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pin百物語「廃旅館」

※※※実体験に基づくガチな恐怖体験です。

んでもって長いです。

怖い話苦手な人はリターンがオススメ。



高3の冬、遊び仲間の間で流行っていた肝試し。

私はホラー系も心霊系も平気というよりむしろ大好物で、それまでの肝試しでも先頭を歩いていたほど。

住んでいるところが歴史のある奈良県だったこともあり、ちょっと地面掘れば遺跡やら木簡やら出てくる。

ちょっと山登れば過去に栄えた旅館やホテルが廃墟となって肝試しエリアとなる場所もある。

旧道や旧トンネル、峠、信貴生駒スカイラインなんかも有名。

もちろん当時の私達は上記に上げた有名どころは制覇していた。

なかでも信貴生駒スカイラインは都市伝説も含めてネタには困らない場所。

スカイラインを拠点として周囲には廃ホテル、廃別荘群、廃旅館等があった。

大阪と奈良を隔てる生駒山、信貴山、車がそれほどでもない時代は峠を徒歩で越えていた。

そしてバブル崩壊…

山道や峠周辺には人が集まり、旅館やホテルで宴会、宝山寺の遊郭、それらが全て下火となり私が高校の頃にはすっかり肝試しに適した場所となってしまっていた。

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(宝山寺遊郭と呼ばれた所)

遊び仲間がJR王寺や法隆寺近辺に多く、その日も10人ほど集まっていた。

その内8人が原チャで、JR法隆寺の駅前で肝試しの話をしていた。

現在地の法隆寺駅から山の方へ行けば信貴生駒スカイラインにぶち当たる。

ターシー(仮)がスカイラインにぶち当たるまでにある、とある廃旅館がヤバイと言い始めた。

行き方は分かるのかと聞くと、分かると。

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(辺りは真っ暗、夜の法隆寺駅)

2人はそれぞれ2ケツで連れていくことにして、早速原チャを走らせようとした。

その時…

ズルルルルルルル…

ガッシャーーーン


どえらい音が鳴り響いた。

そして私は地面に横たわっていた。

??????!

タイヤがマンホールの真上にいた状態に気付かずアクセルを回したのである。

それで直ぐ様、スリップして倒れた…

私は心配半分、爆笑半分の中…バイクを立て直してみたところハンドルが曲がっていた。

「タケ(仮)!」

ハンドルがあらぬ方向に向いてる私の原チャを見て合点承知と近付いてタイヤに蹴りを入れた。

私は原チャを固定、蹴りでめでたく向きは戻り私も多少の擦り傷だけだったので気を取り直して出発した。


今思えば、これは予兆。

間違いなく前兆。

原チャが直らなければ良かったのにと後々、後悔することとなる。


山に近付けば近付くほど狭くなる道。

街灯もない。

原チャのライトだけが頼り。

(ストリートビューで当時の道順を追ってみたところありました、昼間でこれ↓)

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こんな道を進み続けると広く舗装された山道に出た。

上には廃ホテルや、建物が散在しているので過去にはここらも酒の席で賑やかやったんやろう。

その広い道を少し進んでまた脇道に反れた。

何かしら看板があったような気もする。

すると行き止まり?のような少し拓けた場所にたどり着いた。

私「ここなん??」

原チャのライトで照らし出したその場所は草が生い茂っていたが、ターシーの指差す方には草が少し倒れている?所があった。

その草が倒れている所はよく見ると石畳のようになっていて、そのさきに廃旅館があるという。

原チャのライトを消せば、そこはもう真っ暗で何も見えない。

が、肝試しに長けていた私達の原チャの中には懐中電灯が常備されていたので8人はそれを取り出し行く気満々で準備を始めた。

すると、原チャを持っていない女子2人が怖がり行きたくないと言い出した。

それなら、ここで原チャをエンジンかけたままにしておくから待ってればという事になった。

8人は石畳に沿って1列で進んだ。

先頭はターシー、次に私。

ターシーはその廃旅館までは行ったことがあるが、その時のツレがビビった為に中に入るのを断念したとか。

廃旅館となってから、同じような肝試しをする輩が絶えない為に中はそこそこ荒らされているらしい。

石畳を進んだ先には2階建ての廃旅館があった。

暗闇と懐中電灯では外観の全容は分からなかったが、入り口は目の前。

見える範囲でもうすでに荒れている。

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(実際の場所ではないですが、雰囲気は非常に似てます…ビックリするほど似てます。)

