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桜の季節19

前回の桜の季節はこちら。


  スレイブが庄之助を追いかけていってから10時間以上が経っていた……。辺りは茜色に染まりつつある。スレイブと庄之助は一体どこで何をしているのやら……。取り残された様に枯れ果てた桜の木が、風に枝を泳がせている。

  すると、そこに怪しげな影が2つ忍び寄ってきた。

「すいませ~ん。誰かいらっしゃいますか?」

  男はさしあし忍び足で中庭に入ってきた。後を追ってもう1人入ってきた。

「どうだ山路、(やまじ)誰かいそうか?」

  先に入ってきた男は庄之助宅を覗き込んだ。

「いや、どうやら誰もいないようでっせ。」

「油断するなよ、奥にはまだ誰かいるかもしれんからな。」

「へい。しかし、東(あずま)兄貴…。」

「なんだ?」

「なんとも立派な木ですね。」

「あん?まぁそうだな、こんな木があるくらいだ結構な金持ちだろう。」

「下見の時にもそう思ってここに決めたのは覚えているんですが……。」

「何が言いたいんだ?はっきり言え!」

「へい、確か下見に来たのは4日前だったんですが。」

「ああ。」

「その時はこの木、確か桜が満開に咲いていたんですよね。」

「そうなのか?」

「へい。桜の木ってこんなにも急に枯れてしまうものなんですかね?」

「さぁな、お前の見間違えじゃねぇのか?」

「そんなはずはないと思うのですが……。」

「そんな事はどうでもいい!さっさと金目の物を頂いてずらかるぞ!」

「へい!」

  玄関へと向かう山路。

「待てバカ!」

  山路を追いかけ頭を叩く東。

「何するんすか!痛いじゃないですか!」

「お前は本当のバカか!そっちは玄関だろう!」

「へい、中に入ろうかと。」

「なんのために裏から庭に入ったと思ってんだ?」

「そうでした!こっちからですね。」

  山路は土足のまま縁側にのぼり納戸に手をかけた。

「ダメです、開きませんぜ兄貴。」

「どけ、こうするんだよ。」

  東が納戸に手をかけた瞬間、玄関の方から誰かが走って来る足音が聞こえた。

「兄貴!誰か来ますぜ!」

「何!」

つづく

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