オイル発掘日誌Day19 葵衣咲里彩編
2023年度卒業公演『オイル』で演出を務めております、4回生の葵衣咲里彩です。
最近はナイチンゲールダンスにハマっています。ハマりすぎて、みんなでプランクする時ナイチンゲールダンスのネタを流してました。しんどいプランクも早く時間が過ぎる気がするのでおすすめです。ちなみに、同期の已己巳己はヤーレンズが好きです。
ついに発掘日誌も最後ですね。
ここまでのみんなの記事、全部読みました。よく知ってるはずの同期や後輩の記事でも、「こんなこと思ってたんだ!」「そんなことしてたんだ!」って新しい一面をたくさん知ることができてすごく楽しかったです。
さあ、ラスト。何を書こうかな。
私がジゲキで経験してきた部署は、演出・演出補佐・舞台監督・舞台監督補佐・制作・衣装です。4年間もいると、色々な部署をやりますね~!
それぞれの仕事内容やこだわりなんかはこれまでの記事を読んでいただくとして笑、全ての部署で私が共通して持っている気持ちは、「この公演を通して何を伝えたいのか」ということです。演劇を目的にするのではなく、演劇を通して伝えたいことを主軸に考えるようにしています。
ジゲキでは、公演開始前に部員全員で次回公演の台本選考会を行います。演出希望者たちが自分のやりたい台本を持ち寄ってプレゼンし、部員の投票によって演出が決まるのですが、その台本選考会でも「この公演で伝えたいテーマ」「この公演を通して観客の皆さんにどんなことを感じてほしいのか」をメインにプレゼンします。
直近の公演でいくと、2023年度秋冬公演『フランダースの負け犬』のテーマは、「正論とは本当に正義なのか?」。正しいと思うこと、大切に思うことは、人によって、はたまたたとえ同じ人でも状況によって変わっていくものではないか?今の自分が信じているその正論は本当に正義なのか?見方を変えればその正論が自分や他人に対しての武器になることがあるのではないか?と見つめ直してもらいたい、というのが演出の伝えたいことでした。公演が始まってしまうと各部署全く異なるそれぞれの仕事に奔走していくわけですが、1番始めの出発点はみんな同じなんです。伝えたいことを主軸に動いていくジゲキの公演の在り方が、私は大好きです。
今公演『オイル』にももちろん伝えたいテーマがあるんですが、まだ皆様にお届けしていない今公演のテーマを今ここで話してしまうのも野暮なので、私が初めて演出した公演をご紹介します!
『パンドラの鐘』作:野田秀樹
あらすじ
1941年、長崎。ピンカートン財団の下で古代遺跡の発掘調査をしていたオズとカナクギ教授は、ひとつの釘の発見から、古代王国の姿を蘇らせていく。
王の葬儀が執り行われている古代王国。葬式屋の青年ミズヲと、兄に代わって女王となったヒメ女が出会う。ある日、ミズヲは異国の地で掘り出した巨大な鐘をヒメ女の元へ持って帰るが…
決して掘り出してはいけなかった「パンドラの鐘」に記された、古代王国の滅亡の秘密。長崎を古代を繋ぐ、<未来>の行方とは_
『パンドラの鐘』は、今公演『オイル』の片割れともいえるような作品で、同じく原爆や太平洋戦争を扱った作品です。
私が設定していたテーマは大きく2つ。まずは「反戦と平和」。もう1つは「時を超えて届けたい気持ち」でした。
幼いヒメ女とミズヲが戦争に巻き込まれていく姿、長崎に原爆が落ちると分かっているからこそ悲しく切ない、でも少し皮肉なオズとタマキの別れ。そして、時を超えて繋がるミズヲとオズの記憶。
この物語において各人物がどのような役割を担っているのか、「反戦と平和」を届けるためにそれぞれの人物をどのように見せたらいいのか、テーマを伝えるために各シーンにどのような役割があるのかということを、たくさん考えていました。衣装にも、その役に込めたい役割を意識した装飾を施してもらっています!
