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#1【水商売をする母に愛されて育ったが、自分の子育ては心配だ。】

【#1 相談者さん】
・杏奈さん(20代)
・保育士産休中
・水商売をする母親に愛されて育った
・小学生の娘のことが心配で詮索してしまう

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杏奈さんこんにちは。今日は、自分の子どもに、細かいことを気にしたり言ってしまうという悩みですね。


「こんなこと気にしなくていいな、本人に言わなくていいなと思うのに、つい気になって、口うるさく言ってしまうんです。」


例えばどんなことですか?


「例えば、『学校で嫌なことない?』と聞いて娘の反応をみないと気が済まないとか。女の子同士で遊んでいるのを見てて、誰か嫌なことをする子がいないか気になります。」


私は男の子の母親ですけど、すごくわかりますよ。気になることが問題だとは私は思わないのですが、杏奈さんは『そういう心配をする自分をやめたい』って思っているんですね?


「子どもに聞いて『別に何もないよ、大丈夫だよ』って言われても、この子は私に言えないだけなんじゃないかって思うんですよね。だから、ママ友から様子を聞いてもらったり、先生に電話したりして、細かく確認しちゃうんです。」


なるほど。ちなみにご自身のお母さんはどういう人でしたか?


「ウチのお母さんは、うちのこと大好きだったんですけど、水商売をやっていて。だから、すごく大事にされていたんですけどお母さんは家にいないことが多かったですね。」


お母さんは、子育てや家事以外にも忙しいことがたくさんあったっていう印象かな?細かく面倒をみてくれるお母さんというよりは、豪快だったり、自分のことは自分でしなさいっていうような、お母さんだったのかな?


「そうですね。お母さんにはホント可愛がられていたんですけど、相談すると『いつまでもそんなこと気にするな』っていう感じだったかな。」


そうなんですね。杏奈さん、お母さんの説明をするときに、無意識だと思うんだけど「うちのこと大好きだったんですけど」とか「すごく大事にされていたんですけど」って説明をいれてくれるんですね。


「ぜんぜん、無意識でした。」


そうだよね。それで、お母さんに『気にするな』って言われたところで、杏奈さんは気になることがある限り気にしちゃうじゃないですか。そういう自分をどう思っていた?


「細かいこと気にしすぎてダメだなって思っていました」


『そうか、これは気にすることじゃないんだ』って思ったのかな?


「うーん、うち、ばかなんで。考えてもわからないから、いろんなことを考えないようにしてたかもしれないですね。」


自分のことを、ばかだと思っているんだね?


「そうですね。うちがばかだから、子どもも嫌だと思うんですよね。」


それはどういう感じかな。子どもに『お母さんは物足りない』とか、『この人に話してもどうせ無駄だ』って思われそう、みたいな心配かな?


「そうですそうです。」


おっけー。一回、ちょっと整理してもいいかな。まずね、ママをかばっている小さな杏奈ちゃんがいるんだよね。
その小さな杏奈ちゃんがね「ママは私のことが大好きなんだけどね」「ママは私のことを大事にしてくれているんだけどね」「ママは私のことを可愛がってくれているんだけどね」って、私に必死に、何か大事なことを伝えようとしてくれているの。何を伝えようとしているのかな?


「・・・ママはダメなママじゃないよって・・・・ママはバカじゃないよ、すごく頑張り屋さんなんだよって・・・」


そうなんだ。ママのことをよく知らない人にママの話をするときに、ちゃんと説明しておかなきゃっって思うんだね?大丈夫だよ。ママはダメなママじゃないもんね。大好きなママなんだもんね。


「・・・結構ダメな親でしたけどね。でも頑張って育ててくれたんだと思うから・・・」


杏奈さんは、お母さんって他の人から見たらどう見られているのかなっていうのが割と見えている、大人同士の関係性にも敏感な子どもだったでしょう?


「そうですね・・・お母さんは『子どものことをちゃんと大事にしていない』とか、『子どもが子どもを育てている』とか言われていた気がします。うちらのことなんて本当は知らないのに、仕事とか見た目とかで勝手なこという人が多かったから。」


優しくて強い杏奈ちゃんが見えるね。『ママのこと知らないくせに!私がママのことを守らないといけない!』って思っていたんだね。


「・・・そうだったのかもしれないですね。(自分では)ぜんぜん思ったことなかったけど。」


でもさ、本当は子どもなわけじゃん?ママを守りたいという気持ちはあるけど子どもでしょう?本当はママに守って欲しかったって思うことあったんじゃないかな?


「どうかな。」


泣いている小さな杏奈ちゃんがいるね。なんで泣いているの?


「・・・家でお母さんがいない時に、お湯を沸かそうとして。でも足にこぼしちゃって。水ぶくれができて、痛くて、すごく困っていたんだけど。お母さんも疲れて帰ってくるし、上手く言えなくて。」


本当は気がついて欲しかった?


