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キラキラしたSNSに疲れた若者たちが、それでもSNSを使い続ける理由

みなさん、若者の「美の基準」が歪んでいっている問題を知っていますか?

物心ついた時からSNSが当たり前にある世代にとって、写真を撮ったらSNS上に公開したいため、少しでも見栄えが良くなるよう画像の加工が当たり前です。その加工画像に見慣れてしまった若者たちは加工された画像をリアルな自分にも求めるようになり、10代の美容整形希望者も急増しています。

まさにSNSによって精神衛生が損なわれてしまっており、この問題についてはSNSの普及し始めてからずっと問題視されています。

この状態には若者たちもSNSに疲れを示すようになり、「リアルを映し出す」新たなSNSのあり方に需要が出てきています。

そこで今回は、美の基準の変化に影響を与えたSNSの進化とカメラ技術発展の歴史、そしてSNS社会に疲れた若者たちが今求めるリアルなSNSのあり方についての記事になります。少し長いですが、ぜひ最後までご覧ください!


SNSの歴史

SNSの起源は1997年にアメリカで誕生した「Six Degrees.com」と言われています。そこから世界各国で通信インフラが発展することで、情報が文字のみから画像や動画の発信ができるようになりました。また、スマートフォンが普及し、情報発信がよりスピーディーにできるようにり、SNSの利用は一気に普及していきます。
2004年に「Facebook」、2006年(日本でローカライズされたのは2008年)にスマホの普及とともに手軽で速攻性のある情報発信ができる「Twitter」が誕生しました。そして2012年に画像や動画の投稿がメインのInstagramが、2016年に短尺の動画を投稿できる「TikTok」が誕生し、芸能人のみならず、一般人も手軽にプライベートで撮った写真や動画を世界中へ発信できるようになりました。

カメラの進化と共有したい人間心理

SNSで共有する情報の多様化は、SNS自体の発展はもちろんですが、カメラ技術の発展による「写真を撮る」という行為の大衆化とも言えるでしょう。スマホで写真を撮るのが当たり前の世の中になっていますが、元々写真を撮るというのは専門的な技術が必要で、手軽に日常を切り取れる現代のカメラとは程遠いものでした。

日本で「日常を切り取る」一つの転機となったのは、1941年に発売開始したフィルムカメラの普及と言われています。それまでの専門的な知識や技術というものがなくても、誰でも気軽に写真を撮ることができるようになり一般化していきました。

また、1995年にプリント倶楽部(通称:プリクラ)がゲームセンターに登場。プリクラでは背景色を選んだり、写真にデコレーションができるようになったことで、写真を撮った後に「誰かに見せたい」という願望が加わった時期と推測できます。

そこからケータイ・スマートフォンの普及により、今までにないくらい気軽に写真や動画を撮影できるようになり、それに合わせたSNSの登場で他人への共有のハードルもぐんと下がりました。

そもそも「人々はなぜ共有するのか?」という疑問に対して、The New York Times Customer Insight Groupが「人々がなぜSNSで共有するのか、そしてそれはどういったことを意味するのか」というテーマで調査を行い、その結果、SNSで何かを共有する行為には5つの動機があるという事が分かりました。(引用:INFO CUBIC

これから分かることは、SNSで共有する事を通して、良いものを共有したい、応援したいという動機の他に、自分の存在価値を確かめたい、立ち位置を明確にしたいという承認欲求的な要素も含まれているということです。
SNSが当たり前になってくるにつれて、不特定多数に向けた情報発信、それに対するリアクションが多様化し、さらに承認欲求の要素が強まっていったと考えられます

若い世代への影響

いいものを共有したい、という気持ちは多くの人が共感できると思います。ただそこに承認欲求が含めれているとすると、他人に共有する際、多少なりともよく見せたくなるのは人間の性ではないでしょうか。

それがあまりにも過剰になっているのが今の社会です。SNSへ投稿することを目的として、友達と写真を撮る、どこかへ出かける、そして加工を施した画像をSNS上に投稿する。また、時間があればつい開いてしまうSNSは、楽しそうな写真や、綺麗な人の写真が無意識のうちにたくさん目に入ってきます。「みんなは楽しそうなのに…」「綺麗な人ばっかだなあ…」という他人を羨んで、自分の生活に当てはめて考えてしまう感覚は、積もり積もってストレスになります。SNSに振り回された異常な加工文化が、ユーザーの楽しめる範囲を超えてしまっていると言えるでしょう。

このような心理状態で利用されるSNSは、アイデンティティが確立していない若者、特に10代のユーザーの精神衛生を損なう恐れがあるという懸念点として上がってきました。
また、Facebookの内部調査で「Instagramの利用は10代の若者のメンタルヘルスに悪影響を及ぼす」という調査結果も出ています。他にも10代の若者が、加工アプリのような顔を希望して整形するケースも増えているというので、これは間違いなく社会問題であり、当事者だけでなく大人も含めてSNSとの向き合い方を対策していかなければならないでしょう。

