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しらないこと”大変だけど”やってみようよ 〜プレイング・ウィズおさるのジョージとバックドラフトの伝えたかったこと〜

ド派手で煌びやかな、大スターだらけのアトラクションが並べられたUSJ。その中でも最も私が好きなのが、今日紹介する「プレイング・ウィズおさるのジョージ」です。子供向けのアトラクションと侮るなかれ。ジョージを観て育って、おおきくなっていった大人たちも一緒にもう一度「おおきく」なれる、そんな気づきに溢れています。

私はよく「バックドラフト」をツマミにしながらこのアトラクションのことについて何度か話してきました。大きなコースターや魔法界、ゲームやマンガの世界で生まれる「楽しい」感情や、文字通り命を賭けて挑むアクションの大変さこそ、映画の魅力を伝え、かつ「楽しい」のセレクトショップたるユニバーサル・スタジオ・ジャパン最大の、開演当時から変わらぬテーマであると私は確信しています。その根っこの伝道師こそが「バックドラフト」であり、それと同じように伝えきったのが「プレイング・ウィズおさるのジョージ」であると思うのです。

今回は両方のアトラクションに触れながら、画面の向こうのあなたが「USJらしさとは何か?」を見つめ直すきっかけになってくれたら嬉しいです。

「バックドラフト」が伝えたいこと

バックドラフトは映画の特殊効果の裏側を見せることで、その大変さと作り手の想いを心で感じることのできるアトラクションです。勢いある爆発と炎を映画の中でどう描くか。それがビデオの中のこの一文に包まれています。

「バックドラフトとは、過酷な撮影条件の中で火災と消防士の命懸けの活動をリアルに描こうと奮闘した俳優とスタッフの姿なんです。」

Ron Howard - Director of 「Backdraft」

重要なのはリアリティです、という言葉がただのハッタリではないことがわかるでしょう。作り手は文字通り「命を賭けて」いるのです。とてつもなく重いものではありますが、アメリカだけでなく日本にもいる勇敢なヒーローを、同じように描く。そのこだわりを感じるアトラクションでもあるのです。

バックドラフトといえばとにかく「熱」。爆発と炎の尋常ではない凄まじさと同じくらい、過酷な中で映像を撮り続けるスタッフ、そして体験する私たちの「熱」も尋常ではありません。USJで最もつまらないと評されながらも、最も熱狂的なファンがわんさかいるバックドラフトは、そのメッセージを掴み取ればとても楽しいものです。「知らない世界を知っていく楽しさと大変さ」。私たちはそれと身近にいながら、つかず離れずいると思っています。

「おさるのジョージ」を見つめて

さて本題。「プレイング・ウィズおさるのジョージ」は、映像アニメーションとライブ・エンターテイメントを組み合わせたアトラクションです。先ほど触れたように、もちろん小さな子供を対象にしたアトラクションではありますが、大人にとっても大きな気づきがたくさんあり、何度体験しても楽しめます。

アニメーターというのはアニメーションを作る特別なアーティストのこと。そこに大きな愛を包み込んで始まるのが「プレイング・ウィズおさるのジョージ」です。あえて特別、としたところこそ、このアトラクションの真髄があります。お兄さんがジョージを描く時、とにかくそのパーツの「大好きなところ」を紹介したり、「ジョージが思い切り走ったり飛び回ったりできるように」丈夫に足を描き込みます。これを愛を込めて命を吹き込むことと言わずしてなんと言うのでしょう。

同時にお兄さんは「絵を描くのが好きか」という質問も、私たちに聞いてきます。心から「大好き!」と手を挙げる子供や大人もいれば、何かを抱えて答えられない大人や子供もいるでしょう。夢を抱えていたけど呪いに変わってしまったり、きっかけがあって心から好きになれなくなってしまったりすることも、生きていけば絶対にあります。あなたは、その大好きを今も大事にできていますか? これは、私自身への問いかけでもあります。

強烈なカウンターパンチを喰らいながら、ショー本番が始まります。ステージの中から出たり入ったり飛び回るジョージと共に、「知らないこと」を「知っていく」遊びを一緒にしていく私たち。手遊びやお絵描きを通じて、もちろん大人である私も、もう一度楽しい気持ちを毎度思い出しています。

手遊びの最大のねらいのひとつは「コミュニケーション」です。身振り手振りは万国共通。同じ表現をすることで生まれる楽しい気持ちが、わたしたちをひとつにします。このスタジオで出会う「ともだち」は、普段どんなことをしているのでしょう。ネットの海に潜り込んだりしているのでしょうか。同じようにご飯を食べ、同じように笑い、同じように泣いているのでしょうか。わからない、から「わかりあえる」。そんな空気を作ることこそが、この場面の特筆すべき点の一つだと私は思います。

ねじ回しを見つけるくだりについて。最初はじっとしていて、と指示するお兄さんも、ジョージの好奇心からくる行動の連続から、最後は大きな「虹」を見つけて「次のアニメーションのアイデア」を浮かんでいきます。「虹は、“僕たちの周りにはいつだって美しいものがある”ことを教えてくれる」。好奇心が生んだ軌跡こそ、もしかしたらわたしたちが一番忘れているものかもしれません。

私はよくこのアトラクションを「バックドラフトの志を継いだ」と表現します。それは危険な撮影や、「ものをつくる」大変さだけでなく、「好奇心から知らない世界を知っていく楽しさ」があるからです。知ろうとしなければ、知らないままです。悲しい感情はありませんが、楽しい感情も生まれないままです。

心が曇った時、勝手にフィルターをかけて世界がモノクロのように見えたことはありませんか。僕自身はあまりこんな言葉を使いたくありませんが、今日はあえて使わせてください。USJは「コンテンツ」が見せてくれる色を楽しむ世界でもあり、もしコンテンツに雲がかかると途端に楽しめなくなります。それは他の人への攻撃にもつながったり、愛を維持できなくなることにも繋がります。

でも、大丈夫。僕らには「ジョージ」がいます。ジョージの好奇心あふれる行動を見て、私たちはもう一度楽しかったことや気持ち、思い出を取り戻すのですから。「君のアニメを見る時は、また会える」と、お兄さんは手を振ります。虹で彩られた世界と一緒に、私たちはまた現実の中へと溶け込んでいくのですが、きっとジョージはいつでも、あなたのことを待っていますよ。

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