最近話題の「小西文書」を分析! その1

ここでは、2023/3月時点で話題となっている放送法の解釈問題に関する自民党の高市早苗衆議院議員の発言等について、立憲民主党の小西洋之参議院議員が総務省の職員から提供されたとする行政文書に関して、入手した小西洋之氏自らが動画投稿されていますので、その説明を切り抜きたいと思います。


動画における小西洋之氏の発言を抜粋

  1.  総務省の職員から内部文書の提供を受けた。(厳重取扱注意という印が押されている文書)

  2.  2014/11月-2015/5月までの期間における安倍総理と磯崎総理補佐官、高市早苗総務大臣の3人が、放送法の在り方を定める放送法の解釈を都合の良いようにねじ曲げる発言をしている。

  3.  総務官僚は抵抗していたにもかかわらず、政治的圧力で押し倒して法解釈を作っていたというとんでもない違法行為。

  4.  磯崎総理補佐官と高市早苗総務大臣がいつ会って、どういう会話をしていたか、総務省はどういう文書を提出していたかが克明に記されている。

  5.  テレビ局の放送内容は、政治的公平が守られなければいけないというのが放送法にある。
    (放送法第4条第1項第2号 政治的に公平であること。)

  6.  一つの考え方だけを放送局がずっと報道していると、国民が偏った考え方になってしまう。
    それがいけないので、野党の主張が正しいと報道すれば、同時にそれに対して政府がどう反論しているのかという全体のバランスをとらなければいけないと放送法に書いてある。

  7.  全体のバランスをとる場合、一つの番組内でやる必要はなく、ある大事件が起きたときは、追及している野党の主張あるいは紹介している評論家の主張をしっかり取り上げるということで放送番組全体として政治的公平がとられていれば良い。
    例えば、何ヵ月間にTBSや日テレの番組を見たときに、全体としてバランスがとれていれば政治的公平が保たれる。
    逆に言うと、放送番組の全体を見ない限り政治的公平の判断はできないというのが戦後作られた。昭和20年代に作られた放送法の確立した解釈。

    それを全体ではなく、たった一つの番組だけで政治的公平を判断して究極の場合は放送局の電波を止めるという答弁を2015/5月に高市早苗総務大臣が突然に総務委員会で行ったのです。

  8.  なぜその解釈を作られたのか、作られた経緯が非常に不正である。
    作られた解釈が違法であること。それを追及した。
    解釈が作られた経緯が実はこの文書に書いてある。
    「TBSのサンデーモーニングがけしからん、安倍総理の批判ばかりしている。」
    磯崎総理補佐官が、政治的公平に反して違法になる解釈を作り、まさに文書で言っているわけです。

  9.  総務官僚に圧力をかけて、官僚はそんなことできないと初めは言っていたが、最後は磯崎総理補佐官が自分で解釈の文書をつくって突きつけて、事実上は高市早苗総務大臣の答弁にほとんど同じ内容が行きついてしまっている。
    途中、安倍総理に案件として挙げているが、安倍総理も「サンデーモーニングはけしからんよな」と言うんです。
    「であれば、政治的公平を守っていないテレビ番組があるから、そのために解釈変更をやれば良いではないか」と。

  10.  しかも狡いのは、予算委員会でそういう答弁を高市早苗氏がするのではなく、予算委員会が終わった後の静かな時期(5月くらい)に総務委員会でやっていたという経緯がある。

  11.  かつて個別のTBSのサンデーモーニングやテレビ朝日の番組名も出ているのですが、政権批判をする個別番組を狙い撃ちして圧力をかけるような解釈を作ったという不正な動機。
    それを作る過程で磯崎総理補佐官がものすごい圧力をかけていた。
    磯崎総理補佐官の解釈案に総務省の官僚は「これは間違っている。違法な解釈になってしまう。」という意見書を出しているのですが、(磯崎総理補佐官は)激昂で罵倒して押し返したということまで書かれています。
    挙げ句の果てには「俺と安倍総理で解釈は作る。菅官房長官や総務省の局長のお前らが言うような話ではない。」ということまで書いている。

  12.  作られた解釈が違法であると同時に、濫用の危険性を持つ内容になっています。
    放送番組を数10か数100個の全体で見ることで初めて政治的介入を防ぐことが出来る。
    放送番組が何10個ある中の一つが野党の国会議員を出演させていた場合、これが偏っているからアウトということになれば、いくらでも権力の介入を受けられるようになってしまう。
    そこのロジックをちゃんと詰めていきたい。

