【詩】受容

雑踏の中に溶けているさまざまな欲
人並みの中で揺らいでる悲しみ数多
私をきれいにパラフィルムに包みたい
溶け出す己を引き止めて

私とあなたは違う人だと、そんなことすら知らなかった
あなたと私はこの海で、言葉もたずして分かり合えるはずだと

溶けているのは上澄みばかり
人間の生の上澄みばかり
そんなものにあてられたくはない、
パラフィルムの繭に私はこもる

私はあなたと何が違う?
私はあなたを愛している、多数のあなたを愛している
わかるという幻想は、すべて温い粘膜に託して忘れた

揺らぐ
雨の日のスクランブル交差点では傘がぶつかりあうばかり、とても歩けたものじゃない
私は記憶に身を委ねる

揺らぐ
私の乳房はたくさんのあなたの上で跳ねる
ときに流れる血液は、私が何もなせなかったことを知らせた
残酷に

雑踏の中に溶けているさまざまな毒
人並みの中で揺らいでいる痛みが、また
私の生だけを受け容れずに、
私の生だけに流れ込む

私は生のやわらかな匂いが好き
だから人間は皆好き
私は血液の熱い匂いが好き
だから生命は皆好き

好きだから拒んで私をつつむ
硬いフィルム越しに風景は崩れて見えた
好いている私を拒んでつつむ
風景が私を拒んでつつむ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?