夢を語る罪

その人は夢を語るのが上手だった。その、夢物語の中には「一緒に」「俺たち」という言葉が必ず散りばめてあった。

彼があえてその言葉を散りばめたのか、単純な気持ちで言ったのか、それはわからない。

でもそれを聞いた女性は、未来の話を私にしてくれるなんて、と喜んだ。協力できることは何でもする、と言った。そうしないと彼との未来が現実にならないからだ。

ある一人の女性がブログにこう書いている。

「私たちの関係ってなんだろう、と思う。彼は言葉では何も言わない。でも、2人の未来の話しはするから、そういうことなんだろうな。あえて関係を聞かなくても、2人の未来を考えてくれてるみたいなので、それでいいかな」

この女性はこの後4千万円を彼に渡すことになる。彼女からすれば「私たちの未来」のために彼に渡したが、私の存在が発覚し彼女が激怒。彼を詰めても彼は何も言わない。怒りを持ったまま、彼女は今生活している。

もう一人の女性はこう書いている。

「辛いこともたくさんあるけど、○ちゃんが語ってくれる未来のためには、この辛いことも乗り越えないといけないと思うから、がんばる。大切な人がいるのも知ってるけど、私との時間を大切にしてくれるから、幸せ。これからもたくさん同じ景色が見たいな」

彼女は営業でトップクラスだったが、彼に頼まれて仕事上で不正をし、彼にバックマージンを渡したことが発覚して仕事を失うことになる。彼女は毎月300万円を彼の生活費として渡し、車を買ってあげたりなど、貢ぐ女になってしまった。5千万円は越えているだろう。社内でもバックマージンを渡していると有名だったが、誰も彼女を止められなかった。

彼はお金を渡してくれる女性を大切にした。だから女性は勘違いしていった。女性にお金を使わせ、喜び上手だった。彼にとってみると、てだ単純にお金や欲しい物が手に入って嬉しいだけなのに、勘違いした女性は「その笑った顔が好き」「私がもっと笑わせてあげる」と言って、どんどんお金を渡した。最初は数万円から、最後は数千万円まで。

数ヶ月前のニュースで、男性が複数の女性に誕生日を偽って数万円程度のプレゼントやお金をもらった、として交際していた女性から訴えられた、というのがあった。それを聞いた彼は「数万円なんて少ないよね。どうせやるんなら、最低2千万円はもらわないと」と女たちがお金を渡したくなる笑顔で言いのけた。それを聞いたとき、私は数年間の中でトータル数万円にしかなってないから、私の存在は特別なんだろうか、と思ったりした。

彼にとってみれば、好きでもない女性を大切にしているのに数万円では見合わない、ということなんだろう。

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