「・・・気がついて欲しかった。いつもと少し違うなってことに、ちゃんと気がついて欲しかった・・・」


そうだったんだね。杏奈さんにとって『お母さんが子どものことに気が付く』っていうのは、愛なんだね。その愛が欲しかったから、自分の娘さんにその愛をあげようとしているんだね。
『お母さんはあなたを見ているよ、いつもと違うことがあったらすぐに気が付くよ、気がついているよ!』って。


「・・・そうだったのかな。でもそんなことしてもウザがられちゃうのに、やだー・・・」


いいじゃん。これは杏奈さんなりの精一杯の愛情表現だったわけなんだね。これからはどうする?
ママ友や先生から情報収集して、注意深く監視して「いつでも小さな変化にも気が付くお母さん」になることは、ある程度の年齢くらいまでは可能なわけなんだけど。


「やばいですよね」


ちょっと違う気がしているからやめたいんだよね?この愛は、娘さんじゃなくて、杏奈ちゃんが欲しかったものなんだもんね?違う愛情表現にしても良さそうだけどどうする?


「・・・そうですね。でも、そもそもの話をしていいですか?まずは、うちの細かい性格を直してからじゃないと、いつか絶対ウザがられるから、それを直したい。」


なんで?細やかなことに気が付くお母さんってすごいじゃん。この地球は細かやな気配りによって回っているよ、少なくとも日本は。


「えー、でも細かいこと言うと嫌われますよね?」



誰に?自分のお母さんに?



「そう、お母さんに・・・いちいち細かいこと気にするなよって・・・」



ホロスコープ(生まれた時の星の配置図)を見ると、お母さんは確かに細かいことは気にしない、自分の気持ちにまっすぐ生きていくようなタイプで・・・なんだろうね、打ち上げ花火みたいな人かな。



「そうそう、お祭りみたいな人。」


お母さんはパワフルだよね。それが魅力だよね。杏奈さん自身は、お母さんに同じ女性として魅力を感じている一方で、結構細やかで、人の気持ちを敏感に感じとるところがあるよね?それは紛れもなく杏奈さんの良さなんだけど、お母さんからしたら焦ったくて「大丈夫よ!」って背中押したくなっちゃう感じだったのかもしれないね?



「・・・まさに、そのとおり。」


杏奈さんはもうちょっと考えたいって思っていることでも、お母さんの世界では「悩んでいる」という風に見えちゃって強引に話を終わらせられちゃったかもしれないね。話そうとしても話し始めるまで時間がかかっちゃって、それをお母さんはあまり待っていてくれなかったとかさ。


「・・・本当に、そうですね。うちが何か考えている時、お母さんはいつもイライラしていたかも。自分でもバカだからこれ以上考えてもわからないから考えても無駄って思ってたし。」


そうだったんだ。『どうせバカだから無駄だ』っていう誤学習をどこかでしてしまったんだね。杏奈さんはね、バカじゃないし、自分で考える力をしっかり持っているよ。
細かいことに気が付く目も、危険から守ってあげたいって思う優しさも持っているよ。今まで自分で考えたくても、お母さんの前では悩み切るまでの時間ももらえなかったんだね。これからは自分で用意してあげられるかな?



「どうかな。ほんとバカなんで、途中で考えるのが嫌になっちゃうかも。」



たぶん『自分はバカだから』って諦めることで自分なりの落とし所をつくっていたんじゃないかな。それに今まで頭の中がいっぱいだったんだよ。『私のママはだめなママじゃないんだ』って、無意識に守ってあげようとする一方で、自分のことは後回しだったね。それは今も無自覚に続いていると思うんだけど、ママのことはもう守ってあげなくていいよね?



「はい、もう、頑張って生きてってよって感じです。そもそも誰かに守られるような人じゃなかったのかも。人から誤解されても気にしないって感じで。」



大事な話をするね。杏奈さんがママとは違う感じのお母さんになっても、ママを否定することにはならないんだよ?



「・・・そうか。」


自分の気持ちがママの答えと違っても、それは当たり前なんだよね。ママと違っても不正解ではないんだよ。
『私はこんなことが好きだったんだ、嫌だったんだ、許せないんだ』って、自分の細かい心の変化にもっと気がついてあげよう。



「・・・・できるかな。」


娘さんも、同じように「私はこんなことが好きなんだ、嫌なんだ」ってちゃんと自分で気がついて、自分の力で自分を守れる人になってくれたら、どう思う?



「それはすごく嬉しい。」


娘さんがそうやって育ってくれたら嬉しいよね?
もうお母さんが注意深く周りから情報収集しなくても、娘さんの『私は大丈夫だよ』って言葉を信じられそうだよね?



「そうなりたいですね。」


娘さんの世界で『私のお母さんは私のことを信じてくれている』というのがあったら、これは、愛だよね?


「愛ですね。なんか恥ずい。愛とか平気で言う人、結構苦手だったんですけど。」


わかる、すごくわかる。でも今日は恥ずかしがりながら、愛の話をしよう。何か特別なことをして「愛している」ってしなくていいんだよ。


「お母さんは私のことを信じている、か」


娘さんには『これだけのことをしている=私はあなたのことを愛している』っていう、愛の表現じゃなくてもいいんじゃないかな。



(続く)


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