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ともだちの家にいたおねえさん

やさしくて、わたしのともだちは、そのおねえさんのことを、
「ねえちゃん」
と呼んでいた。

だから、きょうだいなのだと思っていた。

ある日、わたしのともだちのともだちから、事実を聞いた。
それは、わたしの知らない世界だった。

「あのおねえさんね、彼氏が借金で連れてかれちゃって、
ここのお父さんに、
『彼氏助けてやる』
って言われて、この家に来たんだけどね、
てごめにされちゃって、それでずっとこの家にいるんだよ。」

時代劇では見たことあったから、言葉の意味はなんとなく知ってたけど、「てごめ」って、リアルなひとの口から聞いたのは、たぶん初めてだ。

よくわからないけれど、何か、体の中に、
「すん・・・」
って音がして、何かが入っていった気がした。

そのあとも、おねえさんは、いつも優しく、
わたしたちを迎え入れてくれた。

あのおねえさんは、今はどこでどう過ごしているのだろう。
なんだかときどき、思い出してしまう。

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