キラキラしたSNSは疲れた、けど誰かと繋がる安心感が欲しい

いよいよ若者たちは見栄えを気にしたキラキラしたSNSに疲弊を隠せなくなってきました。

元々SNSがない時代を経験している世代は「疲れたのであれば、そもそもSNSをやらなければいいのではないか?」と思うかもしれません。ただ、SNSが当たり前にある環境で成長してきた若い世代は、友達と取るコミュニケーションもSNSありきのものになっていると言われています。

KDDIの調査によると、18歳〜22歳のうち約22%の1日のスマホ利用時間は5時間以上と言われています。それだけスマホと生活をともにする若者にとって、SNSで誰かと繋がって情報を共有することは、は当たり前なのかもしれません。

また、「繋がる」という点で若者たちに人気な機能でいくと、「位置情報共有」が挙げられます。
2023年2月にサービスを終了した「Zenly」も終了を惜しむ声が多かったのは記憶に新しいのではないでしょうか?ただ位置情報共有と聞くと、少し怖いイメージがある方もいるかもしれません。しかし、SNSとともに成長してきた若者にとって、常に誰かと繋がれる状態にあるというのは当たり前。むしろ位置情報を共有し常に繋がっていることに対して安心感を抱いているのです。また、突然遊びなどに誘う0からのコミュニケーションより、位置情報を知って、何をしているのか想像してからの方がコミュニケーションが取りやすいという意見もあります。
そんな若者たちの、見栄えを気にしたキラキラしたSNSには疲れたけど、常に誰かと繋がっていたいという気持ちが反映されたアプリが現在続々とリリースされ、人気を博しています。

「Be Real」をはじめとするリアル共有アプリの誕生

App Storeのスクリーンショット

2022年のApp Store Awardsを受賞したSNSアプリ「BeReal」は2020年にフランスで誕生しました。「本物の友情を築こう」というコンセプトで、海外の若者に人気を博しています。

App Store Awardsとは
2008年に登場したApp Storeは175ヵ国と地域から180万本以上のアプリが集まる、世界最大のアプリケーション市場。世界の人口が約80億人いる中で、Appleユーザーは全世界で10億人を突破しており、ここで流行るアプリケーションは社会現象となるなど大きな影響力がある。そんなApp storeで1年に1回開催されている。

BeRealのアプリ仕様としては、1日に1回アプリ側から不定期に通知が来て、2分以内に撮影しその写真を投稿するというシンプルなものです。大きな特徴は、加工フィルター機能が使えないということ、フロントカメラとバックカメラが同時に起動するため、自分自身だけでなく、どんな状況下にいるのかもリアルタイム共有することになるという点です。
また、BeRealで撮影した写真を他のSNSに投稿することは可能ですが、逆はNGというルールで、画像加工を徹底的に排除した仕様となっています。他にも写真を取り直した回数もわかるため、無駄によく見られたいなどという気持ちで何度も取り直す方がかえって恥ずかしい気もします。

このようなありのままで居れること、リアルタイムを共有できることで繋がっている安心感が持てるということで、BeReal は世界中の若い世代で爆発的な人気が出て、日本でもじわじわと人気の広がりを見せています。
他にもこれを模倣したアプリ「TikTok Now」が、既に人気のアプリ「TikTok」からリリースされたり、「Poparazzi」というBe Real同様画像加工NGで、他者撮りに特化したSNSも誕生し、リアルを共有する機能はこれからのアプリに必要な機能になってきたと言えるかもしれません

まとめ

SNSは通信インフラの整備やカメラ技術の発展など、他の文明も絡めて一緒に進化してきました。本来のSNSは世界中の人と気軽に繋がれるツールで、情報を素早く集められるツールでとても便利なものです。
ただ、進化の過程で今まで盛んに利用されていたSNSではどうしても他者からの評価が気になってしまうものになってしまっていました。他者の目を気にしてしまう事で、本来「気軽さ」「自由さ」が持ち味のSNSに縛られるという皮肉な状況に陥ってしまっていたのです。
その状態に疲弊した若者たちは「ありのまま」で居れることを求め、そのニーズを捉えて「BeReal」をはじめとしたリアル共有アプリが登場し、新しいSNSスタンダードが生まれています。それと同時に、SNSに「常に繋がっている安心感」があるためSNSの利用は辞めれない。これからも新しいSNSが誕生すれば利用してみて、居心地のいい場所を見つけ続けていくのでしょう。
これからも人々のニーズは多様に変化すると予想されます。アプリケーションは、このような時代や人々のニーズを汲み取り「あったらいいな」をテクノロジーを通じて再現してきました。今回取り上げたリアル共有の文化はどのように発展していくのか?また次はどのようなアプリが人々の心を掴むのか?これからも目が離せません!

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