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地方紙が残念になる理由を検証

現在、弊社は三重県津市相生町自治会問題を報道しています。同町自治会長による市役所職員へのパワハラ、不正会計、補助金・交付金の不正申請などでついに百条委員会まで設置されることになりました。

それで何が驚いたかと言えばそれまでコトが露見していたのに地方紙が全くスルーしていたことです。さすがに議会が荒れたので

後追い報道を始めたのですが、伊勢新聞などは多少報じたものの中日新聞はほぼ沈黙状態です。その理由は簡単です。

(1)同和問題や暴力団が絡んでいること

(2)弊社が最初に報じたので新聞に掲載すると示現舎の名前を有名にしてしまう

(3)単純に能力や気概がない。

などが挙げられます。記者たるものやっぱりスクープはとりたいものです。仮に市長を辞任まで追い込めたら名誉なことでしょう。しかも「追跡 自治会長問題」といった具合に長期連載でルポができます。場合によっては賞もありえます。報道発表モノではない刺激的な仕事ができるでしょう。

もともと本件は弊社に一枚の告発文が送付されてきたことから始まりました。これって新聞・テレビ各社の人ってショックじゃないですか。縁もゆかりもない川崎市の零細出版社に津市民が頼ってきたのです。マスコミではダメだという判断か、あるいはマスコミに告発したけど取材してもらえなかったか、どちらかでしょう。自分が地元メディアの記者なら屈辱ですよ。

地元メディアが報道できない理由

地方の市役所に行くとプレス(テレビ、新聞)の専用の部屋があります。これは何を意味するのか。要するに彼らも役所の一部なのです。だからあまり攻撃的な記事は書けないし、報道発表の範囲で報じざるをえません。それともう一つこんなエピソードを紹介します。ある地方局出身者の方の結婚式に行きました。すると来賓の祝辞が地元の警察のお偉いさんでした。

「●●さん(警察のお偉いさん)に記者として育ててもらった」

こう言っていました。いわゆる「サツ回り」の中でのご縁でしょう。一般企業と違って報道機関所属とは言え記者は個人事業主的な性質があります。先輩社員が手取り足取り教えるというより警察、自治体職員、議員などが取材のイロハを教えるのです。

つまり公的機関と地方紙はある意味、運命共同体。だからメディアは「警察が逮捕したら報道する」ということになるし、警察は「N(NHK)や大手が報道したら捕まえる」という情けない実態もあるのです。こうした傾向は地方に限らず全国紙でもあると思いますが・・。

気概を生まない背景は就職活動にある?

「正義のペンをふるう」「弱者に寄り添う」このタイプの記者は気概はあっても正義の暴走というわけで活動家化します。ただそういう気概や熱気が必要なのは事実です。ではその熱を持たないのは「就職活動」に一因があるかもしれません。

今回、津市が現場だから東海地方を例にとりましょう。記者になってジャーナリズムに身を投じたい! そういうタイプは希少種ではないでしょうか。当の地方紙記者が自嘲気味にこう話してくれました。

「有名大学出身者が東海地方で就職活動をする場合、中部電力、トヨタ、名古屋市役所、そして中日新聞を併願するんです」

マスコミ志願者の就職先としては若干、イメージが異なるのではないでしょうか。新聞、テレビ、出版、これらを併願するなら分かるけど上記の場合、ただ地元の有名企業を受けただけという。例外があってアナウンサーの場合、在京の大学を受けても北海道から沖縄の局まで片っ端から受験するそうですが、職種の性質が違いますからね。

「名古屋市役所部長の方がトヨタの部長よりも給料がいい」

「中電は一生安泰」

こんなことを言いながら新聞社なら給料も高く、何より記者職はカッコいいから選ぶのだと。おそらく東海地方に限らず各地方でも「地元有力企業からメディア選択」というパターンは少なくないと思われます。

それとこれは記者個人よりも日本企業の問題でもあるんですが、評価が「減点方式」も関係しているかもしれませんね。今回のように同和だ、暴力団が絡んでトラブルがあっては仮にスクープしたとしても「問題記者扱い」になるかもしれません。

逆に報道発表を漏れなく、そして「特オチ」(一斉報道から遅れたこと)がなく仕事した方が上層部としてもありがたいわけです。

自分も一般マスコミの試験に落ちたから、こういうことを書くと「ひがみ」「妬み」と言われるので遠慮していました。まあしかし明日はイブだし、来年は年男だから許してください。






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