  13.  磯崎総理補佐官が押しつけてきて、高市早苗総務大臣が答弁で言われた「こういう場合は一つの番組でも政治的公平違反を判断することはできる」という解釈があるのですが、その解釈に何の基準もない、中身もない、中身を説明した文書も総務省の中にない、一つ一つの言葉について具体的な要件や基準も説明は出来ませんという答弁が今日あった。

    したがって、そのような解釈の証明の半分はできた。

  14.  この問題は日本の民主主義と言論報道の自由が生きるか死ぬかの問題です。
    時の権力が放送局に違法だと認定して電波を止めることができるのですが、それをやっているのがロシアと中国。
    もともと自由な報道は中国でできないのですが、ロシアは現実に放送局を止められている。

  15.  我々の社会は、今のままだといつでも恐ろしい権力者が現れたらそういう社会になってしまう。
    それを止めなければいけない。そのためには違法な解釈を撤回させる。

  16.  高市早苗氏は、このよく出来た行政文書について捏造だと言っている。
    「総務官僚が自分を貶めるために文書を作ったのだ」とまで言った。
    「全部捏造だ」とまで言いましたので、逆に言うとそれしか言えない。

    ここに書いてあることが一つでも真実、記憶にあると言った瞬間に、放送法を3人の権力者だけで好きなように作った解釈で、私物化したとんでもない違法行為が明らかになってしまう。

  17.  文書を提供してくれた総務省の方の思いに応えなければいけない。
    この内部文書については、磯崎総理補佐官のすごい発言、当時の山田総理秘書官が「放送法違反の言論弾圧では」という発言をしているが、大事なところは配付資料としたが委員会で使うことが出来ませんでした。
    与党の反対で委員会で使えなかった。
    総務省が同じ文書が総務省の中にあります。
    「本当によく出来た文書なのでより位の高い行政文書として位置づけざるを得ないと思っています。」と総務省の責任者が私に言っているのですが、それを与党が委員会で岸田総理や高市大臣などに追及されたらまずいので、必至にこの文書の配布を止めました。

  18.  文書の配布は理事会で全会派一致しないと配布はできないルールになっているのです。
    これだけの行政文書の配布を止めたのは過去にもない。
    私もこれを絶対に前例にしないという条件はつけましたが、過去、森友加計学園、東北新社の外資規制違反、管総理の息子さんが絡んでいたあの時も同じような文書を配って普通に配布できた。
    今回だけは止めることをしてきた。政権も必至なんだなと思います。


小西洋之氏の動画内における発言を分析

ここでは、経緯を整理していきたいと考えて、分解していきたいと考えます。

文書の入手について

国会議員が行政文書を省庁に対して要求することは、国会法104条で認められています。
第104条 各議院又は各議院の委員会から審査又は調査のため、内閣、官公署その他に対し、必要な報告又は記録の提出を求めたときは、その求めに応じなければならない。

厳密には、応じられないものもあったりするので、他の条文で拒否する正当性があるかどうかが定められています。

しかし、今回は行政側からの積極的リークです。
この場合、情報漏洩となるのか否か。
これについて、国民民主党の玉木代表が記事で指摘していました。

玉木代表曰く、

「ああいう形で行政文書が安易に外に流出すること自体は、国家のセキュリティ管理の問題としてはもちろん問題」
「見えない意図」に振り回される可能性もあるとして「こういったリークや情報流出が行われた背景も合わせて、きちんと精査すべき」と主張。
公表された資料は「総務省の職員の方」から提供を受けたといい、その多くには、右上に「厳重取扱注意」「取扱厳重注意」の注意書きがある。

玉木氏はこの点を念頭に、 「外に出すことがルールとして駄目だとされているものが(外部に)渡って、国会議員の手に渡り国会で議論になり、そして後付けでそれを認めていくというようなことになっている」
「ああいう形で行政文書が安易に外に流出すること自体は、国家のセキュリティ管理の問題としてはもちろん問題だと思う」 などとして、公表された経緯を疑問視。
内容と合わせて、文書が小西氏に持ち込まれた経緯も精査すべきだとした。

「内容の是非はこれからきちんと精査すると同時に、ある場合には政治的意図を持って、こういうリークが行われて、我々が大きく振り回されてしまう。それは何か見えない、もう一つの意図に振り回されている可能性もあるので、そういった観点、特に選挙にこういったものがどう影響するかどうかも含めて、これはあまり適切な行為とは思えない。それは民主主義のプロセスに関して、こういったリークを通じて何かをやろうとすることが、ある政治的意図のもとに行われたとしたら、それは問題。中身の是非を精査すると同時に、こういったリークや情報流出が行われたその背景も合わせて、きちんと精査すべき」

