オス同士の対立とメスの寿命

キイロショウジョウバエの戦略

キイロショウジョウバエのオスはAcpsを用いてメスの寿命を縮めようとする

オス同士の争いが激しい場合、より多くの子孫を残したいオスはどのような戦略に出るのでしょうか?

「生物の目的とはあくまでも子孫を残すこと」を如実に表すような現象がキイロショウジョウバエで見られます。

キイロショウジョウバエのオスは交配する際、精子と共にAccessory gland proteins(Acps)というタンパク質をメスに送り込みます。

このタンパク質は一種の"毒"のようなもので、メスの寿命を縮めることに役立ちます。

自分が既に交配したメスの寿命が短くなるということは、他のオスがそのメスと交配する確率を下げるので、結果的に自分の子孫が多くなることに繋がります。

Acpsには"毒"としての一面だけではなく、メスの繁殖戦略に影響を与えるようなさまざまな機能が知られていますが、大切なことはオスがAcpsを自分の繁殖に有利になる為に利用しているということです。

冷淡な話になってしまいますが、キイロショウジョウバエのオスにとっては自分の子どもを産んだ後に他のオスと交配するくらいなら、メスは殺してしまった方が良いということでしょう。

参考文献:

Chapman, T., Liddle, L. F., Kalb, J. M., Wolfner, M. F., & Partridge, L. (1995). Cost of mating in Drosophila melanogaster females is mediated by male accessory gland products.Nature,373(6511), 241–244. https://doi.org/10.1038/373241a0

Ravi Ram, K., Ji, S., & Wolfner, M. F. (2005). Fates and targets of male accessory gland proteins in mated female Drosophila melanogaster.Insect biochemistry and molecular biology,35(9), 1059–1071. https://doi.org/10.1016/j.ibmb.2005.05.001

Rice W. R. (1996). Sexually antagonistic male adaptation triggered by experimental arrest of female evolution.Nature,381(6579), 232–234. https://doi.org/10.1038/381232a0