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【少額短期保険 成長の軌跡と保険の新潮流】に関する質疑応答

以前外部セミナーに登壇した際に参加者のゲストから多くの質問をいただきました。いただいた多くの質問の中から、一部をご紹介します。


回答者

justInCaseTechnologies CEOの畑氏
前職で少額短期保険で3年社長を務めた中江氏


少額短期保険に関する質疑応答

Q.大手保険会社に比べて少短は小回りが利くと思っていたのですが、デジタル化・キャッシュレス化での一番の悩みは何だったのでしょうか?

中江氏:一番の悩みは、やはり代理店様経由で入ってくる紙の書類やお金(現金)が多かったことで、それらをいかにダイレクトにするかが一番苦労したポイントです。そこについては一番大きな代理店様にご賛同いただき、導入していただくことで乗り越えたという経緯があります。当然それによって代理店様が楽になる部分もありますから。

Q.従業員数が20名という状況で、ご説明いただいたような組織体制の構築は可能でしょうか?(これに関するご苦労等あれば)

中江氏:私の経験した少短は、最後は26名でしたが、初めは20名程度です。人間を増やそうと思いましたのでそこまで増えましたが、おそらく20名でもウェブ申し込みが初めからできていれば可能だと思います。
 
畑氏:ほぼ同じなんですけれど、justInCase少短も少人数で運営しています。ものすごく面倒くさい紙の処理等が無いのであれば十分にできます。BPOサービスにもお世話になっています。

Q.ミニマムでどのくらいの販売見込みがあれば立ち上げ可能だと思いますか?

畑氏:当社ももうすぐ5年ですが、それは一旦置いておくとして、かなりのストレスケースを想定して、3年で2万件というのが一つの指標になるかと思います。なぜかというと、ANP(年換算保険料)が1万円だったとして、2万件で2億。ロスレシオを50%とした場合、年間1億儲かり、月1000万円くらいになる。そうするといろいろなコストを支払ってもやっていけるかなと。

Q.少額短期保険会社の場合、再保険会社に出再する割合は何パーセントくらい?

中江氏:一つは地震関係の補償を持つと、認可時点で再保険条件がつきます。それが結構高い割合が求められて、そこに使われることが結構あります。
 
畑氏:私自身は比例再保険しか聞いたことが無いですが、比例再保険で80%~90%くらいだと思います。中江も話した通り、認可の時点で再保険必須ということもあるし、持続性の観点から再保険会社1社で良いのですかという話もある。ご存知の通り日本国内には再保険会社は1社しかないので、そこは戦略として考える必要がある。少額短期保険会社を作るときには、システムも重要、チャネルも重要、再保険もBPOも重要。資本が潤沢にある保険会社の子会社であれば問題ないのかもしれないが、資本がそこまで無い場合にはこの4つが重要です。

Q.小規模な少額短期保険会社を立ち上げる時、再保険会社とのつながりをどう作っていけばよいのか?

畑氏:ブローカーというのがこの分野にはいらっしゃいますので、そういう方々にお願いするというのが正攻法だと思います。成功報酬は支払わないといけないのですが、それが一番いい方法かなと思います。
 
中江氏:私も数社お声掛けしましたけども、当時は自然災害もあったので、なかなか良い条件が得られず、これは比例再保険を入れない方がいいんじゃないかと思った時もありました。ただ、畑が言った通り、ブローカーさんにお願いしたところ良い出会いがあったので、海外の会社にはなったものの、良い手配ができたことで、安定的に事業を運営していけると感じました。 

Q.少額短期保険の販売について、少短会社視点で手を組みたい代理店とは?金融機関窓口販売の可能性は?

畑氏:商品開発力があることが前提であれば、特色あるユーザーを持っている代理店、これに尽きると思います。金融機関窓口販売についてはハードルがあると思う。なぜかというと、いろんな問題があるものの、直近だと円安の影響で外貨建の貯蓄性商品の販売ボリュームが上振れしている。そうなると保障性商品は売れないということになるし、現状仕方のないことではあるが、募集人制度が生保・損保・少短は別なので、金融機関の従業員の方全員に少短の資格取得が別途必要となると2重のハードルがある。これについては、デジタルも含め、いろんな工夫をしないと難しいと思います。

Q.日本の場合ネット型自動車保険の割合は10%と先進国では最低水準で、その理由としては、消費者が能動的な保険購入に消極的だからと考えられる。現状、少額短期保険会社から良い商品が出ても売り上げが伸びない状況があると思うが、それを打破する方法はあるか?

中江氏:やはり魅力的なマーケットというのはある程度の会員のいるマーケット。本業に関して商品・サービスがきっちり浸透していくような土台があれば良いと思うが、そこが無いと厳しいと思います。(少短は)単価が低く、数を追わなければ収益を挙げられない。そういった事業の土台があるところでいかにやっていくかというところだと思います。
 
畑氏:規制を変えるくらいのレベルで、ポイントをばらまいてそこで無料保険みたいなイメージで、もちろんそれは簡単にはできないかもしれないが、見た目の違いがそんなになくても、どっちがいいですか?というのをやっていかないと。あとは、気付かないくらいのエンベデッド※というのがあるかなと思います。

 ※エンベデッド:
「Embedded Insurance(エンベデッドインシュアランス:組込型保険)」のこと。組込型保険とは、さまざまな企業が提供する商品やサービスの中に「保険」を組み込んで提供する新しい保険の販売手法。

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Q.最後の質問。今システム的に実現できないだけで、実現出来たらいいなという保険のアイデアがあれば。

畑氏:マイナスをゼロにするっていうだけではつまらないので、何か別の視点で考えた方がいいんじゃないかと思います。ゴルフのホールインワン保険のような、今までにない価値売り、(その保険に入ることで)自分が嬉しい、他人が助かる、っていう形がいいんじゃないかと思います。
 
中江氏:何かにくっつくものがいいかなと思っています。それ単体では少額で、補償も小さいんですけど、何かにくっつくと魅力的になるようなものができたら。個人的には、100倍規制※がすごくきつかったので、1契約者10億までできるという制度ができれば最高に良い世界になってくると思ってます
。規制緩和対応を少短協会の方にもお願いしたいです。

※100倍規制:少額短期保険業では、保険の区分に応じて1被保険者について引受ける保険金額の上限が設けられており、1保険契約者について引受ける保険の区分に応じた保険金額の合計額(総保険金額)について、それぞれの区分に定める金額の100倍の金額(上限総保険金額)を超える保険の引受けを行なってはならないという規制のこと。

少額短期保険業とは - 消費者の皆様へ - 日本少額短期保険協会

さいごに

いかがでしたでしょうか。外部セミナーの参加者から多くの貴重なご質問をいただき回答させていただきました。
私たちもこれから少額短期保険についてさらなる理解を深め、学びや経験を発信してまいります。


お知らせ

弊社は、グループ企業である株式会社justInCase​​での少額短期保険の運営実績や、保険業界における多数のシステム提供実績​​を活かし、企業の少額短期保険事業立ち上げをサポートする新事業「少短設立Navi」を開始いたしました。
少額短期保険設立に関するご相談・お問い合わせがありましたら、ぜひお気軽にお声掛けくださいませ。


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