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「ネタバレ実況」ゲーム業界も賛否◆あり?なし?境目はどこに【時事ドットコム取材班】(2023年05月08日)

 ゲームの動画配信が活況だ。自分のプレーを生中継する「ゲーム実況」には芸能人も続々と参入しており、配信の盛り上がりがそのゲームの売り上げを左右することも珍しくない。ただ、ゲーム画面の無断配信は権利者の著作権を侵害する恐れがあり、内容の「ネタバレ」には賛否が分かれる。境界を分けるものは何なのだろうか。(時事ドットコム編集部 太田宇律

 【時事コム取材班】

4万人が見入った「ゲーム実況」

 「どうも皆さんこんばんは、始まりましたEIKO!GO!!」「本日は『バイオハザードRe:4』でございます」。2023年4月下旬、お笑い芸人の狩野英孝さんがユーチューブで実況配信を始めると、視聴者から「待ってました」「楽しみ」と矢継ぎ早にコメントが書き込まれた。狩野さんの公式チャンネルは登録人数が150万人を超えており、この日は最高で4万人近くが同時視聴。ゲーム展開と狩野さんの絶妙なリアクションを楽しんでいた。

狩野英孝さんの公式チャンネル「EIKO!GO!!」(ユーチューブより)

 ゲーム実況はプレーが苦手な人でも挑戦でき、しばしば、思わぬ「珍プレー」で盛り上がる。配信者が書き込まれた視聴者コメントをその場で読み上げたり、画面越しに返事したりできる「双方向性」も魅力の一つだ。人気配信者は企業からの広告収益のほか、視聴者からの「投げ銭」を受け取ることもでき、中には投げ銭だけで数千万円を稼ぎだすつわものまでいる。

動画視聴者は年々増加

 ゲーム市場の調査結果をまとめた「ファミ通ゲーム白書2022」(角川アスキー総合研究所)によると、21年の国内のゲーム市場は約2兆円で、10年前に比べ2倍超に成長。実況や録画配信、広告も含めたゲーム関連動画の視聴者数も、2019年の約1777万人から、20年は約2220万人、21年は約2253万人に増加している。

 副編集長の藤池隆司さんによると、ゲーム動画の配信は2006年に動画投稿サイト「ニコニコ動画」が登場して以降、徐々に浸透。ネット中継ができる「ニコニコ生放送」やユーチューブ、動画配信機能を備えた家庭用ゲーム機などの登場を経て、「ゲーム文化の一部」と言えるほどに成長した。特にここ数年間は、新型コロナウイルス禍の「巣ごもり需要」の影響や、芸能人らの参入が相次いだことで、人気に拍車が掛かっているという。

国内ゲーム市場規模の推移(「ファミ通ゲーム白書2022」より)

 藤池さんは「いまどき、プレー動画が投稿されないゲームはほとんどなく、実況が盛り上がるかどうかでゲームの売り上げが左右されるケースも多い。観戦するだけでも楽しいゲームを目指し、見栄えを工夫するメーカーも増えている」と話す。

映像を無断編集「買わなくても分かる」

 急速に裾野を広げるゲーム配信だが、ゲーム内に挿入される「ムービーシーン」と呼ばれる映像だけをつなぎ合わせて、物語の全容を明かしてしまう「ネタバレ動画」や、ゲーム音楽を抜き出して再生できるようにした動画も存在する。いずれも広告収入が目当てとみられ、中には、本来クリアまで50時間ほど掛かるゲームのムービーを無断編集し、「購入しなくてもこれを見ればストーリーが分かる」と宣伝していた動画もあった。

 ウェブ上の著作権侵害に詳しい中島博之弁護士によると、ゲーム内容の無断配信は、基本的に権利者の著作権侵害に当たる。ただ、動画の持つ一定の宣伝効果や、顧客相手の訴訟提起が企業ブランドを傷つける恐れを考慮し、業界では長らく「黙認」状態が続いてきたという。

プレー動画の配信自粛を求めるゲーム企業「プロトタイプ」の声明(公式サイトより)

 動画人気の高まりを無視できなくなったのか、近年では、企業が配信の可否や禁止事項などを定めたガイドラインを公表する動きも広がっている。恋愛アドベンチャーゲームなどの制作、販売を手掛ける「プロトタイプ」(東京)は「内容を公開されてしまうことは営業上の大きな損失となる」として、プレー動画の配信自粛を要請。任天堂は「著作物のコピーにすぎない投稿」などについては「ご遠慮ください」としつつ、ガイドラインを守っていれば、ゲーム動画やスクリーンショットの投稿、収益化に「著作権侵害を主張しない」とする文書をウェブ上で公開した。

「全てOK」「それでは困る」

 ゲーム配信を認めるか否か。23年3月、文化庁などが主催したオンラインセミナーで、ゲームソフトの開発を手掛ける「サイバーコネクトツー」(福岡市)の代表取締役、松山洋さんと、「428 封鎖された渋谷で」などのヒットで知られるゲームクリエイター、イシイジロウさんが、是非について意見を交わす一幕があった。

ゲーム実況と著作権に関するオンラインセミナーに出席した「サイバーコネクトツー」の松山洋・代表取締役=2023年3月22日、東京都内

 松山さんは「自社作品であれば、ゲーム配信も収益化もすべてOK」との立場。「われわれは完成したゲームを1人でも多くの人に届けるため、大金を掛けて世界中にプロモーション(宣伝)する。それでも、発売後何カ月もたって『あのゲームもう出てたんだ』と言われてしまうのが宣伝の世界だ」と説明した上で、「広告収益という下心があっても、動画配信によって宣伝を手助けしてくれるのであれば大歓迎。個人的意見だが、『ネタバレ』をしてもらった方が多くの人に伝わると感じている」と語った。

オンラインセミナーで発言するゲームクリエイターのイシイジロウさん=2023年3月22日、東京都内

 これに対し、イシイさんは「多くの人が実況を楽しんでいるので、全部OKと言えば受けがいいが、『それでは困る』という立場もある」と反論した。これまでイシイさんが手掛けてきたゲームの多くは、ボタンを押してストーリーを読み進める「ビジュアルノベル」と呼ばれるもの。「実況などで物語の核心を明かされてしまうと、視聴者の購入意欲が大きくそがれてしまう。どれも同じゲームだとまとめてしまわず、ジャンルごとに丁寧に考えていただけたら」と訴えた。

違法配信とそうではない動画の境目がどこにあるのか。摘発に携わってきた中島弁護士に伺いました。後半で紹介します。

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