見出し画像

曖昧な言葉を扱うコンピュータとじじです

2023年3月24日、札幌から東京への飛行機に乗っている

庄康さんが先日旅立ち、親族とともに東京でお別れをするために帰ってきた。友人によく話していた通り、祖父は2つの面で自分に影響を与えていた。

  1. お酒をあまり飲まないようにすること
    お正月に集まると、彼は昔から酒好きで、焼酎を飲みすぎて自我を失い、阿波踊りのように手を振りながら踊り出すこともあった。ある時は会社の飲み会で暴れて肋骨を折ったこともあった。河島英五の曲を永遠と歌い続け、「漢は生意気くらいがちょうどいい。漢は大きな夢を持て。お前がハタチになったら酒場で2人で飲みたいものだ」という歌詞をずっと口ずさんでいた。おそらく、彼が自分と一緒に酒を飲みたいというのは本当の願望だったのだろうが、彼の酔っぱらった姿を見ていた自分はお酒を避けるようになり、彼の願望は叶わなかった。

  2. 年を重ねても知識に貪欲であること
    彼は東北大学を出て、日野自動車の工場長であった。そして彼は読書家だった。自分が家に遊びに行くたびに、彼が図書館で借りてきた本が毎回入れ替わって部屋に置かれていた。司馬遼太郎の『竜馬がゆく』は読破するには骨が折れる大作だが、彼はそれを踏破する過程で長時間イスに座っていたために腰を痛めたことがあった。しかしその後は腰の治し方に関する本を読み、筋トレをしたりして自力で腰痛を治していた。彼は何か問題が発生した場合、知識を使ってdebugする姿勢を持っていた。老体にも関わらず、機敏に腕立て伏せをする姿には驚かされ、大学生の頃には80過ぎの彼に腕相撲勝負を申し出たが、完敗だった。それが悔しかったのもあって、自分はオーストラリアで筋トレを始めた。

彼は人の死生についてもかなり意識的であった。健在な時からも死を前向きに受け止める姿勢について語っていたし、『人の魂は死後にどこに行くのか』『死後の世界』のようなテーマの書籍も彼の本棚を飾っていた。

彼は熱心な仏教徒ではなかったと思うし、どちらかというと世俗的な人であったが、「極楽浄土」や「涅槃」などの言葉を口にすることがあったため、一部仏教的な死生観を持っていたと思う。彼自身のポジティブな姿勢を含め、その循環的でシステマティックな思想はとても魅力的だ。自分は宗教に興味があり、大学でアラビア語を学び始めてからは、イスラム教をきっかけにキリスト教やユダヤ教まで一神教を中心に興味を広げていった。自分自身はどの宗教の信者でもないが、それぞれの教義や思想の生い立ちについても共感することができた。宗教はHumanityの根源にあるものであり、曖昧なものや固定化されていないメカニズムを解き明かす発明であったと思う。

人間とコンピューター

ここ1週間で、自然言語で動くOpen AIの大規模言語モデルは世界のあり方を大きく変えたと気づいた。しかしその新しいコンピューター/OSとも言えるものは、曖昧なものがあってもエラーを出さずに動く。まるで人間や世界そのものだ。

「AIは意志や知性を持てないので、人間にはなれない。」と言われてきたが、GPT-4の登場により、高い精度で自然言語と高級言語の両方を扱う能力を見せたことで、その考えは見直されるべきであると思った。

「むしろ人間が自然言語を扱うコンピュータである。」今まで何となく頭で考えていたことが確信的になった気がした。

Pythonなどの高級言語は厳密にタスクを定義しなければエラーが発生し、実行されることはなかった。一方で、自然言語モデルは自然言語と高級言語の両方を扱うことができる。

引用

自然言語を扱えることの革新性は、以下の2点にある。
1つ目は、自然言語は文脈や定義が曖昧であり、その抽象的な概念を扱うことができること。
2つ目は、高級言語では扱えなかった、高次元で複雑な表現や振る舞いを記述することができること。

引用

高級言語のコーディングは厳密であるが、柔軟性や抽象性に欠けていたため、地球や生体メカニズムの非合理的なところまでは再現できなかった。しかし今回の自然言語モデルは、高級言語の厳密さ(普遍的な物理法則や数理)に加えて、理屈だけでは説明しきれない曖昧さ(抽象概念や妄想、非合理でランダムな現象)もタスクとして認識し、曖昧なまま実行できる。

プロンプト
出力

つまり、この大規模言語モデルは、曖昧さのある世界の現象をある意味より忠実に再現することのできるコンピューターであり、自然の一部でもある。

世界の原理を解き明かすためには、数理や機械語だけで現象を説明するのではなく、曖昧な概念を含めたままモデルを実行する必要がある。そのような意味で、計算機は新しい自然であり、自分自身も古代にプログラムされたコンピューターの一部であり、自然の一部である。

そんなことを考えているととても嬉しい気持ちになった。

ここから先は

29字 / 1画像

FICTITIOUS BIOGRAPHYはフィクションみたいなアンフィクション日記になると思います。架空のことが現実になったり、現実が架空…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?