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片思いしてた女子を妹にディスられた話

妹よ、お前はもう覚えていないだろう。いや、そもそも意識すらしていないかもしれない。

お前は自分が気づかないうちに、俺が好きな女の子の悪口を言ったんだ!それも2回もな。

最初は俺が中一、お前が小五の時だ。俺のクラスの三学期の班替えは、まず班長を決め、それから班長が班員をドラフトで選ぶという方式になったんだ。

班長は六人選ばれたが、その一人が、当時俺が好きだったFさんだった。

Fさんは、成績が良かった。おそらくクラスで一番だっただろう。そして美人だった。

2、3年前にカラオケバトルという番組で竹野留里という娘がよく出場していたが、あまりにも当時のFさんに似ていたので驚いたことがある。

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こんな娘だ。普段やっぱり赤縁の眼鏡をかけていたが、たまにはずすときもあって、その時の目の美しさはひときわだったな。

子供のころの俺は何度か初恋をしたが、「自分より頭のいい女の子」がタイプだった。ただ俺も昔は成績が良かったので、対象者は非常に限られていた。その貴重な一人が、Fさんだったんだ。

班長がドラフトで班員を一人ずつ選んでいったが、なんと俺を班員に選んでくれた。しかも席は、信じられないことにFさんの隣になった!これ以上の喜びはない!

今から思い返すと、どうもFさんは俺の好意に気づいていたのかもしれない。そして好意の返報性というやつで、俺のことも憎からず思っていたのかもしれない。だが俺を隣にした理由の本当のところは今でも不明だ。

夢のような日々が過ぎ、最後に班ごとの出し物をすることとなった。俺はあまり気にしていなかったが、Fさんは出し物のことで色々と活動をしていたようだ。俺はそんなことより部活の剣道部のことで頭がいっぱいだった。

ある日部活から家に帰ると、妹が家にいた。そして、妹はこう言った。「お兄ちゃん、Fさんっていう人から電話あったで」

俺は心臓が飛び出るほど驚いた。なんでFさんが、俺に電話を?告白か、告白なのか?

聞いてみると、どうやら出し物の話のようで、俺の甘い期待はあっさりと裏切られた。それはいいが、その後の妹の言葉を俺は今でもはっきり覚えている。

「なんか、意地悪そうな感じの声やったな」

ふざけんな!逆、逆!意地悪なんて、一生しない!

俺は心の中でそう叫んでいたが、もちろん平静を装って「そうかな」などとクールに返事をしていた。

その後中学が分離してFさんとは離れ離れとなり、高校に至ってはFさんは俺よりもランクが上の進学校に進んだ。

俺が大学生のころ、電車に乗っていると向かいにFさんが座っているのを見かけたことがある。彼女は眠っていた。銀のマニュキュアをしているのを見た時、「大人になったんだね」と感じたものだ。

その次は、俺が浪人、お前が高2の時だ。

俺は高3の頃、Sさんという同級生の女の子が好きだった。その頃になると、俺の好みも多少変わってきていた。俺がなぜSさんのことを好きになったのかというと、そのいたいけさだ。

俺の高校には藤棚があって、花が咲いた後に実をつける。俺はその実を一つ同級生の男と取り、窓の外に干しておいた。

そいつとは高1の時も同じで、当時も同じことをして翌日になると藤の実の豆の房が左右に反り返ることを知っていた。高3の時にそれを再現しようと思ったわけだ。

翌日、登校するとなぜか藤の実が見当たらない。探していると、「ほらー、こんなんあったでー」の声。見ると、Sさんが俺の反り返った藤の実を持って、数人の女子たちとしゃべっていた。

そのいたいけな様子が、俺の恋心を刺激したのはいうまでもない。ただ、Sさんはそんな感じで恋愛に興味がなさそうで、男子と全く話をしなかった。俺の方も、中3からの人格的危機で陰気な男に成り下がっていたので何の進展もあろうはずがない。

そのまま高校を卒業し、俺はSさんのことなど忘れて浪人生活を送り、翌年いくつか大学を受験した。その一つが関学だった。関学には余裕で合格だ。

すると、入学手続をしていないのに関学の生協から新入生用のガイドブックが送られてきた。その表紙には2人の女子学生が載っていた。そのうちの一人が、なんとSさんだ!

間の悪いことに、その時妹がそばにいた。「同級生だった子が写ってる」と妹に言いながらそのガイドブックを妹に見せたのだが、お前は何と言ったか覚えているか?

「こっちの子はきれいけど、そっちはブスやな」お前はそう言ったんだ。そして、「ブス」と言われたのは、何ということだろう、Sさんだった!

ブスじゃない!そっちの子より何億倍も可愛いわ!

俺は心の中でそう叫んでいたが、「ふーん」などとあいまいに言いながらそのガイドブックを捨てた。

俺の高校は男子の偏差値が女子よりだいぶ高い学校だったが、女子で現役で関学に入ったということは、Sさんも頭が良かったんだろう。

俺は関学には行かなかった。雰囲気が俺に合わなかったし、Sさんの後輩になるのも気が進まなかったからだ。

それから色々なことがあったが、その後俺は実家を出たので妹に女性について何かを言われることはなかった。もう一生ないだろうな。少し寂しいような気もする。