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よい大人の見本

私には血の繋がりのないおばあちゃんともお母さんと言うにも年齢的に微妙な良き理解者がいる。

前の職場で部署は違えど、沢山支えてくれたパートさん。仕事ではなく主にプライベートで。

退職後、お互いの生存確認程度のメールはしていたものの、久しく会ってなかったのでお花を持って会いに行った。


家に着くなり「ご飯は食べた?」
と聞かれ、待ってましたとばかりに「食べてない!」と元気に答える。

台所に向かう背中を見送りながら、こんな風に甘えられる存在がいることにじーんとする。


相変わらず部屋中に自分の作品が飾ってあるその人は、己の内側にある思いを作品を通してアウトプットすることがとても上手。

優しさ、楽しさ、怒り、悲しみ
そういった感情から生まれ、学んだことを作品に変換する。
この体力がまず羨ましい。大抵の人はやり過ごすことばかり上手くなっていく。すごくパワフルだ。
楽しいから本人は苦でもないのだろうけど。


さあさ、食べて、と出された食事は赤飯、卵スープ、瓜の漬物、コリンキー(南瓜の一種)の炒め物・・・
私の祖父母は産まれる前に他界していたが、祖母の家に行ったらこんな風なんだろうなと思わずにはいられないほど健康的で心温まる食事だった。


その人は今も同じ場所で働き続けてる。
会ってない間に起きたことを話してくれる。
みんなに頼りにされているので毎日問題が降りかかってくるようだが、ニコニコしながら話すので、つい心配いらないなと思ってしまう。

一通り話し終えた後に、
「それでね、課長に何か不満や改善して欲しいことはないか聞かれたんだけど、この歳で働かせてもらってるだけありがたいから何もございませんって答えたの。」
と聞いて、私はえーっっ!と叫んだ。


正社員を辞めて非正規雇用となった今、ついつい時給分以上のことはしたくないなと思ってしまう場面がある。
まだ勤めて一年も経っていないがすでに不満もある。

それなのに私の倍以上生きてきて、世の中のいろんな部分を見てきた人がこんな心持ちでいるなんて。

歳を重ねるにつれ損得勘定がはたらくようになった自分が少し恥ずかしくなった。

「働かせてもらってる。」「仕事は楽しいものだって新人さんにも気づいてもらいたい。」
そう言えるのは本当にすごい。

こんなおばちゃんにならないと。

自分の機嫌を自分でとって、感謝の気持ちを持ちつつも誰に媚びるでもない。なるべく楽しく生きる。

そういえば私のモットーは、「自分の幸せを他人任せにしない」だった。
それは逆も然りで、自分の不幸も他人のせいにしたくない。

久しぶりに会えてよかった。

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