめた。
  
 一本の大きく揺れる長い橋を渡り、目的の見慣れぬ大学の一角に辿りつく。

 オートバイをとめた。
  
  私大はこざっぱりとしていた。
  ディスニーランドの園内のように清潔だった。
  
  学生たちへのしつけが行き届いているか、学生がいないか、あるいは掃除業者がまめにやってるかの、どちらかだった。
  
  雨が本降りになりつつあった。
  
  合格者掲示板の手前の、駐車禁止のゾーンには、数台の黒くて大きなクルマが停まっていた。

二〇分ばかりの遅刻だった。
  
  ボクはオートバイのエンジンを切り、ビニールでおおわれた白い掲示板の前に立つ。
  
  Mはいなかった。
  『一七六』はなかった。
  
『一七二』の次が『一八〇』だった。

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