J-CASTニュース編集部 工藤博司

公務員の公益通報は守秘義務に違反しない

上記の記事では、さらに

労働者などが、法令違反を組織内の通報窓口や行政機関に通報する「公益通報」制度との関係については「どのようにバランスを取っていくかは非常に難しい問題」だとした。

 なお、政府見解では、公務員による公益通報は守秘義務違反にはあたらないと考えられている。
例えば消費者庁ウェブサイトの「行政機関向けQ&A」では、
「公務員が公益通報を行うことは、国家公務員法や地方公務員法に定める守秘義務に反しませんか」
という問いに対して、次のように回答している。

「公益通報等の対象となる法令違反行為は、犯罪行為などの反社会性が明白な行為であり、秘密として保護するに値しないほか、公務員には刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)第239条第2項により犯罪の告発義務が課されている趣旨にも鑑みれば、公益通報をしても守秘義務に反しないと考えられ、むしろ公務員として積極的に法令違反の是正に協力すべきものと考えられます」

J-CASTニュース編集部 工藤博司

まとめると、国会法104条で国会議員が行政文書を入手する手段は法整備されている中、行政側からの積極的リークは、それが「犯罪行為などの反社会性が明白な行為であり、秘密として保護するに値しない」とする場合はOKということであり、さらに、刑事訴訟法第239条第2項により犯罪の告発義務が課されている公務員には罪はないとしています。

ここで重要なのは、行政側の法令違反が明確であれば告発義務が公務員には課せられているということです。

刑事訴訟法第239条第2項
「官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。」

この意味が理解できますか?
つまり、逆に言えば、明らかな法令違反であるにもかかわらず、告発をしない場合はその通報義務を怠っていると解釈できるし、その解釈しかあり得ないのです。

何とも美しい法令であろうか。行政による犯罪は撲滅できる。

では聞きたい。

これを知っていて、なお幾多の明らかな法令違反を秘匿する行政職員は、告発する義務を怠っているのであり、各人はその義務を怠っているか否かについて、「明らかな法令違反」であるか否かについてもまた問いただす必要があるということになりますね。

つまり、法令違反を指摘する第三者は、その法令違反に関わったであろう当人に対して、「明らかな法令違反」であったかどうかの認識を問い、それに対して答える義務が生じるのです。

この高市早苗氏の問題に関して言うなら、文書作成者及び関係した全職員が名乗りを上げ、または公に呼び出されたならば、「明らかな法令違反」についての見解について応答する必要があり、公益性を鑑みれば、その氏名は伏せられるものでもないということです。

主な関係者の発言(小西洋之氏曰く)

  • 磯崎元総理補佐官の発言
    「TBSのサンデーモーニングがけしからん、安倍総理の批判ばかりしている。」
    総務官僚の反論に対して、「俺と安倍総理で解釈は作る。菅官房長官や総務省の局長のお前らが言うような話ではない。」

  • 安倍元総理の発言
    「サンデーモーニングは、けしからんよな」
    「であれば、政治的公平を守っていないテレビ番組があるから、そのために解釈変更をやれば良いではないか」

  • 総務官僚の対応
    「(解釈変更)そんなことできない」
    「これは間違っている。違法な解釈になってしまう。」という意見書を出している。(磯崎総理補佐官に突っ返された)
    「本当によく出来た文書なのでより位の高い行政文書として位置づけざるを得ないと思っています。」と総務省責任者は小西洋之氏に発言。

  • 高市早苗総務大臣の反論
    小西洋之氏の発言からして、高市早苗氏は国会での答弁で以下のように発言したとしている。
    「文書は捏造」
    「総務官僚が自分を貶めるために文書を作ったのだ」
    「全部捏造だ」

  • 山田総理秘書官
    「放送法違反の言論弾圧では」(注意喚起)


総務省が後出しで文書を公表

この「小西文書」が予算委員会で質疑されて以降、メディアが全面的に取り上げた。
そして、不自然にも総務省は3/7にHPで公開したのです。
(下記がそのリンク先。)

差し当たって、今回の投稿では小西洋之氏の動画発言を切り出しましたが、続編では如何に怪しい行政文書であるかに関して投稿したいと思います。

公開の理由が下記
政治的公平に関する文書の公開について

原文書

https://www.soumu.go.jp/main_content/000866745.pdf


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