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【第24話】最初で最後(前編)

携帯もポケベルも無い、家の電話も使えない。

卒業式の日に決めた2人の約束。

待ち合わせ場所も時間も変更は出来ない。

どちらかが風邪をひいたら?

親に計画がバレたら?

たくさんの不安が押し寄せて、とにかく私は異常に早く家を出た。

親は疑っている様子はない。


ーーーー切り取りーーーー

つい最近、オカンにこの話を振ったところ青天の霹靂だったようで…

親を騙して!と、30年以上経った今になってクソほど怒られました。

なんでやねん…。

ーーーー切り取りーーーー


家から自転車と電車で30分ほどにも関わらず2時間前に出た。

アリバイなんて作ってないから気まぐれで親がソフトボールチームの誰かに連絡したら…

バレる前に家を出れば惨劇回避。

約束の時間の1時間半前、開場前で人もまばら。

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チケット売場の端っこで柱に持たれながら駅から出てくる人を眺めていた。

今日が隆史(仮)と会える最後の日になるのかな。

決めた訳じゃないし会おうと思えば会える距離でもある。

前の家にはおじいちゃんとおばあちゃんもいるし…

それやのになぜか、この遊園地デートは最初で最後のデートになると頭のなかで位置付けていたように思う。

それが何故かは今でも分からんけど、たった数駅の距離でも離れることは大きかった。

いつも一緒にいたからこそ、いざ離れたときの喪失感は既に味わっていて莫大なものだった。

今日この日だけを糧に乗りきれた。

あぁ、そうか。

確実な約束を交わせなくなったから、終わりを予感したのかもな。

でもこれは当日、待っていたときには一切思っていなかった。

そこそこの経験と年齢を重ねて振り返って初めて分かったことでもある。


それでもあの時、ボーッと人の流れを見ていた私の思いは一つ。

はやく隆史に会いたい。

あれほど蔑んで見ていた恋する乙女になっちゃってるよね、すっかり。


だんだんと駅から降りてくる人が増えてきた。

人混みの中から好きな人を見つける時っていうのは不思議なもので、ほんとにその人だけがクッキリハッキリ見える。

それはきっと隆史も同じやったんやろう。

お互いがすぐ互いを見つけた。

んん?

ハッとして時計を見た。

只今、約束の1時間前…

似た者同士!

1時間前の合流に関しては何も話さなくても分かるからか突っ込むこともなく…

2人でチケット売場に並んだ。

その間、どちらからともなく手を繋いだ。

大人なら腕を組んで肩を寄せ合いながら悲壮感たっぷりになる状況。

小学校を卒業したばっかりの2人が手を繋いで並んでいる姿は他人には微笑ましいかもしれないが多分最後のデートである。

初めてのデートが最後のデートかもしれん…そんな思いは心にギュウギュウに押し込んで私は笑顔を絶やさなかった。

新しい中学校のことや、新居の事、そんなことも一切話さなかった。

今日の事しか話さなかった。

何に乗る?

何を食べる?

後先のこと何も考えずに目の前の事だけ。


さぁ、いよいよ人生で一番…綺麗な思い出の1日が始まった。


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読んで頂きありがとうございました!

今回のnoteを書いているうちに何度も泣きそうになりました( ;∀;)

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