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【第11話】忍べない

スイミングにそろばん教室、ひたすら時間を共にしていた隆史(仮)と私。

4年生のクラス替え発表の日…

イエス!! 同じ組!!

またもや1組、4年1組。

新しい顔ぶれに囲まれても不安は無かった。

隆史の存在も大きいが、あの乱闘事件はもう影を潜めていた。

それなりにヤバイ奴は次から次へと出てくるので皆のメモリーも上書きされていったんやろうと思う。

あまり女子だけで固まってワイワイするのは好きでは無かったけど、4年生から男子と女子に分かれることが多くなる。

何かしらで女子だけに分かれたとき、話すことと言えば好きな男子の事で溢れていた。

早い話、まず最初に好きな男子を公表し被らないよう牽制。

被ったら被ったでお互いを褒め称えつつ、腹のなかでは「こいつにだけは負けねぇ」とライバルには無い自分のセールスポイントを生み出す、編み出す、考え出す…っ。

互いの好きな男子が他の子を好きと知った場合、共に散ったライバル同士は手を取り合い慰め合うといったことが、この頃から盛んに行われていた。

私は全く無関心を装い…いや本当に無関心で、遠目に女子の生きざまを見ていた。

片想い、告白、失恋…

中には猛者もいて、上記のことをかなりのループ率で繰り返し…時には引き戻し成功したり。

みんな好きな男子がいていいなぁ…

とか思ってねーし(笑)

好きとか嫌いとかクソめんどくさっ。


そんなわけで私はその話題になると逃げる訳でもなく分析をしていた。

分析をして、あいつはこういう子が好きなんちゃうとか言っているうちに相談を受ける立場になっていた。

助言も求められた。

何となく助言したら上手くいく女子も出始めた。

大人の顔色を伺う事がいつからか得意になっていた私、同級生の好みを導きだすなんて事は容易かった。

相手が聞きたい言葉を発するのも容易かった。

ある日また女子だけに分かれたとき、1人の女子が言った。

「忍ちゃんはいいなぁ」

なにが?

私が不思議そうな顔で振り向くと、続けざま…

「両想いやもんなぁ~いいなぁ」

?…だれが?

さっぱり分からん、誰の事言ってんの??

「隆史と忍ちゃん、いつも一緒やもんなー」

だからどうした?


え?

両想い?

誰と誰が?

私と隆史が????

……

………

ボンッ!!!

冗談じゃなく自分が爆発した…かと思うくらいの衝撃を受けた。


隆史と遊びたいというより、隆史と一緒にいたい。

何をするわけでもなく、隣に座っているだけで暖かい気持ちになり本音を話してしまう。

知らない間に目で追っている。

ポカポカする、それはレイ。

いや、分かる、分かるぞ。

確かにポカポカする。

それって好きってことじゃない!!


心の中で一人二役を見事演じきった。

初恋ではない。

たぶん東大阪時代、史郎くんが初恋だったと思う。

それは親も公認。

隆史を好きだとしたら、それは親が知らない恋。

好きなのか、いや隆史は友達やで?

私の中でループした結果、すぐにそのループは終わりを告げた…むしろ単発。


好きや


世の中に好きか嫌いか普通しか無いと思っていた私は、嫌いじゃないなら好きやんかと結論付けた。

もちろん後ろからラリアットをかましたくなるくらい、あんた隆史を好きやろがと今なら思いますけどね。

立派に好きで、惚れてましたよ。

あれが初めての本当の恋ですよ、ちゃんと好きでしたよ。

ストーキングまでしたんやから。

ああ、合点がいった。

それはつまり…恋。


どうりで女子達が私からの助言を素直に聞いていたはずや…

恋が上手くいっている(と思っている)人からの助言は聞くわな。


私は錯乱や葛藤を見破られる前…即座に「まぁね(ドヤァ)」といった表情でやり過ごした。

心の中で花火が上がり、そこにぴったりなバラードは浮かばなかったけど心の中のリトル忍は右往左往。


いやまてよ?

隆史は?

隆史はあたしのこと好きなん?!


当然の疑問である。

私は好きと認識したけど、隆史は?

仲の良い友達と思ってたら?

私が好きって言って、隆史が困ったらどうすんの?

ついこないだ、クラス別れても友達って言うてたし友達って思ってるやんな??


あほやなぁ。

好きにならない理由ある?

もっと早く気付けよ、3年の夏休みにはもう好きやったんやって。

ーーー切り取りーーー

咲いて散る花 優しさは恋
無償の想い 明日なき2人
出逢い とまどい 傷つけては恋
治しては愛 答えなき問い
相思相愛 初めての恋
一途な想い 果てなき未来
叶わぬ願い 厳しくも恋
奪うのが愛 降り積もる迷い
咲いて散る花 優しさは恋
無償の想い 明日なき2人
出逢い とまどい 傷つけては恋
治しては愛 答えなき問い

(GLAY "恋"より一部抜粋)

この曲を初めて聞いたとき、聞く人によって様々な捉え方をされる曲やなぁと思った。

私は隆史を真っ先に思い出した。

ーーー切り取りーーー


私には内心、焦ったり慌てたり喜怒哀楽が乱舞すればするほど外面は平静そのものとなる癖がありまして…

例えば、おは天単発から更に天井単発を喰らい、内心では既に台を粉々にぶち砕き店長あたりもヤッちゃうくらいメラメラに燃えていても、顔は涼しい顔をしている感じです。

隆史への恋心ーKOIGOKOROーに気付いても、平静を装い普段通りの対応を見せていた。

男子だけの時、隆史達はそういう話をしたんやろうか…

多分してないな。

ほんま女子は色恋沙汰好きよね、小さい頃から。


時は少し流れて4年生の夏休み。

いくら平静を装ってみても、気付いたからには止まらないのが恋心ーKOIGOKOROー。

相談する女友達はいない、そもそも出来ない。

ほとんど毎日、隆史と合う。

好きやと気づいたからといって、スカートを好むわけでも言葉使いが綺麗になるわけでもなかったけど、隆史と目が合い触れる度にドキドキという感情が芽生えた。

ベタやな、ベッタベタ。

( ´-ω-)y‐┛~~

好きと言えば友達関係が壊れるかも…

隆史は離れていくかも…

そういう負の考えが増えだすと叩き壊したくなる性格もこの頃から。

そして好きと思ったらすぐ言っちゃう性格。


いつものように、そろばん教室が終わり途中まで一緒に帰っていた。

隆史の家は近いけど、長い商店街の出口までいつも一緒に歩いてくれた。

なぜかその日、私は少し後ろを歩いていた。

下を向いて歩き立ち止まり、ふと見上げたら隆史の背中が遠く感じたのを覚えてる。

待って…と言いたかった。

「隆史!」

(待っ…)


「あたし、あんたのこと

好きやから!」


おぇ???

おいおいおいおい、今なんてった??

頭で考えていた言葉と口から出た言葉がちがーーーう!

しかもまぁまぁ大声で叫んでるぅ~!

隆史が振り向く前に、私は商店街を走り抜けた。

後にも先にも、この時の猛ダッシュには勝てない。

そこは商店街のど真ん中。


商店街の中心で愛を叫ぶ


すいません、色々すいません。


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読んで頂きありがとうございました!

ちょっとGLAYの恋、聞いてきます。

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