今までて一、二を争う雰囲気というのは全員が感じ取っていた。

おもむろにウエダ(仮)が≪写ルンです(カメラ)≫を取り出し、残りの7人で廃墟をバックに写真を撮った。

入り口は名前の読めない看板と、枠だけになった扉に割れたガラスが散乱して一歩進むたびにパキパキと音がする。

荒らされていると言うだけあって、ペンキの落書きや空き缶にお菓子の袋、極めつけに多数のエロ本が本来なら怖い場所を…そうでもない錯覚に陥らせた。

中に入り大広間のような所で、8人いるので二手に分かれようということになった。

理由は2階への階段があったから。

中に入ってみると見た目より案外広く、奥行きがある感じだった。

私のグループはそのまま一階を探索した。

懐中電灯でどこを照らしてみても廃旅館と呼ぶのに相応しい。

照らした先に微かに風呂と読める文字を見つけた。

私「風呂って書いてんで」

微かに読める文字の下にある矢印に沿って4人で先に進んだ。

どうやら大浴場…

棚があったのか無かったのか、バキバキに壊された木片が散らばって歩きづらい。

懐中電灯で照らした先に大浴場…


うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!



先を歩いていたタケが叫んだまま立ち尽くしていた。

タケの懐中電灯が照らすその先には…


一面、真っ赤な大浴場


恐らく誰かがペンキで塗った…んやろう。

血じゃない、絶対血じゃない…

4人誰もがそう思っていたというより思い込んだ。

半笑いで、こんなんペンキやってー

誰かのイタズラやってー

と、互いに声を掛け合ったものの真っ赤な大浴場は映画でよく見る血で染まった風呂場を思い出させる。

とにかくここは出よう…

4人で脱衣場らしき部屋を出て大広間に戻ろうとしたその時…


う…ぁぁぁぁぁぁぁ…ぅぅ


えっ?

4人は今、お互いの存在を感じるほど近くに固まっている。

タケ「2階のやつら…?」


そう呟いたタケも含めて4人全員が違うと分かっていた。


…後ろからや…


暗闇に目が慣れてお互いの顔もすこし見えるようになっていたけど、恐らく全員が顔面蒼白。

そして自分達が今戻ってきた大浴場の方向には振り向けなかった。

後ろから聞こえたということは、大浴場から聞こえたということ…

山びこの原理?

それにしては時間が経ちすぎてるし、誰の声だか…


とにかくもう外に出ようとタケが言った。

大広間を抜けて玄関口に戻る前に、階段から2階の4人に声を掛けた。


私「うちら先に出てるで!」


返事が聞こえない。

外観はよく見えんかったけど、一階と同等やったとしても今の声で聞こえんってあるか?


ガタッ…

あぁぁぁぁぁ!!!


ターシーの声!!


階段の方から聞こえた。

2階にも真っ赤な部屋でもあったんか…


なんやねんこれ!

早く!


他の3人の慌てた声も聞こえる…?!

私を含めた4人も慌てて階段に駆け寄った。

懐中電灯で階段の上の方を照らすと…


首吊ってる…???!!


ターシーが暴れながら押さえていた首元に何かが絡まっているように見える。

パニックで足が階段に着いたり着かんかったりしてる!!


一番背の高いタケがすぐに階段を上がり、ターシーの身体を抱き上げた。

タケ「落ち着けや!!暴れんなや!!」


ターシー以外の3人はターシーの首に絡まっている何かを引きちぎろうとしていた。

私はターシーの首に絡まっている何かの根本を懐中電灯で照らした。

壁があちこち崩れている天井からコードのようなものが見えて、それがターシーの首に掛かっているようにみえる…

私「タケ!身体を持ち上げて!」

パニックを起こしているターシーの身体をタケともう一人で抱き上げた。

上にいる3人で余裕が出来たコードのようなものをターシーから外した。

咳き込むターシー、恐らく少しの間はガチで首がしまったんやろう。

「登るときはこんなん無かったのに…」

「登るとき、あったら気付くはずやん」


落ち着きを取り戻したターシーが言った。

「ここはあかん。」


8人は小走りで外に出た。

そのまま一切振り返らずに原チャリを置いている場所まで戻った。

待ちくたびれた2人が遅いとブチブチ文句を言っていたけど、8人は一切取り合わずに各々の原チャに乗った。


溜り場にしていたタケの家に着いたときには全員が疲労困憊で倒れるように眠り込んだ。


数時間後、一人また一人と目を覚まし全員が起きた。

そしてターシーの首を見て夢でも幻でも無かったと思い知らされた。

どういうわけか首にはハッキリとコードのような跡が残っていた。

咳き込んだ程度で済んだ割りにハッキリと染み付いてるような跡…。


そして互いに起きたことを話したところ、1階と2階…互いの呼び掛けた声や大浴場での叫び声は聞こえていなかったことが分かった。

2階も、奇妙な声が聞こえて慌てて階段に向かったと…。



後日、あの時撮った写真を現像に出したウエダが血相を抱えてタケの家に来た。

私とターシーもその場にいて、様子のおかしいウエダにどうしたのかと聞いたら無言で写真を差し出した。


全体的にモヤが掛かっているように見える中で縦に伸びたモヤが…


ターシーの首に巻き付いていた。



#pin百物語

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