ユッカ vs. ユッカガ

相利共生、裏切り、そして対抗戦略

ユッカとユッカガは共生関係にある
ユッカガはユッカに大量の卵を産み付けたい
ユッカは大量に卵が産み付けられた果実を中絶する

植物と昆虫の関係を観察すると、進化がどのように「裏切り行動」に対抗してきたのかがわかります。

例えば、ユッカという植物とユッカガという蛾は相利共生の関係にあります。

相利共生とはお互いが助け合って生きているというような状況を指します。

具体的には、ユッカはユッカガに受粉してもらい、ユッカガはユッカに卵を産み付け、幼虫はユッカの種子を食べることにより成虫になっていきます。

しかし、生存競争が激しい自然界では「裏切り」が必ずと言っていいほど生まれます。

ユッカガからしてみれば、産めるだけ卵を産んでしまえば良いのではないでしょうか?

残念ながらこの行為はユッカにしてみれば、「裏切り」です。

なぜなら、大量に幼虫が誕生してしまうと、ユッカは種子を全て食べられてしまい、結局遺伝子を次の世代に残せなくなるからです。

そうすると、ユッカは対抗戦略を発達させるようになります。

それが「中絶」です。

ユッカは大量に卵が産み付けられた果実を中絶させることにより、ユッカガが種子を全て食べてしまうのを防ごうとするというわけです。

ユッカガもせっかく産み付けた卵が成虫にならなければ困りますので、結果としてユッカガは適当な量の卵を産み付けるようになるというわけです。

裏切りたいけど、裏切れない、そういった微妙な力関係の中を多くの生物は生きているのです。

参考文献:

Pellmyr, O., Huth, C. Evolutionary stability of mutualism between yuccas and yucca moths. Nature372, 257–260 (1994). https://doi.org/10.1038/372257a0