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永代供養墓プロジェクト入門2      目的と対象を明確化する

ほとんどの場合は、目的も対象もあいまいにしか考えていない

 お寺の永代供養墓プロジェクトのコンサルティングを行う時、必ず行うのが、目的と対象の明確化です。何のために永代供養墓を建立するのか、どんな人を対象に永代供養墓を募集するのか、ということです。

 この話をしようとすると、そんな面倒なことは必要なのか、という反応をする住職も少なくありません。中には、そんなのはもう決まっているから、早く具体的な内容を考えて欲しいという住職もいます。どんなデザインのものをつくればいいのか、どうしたら売れるのかを考えてくれと。

 そうした気持ちもわからないでもないが、それでも、やはり何のためのプロジェクトなのか、どんな人を対象にするのかを整理しなければ、方向性を見失う可能性があります。

 気がせく住職に同意しつつ、やんわり、何のためなのかという話に持っていきます。雑談のふりをしつつ、どんな人たちを対象に考えているかを探っていきます。

 ほとんどの場合は、目的も対象もあいまいにしか考えていません。はっきり言葉にする人の場合は、子どものいない人が増えているからそうした人のために建立する、檀家制度はもう限界だから新しい組織をつくるために建立する、といったものが多いようです。

きれい事のミッションではなく、本音を自覚するのが大切

 最近は、ヴィジョン、ミッションといったワードをつかう僧侶もいて、そうした場合ほとんどが、きれいに飾られたヴィジョンやミッションを語ってきます。そして、聞こえはいいですが、本音が無く、空虚なものが少なくありません。
 ところが30分、1時間と話をしていると、だんだんと本音が見えてきます。本人がはっきりと意識していない場合が多いのですが、他の寺がやっているから自分もやろうと思った、今どきのお寺は永代供養墓くらいないとだめだと思った、いい永代供養墓をつくって他にアピールしたい、といったものもけっこう多いのです。

 これらの目的は、あまり感心できるものじゃない、と思われるかもしれませんがが、それでも本音は大切です。この本音部分をきっちり自覚できないと、方向性を修正することもできません。本音を隠したままプロジェクトが進んだ場合、結局、中途半端な結果しか得られないことになるのです。

 本音の自覚が無いと、方向性があっちに行ったり、こっちに行ったりしてしまいます。最終的に何のためにつくったのかわからないものを建立することになってしまう可能性があります。そうしたものは、募集の対象が見えていないから、得てして募集がうまくいかないのです。

 かっこわるい本音でも、それをきちんと自覚することが大切で、その上で、方向性を練り直すことが必要なのです。きれいに飾られた言葉は、むしろ自身の本音を隠してしまい、その結果、プロジェクトは迷子になってしまいます。

プロジェクトを長い目で考える

 目的も対象も、住職の考えだけでなく、それぞれのお寺がおかれた環境も無視できません。例えば、都市部のお寺なのか、地方のお寺なのかによっても、目的は異なってきます。

 都市部のお寺であれば檀家以外の人をひろく募集することも可能ですが、人口の少ない地域ではそれは簡単ではありません。そうした地域では、中心となる対象は既存檀家ということになります。そして檀家中心か檀家以外中心かによって、永代供養墓の企画は大きく変わってきます。

 またお寺のスタンスとしては、まずは困っている人にお墓を提供したいだけなのか、契約した人とその後の関係性を続けたいのかによっても、企画が異なってきます。不安を抱える人に安心を提供するためか、その後の供養を提供するためなのかということです。

 経済的リターンを求めるのか、そこそこ回収できればいいのかも、明確化が必要です。

 こうした目的と対象を明確化することによって、建立するもののデザイン、規模、納骨方法などが決まってくるのです。永代供養墓プロジェクトを長い目で見た場合、このプロセス無しに成功することはありえないのです。


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