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【第17話】事件前夜

ガレージに隠している仔犬が心配…

起こされる前に目が覚めた私、まずは仔犬の食料を調達しなければ…

今思えば仔犬はちょうど離乳食の時期だったと思う。

こっそりキッチンに忍び込んで使えそうなものを探し、空き缶を見つけて水を入れた。

缶詰の空き缶もお皿用にいくつか持ち出した。

食パンも1枚ビニールに詰め込んだ。

玄関にあるカブトムシのケース裏に隠しておいた、ここならオカンにはバレない。

我ながらよくやったと思いながら、いつものルーティーンに戻る。

玄関の水とパンを回収して、学校に向かう時間より少し前に家を出た。

弟は登校班に任せて、学校の当番やからと走り去った。


売り出し中の看板があるガレージを開けたら朝陽に照らされ段ボールが見えた。

良かった誰にも見つかってない!

ガレージを少しだけ開けたまま、段ボールに飛び付いた。

クゥ…

音を聞き付けた仔犬がゆっくり立ち上がった。

生きてる!

ひとまず安心。

昨日一緒に置いていたバスタオルを裏返し、仔犬には水とパンを与えた。

…食べない。

でも水は飲んでる。

缶詰の空き缶に入れた瑞は飲んでいるけど、パンは匂いを嗅いでプイっと顔を背ける。

もうひとつの空き缶に水を入れパンを浸してみた。

それを食べやすいように細かくちぎって、空き缶に入れておくことにした。

段ボールに仔犬を戻し、水とパンも入れて私は周囲を確認しながらガレージを閉めて学校に猛ダッシュ。

…が、間に合わず。

担任に遅刻の理由を聞かれたので、途中で忘れ物をして戻ったけど忘れていなかったと言った。

ここで上手く誤魔化さないと家に電話されるからドキドキしたけど…何とか上手くやれた。

一時間目が終わり、すぐ隆史(仮)に相談した。

事の経緯を話すと隆史は何かを決断したような顔をした。

「隆史が昨日連れ帰った仔犬は…?」

「俺んとこは飼っていいって」

良かった、説得出来たんや!

ホッとした顔の私を見て隆史が言った。

「母ちゃんが仔犬用のペットフードとか買いに行ってくれてるから、帰ったらそれ少し持っていったるわ」


ありがたいのと、申し訳ないのと、ホッとしたのと…感情がグチャグチャだった。

今考えても、隆史という男はすごいヤツやったなぁと思う。

「ありがとう…」

この一言が精一杯やった。


家に帰らず直でガレージに向かった。

朝、段ボールに戻した仔犬が外に出ていて、ガレージを開けた瞬間に小走りで向かってきた。

元気になってる!

顔つきが違うというか…

急いで抱き上げ、ガレージを少しだけ開けておいた。

水は無くなっていた、パンも少しかじったような痕跡がある…

持っていたビニールに残っていたパンを入れて、給食室にある余った牛乳を持ち帰っていたので注ぎ入れた。

学校には翌日空き瓶を戻せば大丈夫なはず。

「忍?」

ガレージの隙間から隆史の声。

隆史が仔犬のフードを持ってきてくれた。

それからポチと名付けた隆史が連れ帰った仔犬も…

2匹は顔を合わせた瞬間ジャレ合い始めた。

身の回りを整え、これからどうするかを隆史と話し合った。

とはいえ、行き着くところは説得である。


このまま、このガレージで隠すわけにもいかないしバレないとも言いきれない。

早く説得して、うちの犬にしなければ…

分けてもらった仔犬のフードと、給食室からパクった牛乳で数日やり過ごした。

それは事件前夜。

思わぬ形で企みが発覚したのであった。


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読んで頂きありがとうございました!

雨がすげぇ…

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