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一日一首(令和六年三月)

毎週金曜に出勤するたび降る雪に「もう三月なのに」とついぼやきけり
東京より戻りし娘に見せむとか故郷津軽は地吹雪つづく
ガラス越しに吹雪をながむる雛人形。「三月なのに」と話しあふがに
小保方晴子著『あの日』を聴きて甦る。国を挙げての魔女狩りのさま
大雪で地上に出られぬ虫たちは「啓蟄なのに」と巣籠続けむ
日に二冊速聴をする。老脳といへどまだまだ処理能十分
年金と僅かばかりの収入を胸張り記す確定申告
原田マハ著『板上に咲く』を試聴せしが津軽訛りがずれゐてもどかし
「アイデアは既存要素の新機軸」とふJWヤングの言に宜なふ
加藤秀俊氏は『九十歳のラブレター』の上梓をまたず亡き妻のもとへ
加藤秀俊著『九十歳のラブレター』に心揺さぶらる われも書かむか
朝刊に十三年前を思ひ出し「まだ若かった」と語り合ふなり
吹雪くなか三か月ぶりの歯科がよひ。噛み心地よくランチのうまし
日本の人口減少つづきゐてやがて「限界国家」にならむとするや
マスコミの既得権益の後ろ盾は「日刊新聞紙法」なるアナクロニズム
時うつりweb3の世となりピロピロとふモデムの音の今は懐かし
春彼岸、畑の雪消え越冬せし明日葉は逞しく蕾みたりけり
福寿草の黄金の花が縮こまりじつと耐へをり降りしきる雪に
マラソンの〈応援ナビ〉にて移動する長男の名を夫婦で追ひたり
待ちかねし春分なれど吹雪くなり「名残の冬」かとため息をつく
春陽あび勝間の本をオーディブルで聴きつつバイクマシンを漕ぎゐる
HPVキャッチアップ接種の案内に厚労省の反省見えず
森永卓郎著『ザイム真理教』を速聴し消費税なき暮らしを夢想す
満開の福寿草らを写メせしかば即「春ですね~」と嬉しき返信
来月の〈健生塾〉で映さむと自慢のネタをパワポに仕組む
匿名でSNSを飛び交へるルサンチマンの言葉に凍る
春陽あび自転車のタイヤに空気入れ磨きしついでに今年の初乗り
『人生の結論』 を上梓後に劇画家の小池一夫氏は逝去されしと
気がつけば『短歌DE繰り言』の仲間増ゆ 一日一首は詠み続けたし
一年の健診医を終へ頼られて契約書を更新す覚悟を決めて
夏に向け木香薔薇をパーゴラに誘引すれば妻も喜ぶ

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