「時を超えて届けたい気持ち」は、鐘の中で死んだヒメ女の願いが届かなかったとは思わせないように、ヒメ女の願いを託された相手を観客の皆さんに自分ごととして捉えて頂けるようにしたいなと思っていました。最後の最後、現代の環境音にのせてヒメ女とミズヲが振り向き、客席が照らされる演出は、この意図からつけたものでした!役者の演技もとっても素敵で、お気に入りのシーンの1つです。
役者には、役を演じる上で一人称視点でこのテーマを考えられるように、ジゲキ部員として込めたい思いも伝えていました。
大学生活の多くの時間をジゲキにかけてきました。誰よりもたくさんの時間をジゲキのみんなと一緒に過ごして、酸いも甘いも、涙も笑顔も、雨の日も晴れの日も一緒に経験してきました。この時間は、間違いなく私の青春で、私の人生の宝物です。
いつか時が経って、みんなの生活の形が変わっていても。時代が移り代わって、自由劇場という組織の形が変わっていても。今の私たちがジゲキにかけてきたこの気持ちは、ヒメ女が私たちに託してくれた願いのように、きっといつか誰かに届くと信じたい。
そんな話を、座組のみんなにしていました。今もその気持ちは変わっていません。
私、ジゲキのこと大好きなんです。
同期も、先輩も、後輩も、ジゲキで過ごす時間も、ジゲキがつくる演劇も、全部大好きです。
こんなに大好きなものに出会えた私は幸せ者だと本気で思っています。
2020年、大学1回生の冬、ジゲキが活動停止の処分を受けました。ものすごくお世話になった、その年の卒業生の先輩方の卒業公演は打てませんでした。
2022年度、活動停止期間中の先輩方の尽力もあり、無事活動停止を乗り越えて活動再開できたジゲキで、幹部代になったのは私たちでした。
なんとかジゲキを復活させたい、ジゲキを守りたい。たくさん入ってくれた新入生に楽しんでもらいたい。私たちが大好きなジゲキを、みんなにももっと好きになってもらいたい。そんな一心で頑張っていたのですが、自分たちの力不足に悩み、記録に残っている以前のジゲキの姿を見返しては絶望していました。
演技の質も、演出の技量も、集客力も、部活としての体系も、ここからまた1から作り上げていくしかない状況。私たちが憧れた部停前のジゲキに戻したくて、先輩方にあの時廃部にしておけば良かったと思われないようにしたくて、あまりにも今の状況を卑下しすぎていた故に、褒めていただいた言葉を素直に受け入れられない時期もありました。卑屈すぎますね笑
でもね、今のジゲキ、本当にすごいんです!!!!!
役者もスタッフも、本当にすごい。
部員数や脚本の派手さはまだまだ及びませんが、その分一人一人の熱量はすっっっごいんです。何かを言おうとすると、今公演のネタバレになってしまう…!
素直にそう思えるようになったのも、ここまで作り上げてくれた後輩たち、今まで助けてくださった先輩方、ずっとジゲキを見に来てくださっているお客様のおかげです。
本当に、本当にありがとうございます。
これを書きながら、泣いています。泣きながら書いています。
色んなことがありました。その全部を抱きしめて、最後の舞台に立とうと思います。
お客様に、ジゲキの先輩方に、後輩たちに、今まで支えてくださった全ての方々に、心からの感謝を届けます。
長々と失礼いたしました。
それでは、劇場でお待ちしております!
精一杯の感謝と愛を込めて。
葵衣咲里彩
神戸大学演劇部自由劇場vol.226 卒業公演
『オイル』
作:野田秀樹
演出 : 葵衣咲里彩
▼日時
2024年
3月2日(土)13:00〜/17:00〜
3月3日(日)13:00〜
▼場所
シアター300
▼料金
無料カンパ制
▼ご予約はこちらから
https://ticket.corich.jp/apply/298712/
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