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【音声つき】理想の芝居が欲しい方必見!~声優は演技を「ここ」で決めている~【台本】

伝える方も難しいし、拾う方も難しい。



こんにちは、
こちらの記事をご覧いただき
ありがとうございます。

所属フリーで同人音声作品や
ゲームを中心に活動させて頂いている
声優の海音ミヅチです。


私たち演者は、
音声収録を行う際に
クライアントの皆さんが作られたシナリオ、
すなわち台本を読ませて頂くのですが

大まかなベースや完成の設計図はあるものの
詳細な表現計画や
読み方に明確な記載がない部分については、
演者の引き出しや判断に依る部分が大きくなるため
同じ台本でも読み手によって
違った味の演技が出来上がります。

それは正解・不正解や優劣という訳でなく

例えるなら、
仲の良いカップルが同じ映画を見ても
着眼点や解釈が異なることがあるように…

別の人間同士で「判断」や「考え方」を
一致させるのは難しい、ということです。

そのため、
舞台の稽古やアニメ・外画などの収録では
その異なる表現のすり合わせをスムーズに行うため
演出家や音監、ディレクターと呼ばれる方がいらっしゃいます。


とはいえ、
個人で同人音声作品をつくる場合には
演出家やディレクターさんはいません。


そのため、
理想の演技が欲しい場合や
どうしても再現したい表現があるときは
作者であるあなたが、
自分の抱いているイメージや完成形を
いかに演者に具体的に共有できるかが、
クォリティを左右する大きな要素となります。

でも、
自分は演技のことはあまり詳しくないし…
声優さんにより細かなお願いをする場合、
どう伝えたらいいんだろう?

と不安になってしまった方も

予算的にもスタジオ収録や立ち合いが厳しいから
宅録でないと…
どんな音声が帰ってくるだろう…

とお思いの方も、まだまだいらっしゃるでしょう。


それでは、一体どうしたら声優に
台本の意図や状況、キャラのイメージを
より具体的に受け取ってもらえるのでしょうか?



改めて軽く自己紹介



海音ミヅチは
コロナの影響で勤務先が業務解体となって
途方に暮れていた頃、
当時親しくしていた事務所の友人の作品に
呼んで頂いたことがきっかけで
同人音声作品のことを知りました。

そこから自分でもやってみよう!と考え
2021年から同人声優の活動をはじめた、
ちょっと変わった経歴の声優です。

過去には養成所や事務所のレッスンに
足を運んだこともありましたが
そこを去ってからは、
活躍中のナレーターさんや声優さんから
1対1でレッスンを受けたり、
知人経由でWSに参加するなどして、
日々学びを得ています。

たいへんありがたいことに、
2024年の11月現在の時点で出演作品340件
と、沢山の音声作品やゲームの台本に携わる機会を
賜ることができました。

数だけが全てではありませんが、
学んだ経験や現場の場数は
体験した人の中に糧として蓄積されていくものと
私は考えております。

この記事では
それらの経験や学びを活かしつつ、
あくまで私個人目線


①音声収録をする際に声優が演技の判断材料としている主な部分

②台本の「どの部分」に「何が書いてある」と、理想の表現に近づくか


ということを

これからシナリオを作ろうと思っている方や
これから演技を始めようと思っている方向けに

また、
私自身の気づきのメモも兼ねて
ご共有ができればと思います。



※既に制作や演技に慣れておいでの方にとっては
ご存知の内容も多くございますので、
予めご了承くださいませ。



※これが絶対的な正解という訳ではなく、
人の数だけ様々な表現方法がございます。
あくまで私、海音の考える一例としてお楽しみくださいますと幸いです。


※こうして欲しい・こうしなければならない
という強制の意図はなく、あくまで判断材料の提示の目的であり、宅録や立ち合いなしの収録においてのリテイクの可能性を軽減させたい方向けの記事となります。

演技をつくる、演者の判断材料一覧

①キャラクターの外見的特徴・内面的情報


(1)外見的特徴


先ず第一に、
キャラクターの外見的な特徴です。

具体的にどんなものかというと


容姿(背は低い?高い?、スレンダー?むちむち?、地味?派手?)

年齢感(幼女、JK、お姉さん、おばさん)


などがあります。
こういった外見から読み取れる要素を
声の表現に落とし込むことで、

同じ「おはよう、今朝は早いんだね」
という台詞でも

前者…年上の余裕、優しさ、感心
後者…若さ、元気さ、明るさ、驚き

とう声の表現の要素を使い分け、
落ち着いたお姉さんと無邪気で小柄な子供の差別化をすることが出来ます。

(2)内面的情報


そして、
もうひとつ大切なのが


性格(明るい、内気)

人との関わり方(素直、意地っ張り、無関心)

生い立ち(過去の経験、好き嫌いの基準、トラウマ)


といった内面的情報があります。

これらは
他人とコミュニケーションを取ったときや
物語において何かが起こった時の反応、
主人公に対しての気持ちの組み立て方を決める
重要な要素です。


例えば、
「ギャル」のキャラクターがいたとして
「マジかよー宿題忘れてんだけど、最悪」
という台詞があったとしても

元気で弾けるようなアッパーギャル
気だるげなダウナーギャルでは
声の出し方のアプローチが異なるでしょう。


また、
声質を大きく変えずとも
主人公に対しての感情が異なれば
声色や息遣い、間の取り方などの演技のアプローチが変わります

「あ、それ拾ってくれたんだ。困ってたの、ありがと。」

同じ台詞ではありますが、
3人のヒロインは主人公に対してどんな気持ちを
持っているように聴こえたでしょうか?





①のまとめ


このように声優は、

身長・体型・容姿など
キャラクターの外見的な要素

性格・他者との関わり方・生い立ち・
主人公への気持ちなどの内面的な要素で、

声質や感情表現のベースが組み立てられます。


うちのキャラにはこんな特徴があって、
こんな性格で、こういうところが可愛いんだ!
という表現をされたい作者さんは
ぜひ「キャラクター設定資料」や
「台本冒頭部分のキャラ紹介」
などで
これらの要素を事前に伝えられてみてください。


それを踏まえた上で、
送られてくるテスト用のサンプルをすり合わせ
より理想のキャラクターに近づけていきましょう。




②キャラクターがいる空間と、相手との距離・体勢

(1)キャラクターがいる空間と、相手との距離


次なる要素に、
キャラクターがいる空間と、相手との距離
があります。  

特に最近主流になってきている
バイノーラルのASMRにおいては
相手との距離感や位置の再現が
よりシビアに求められている感覚がありますね。  

具体的な例を出しますと、
例えば台本のト書きに

(放課後の図書室で、カウンターに並んで作業)

と書いてあった場合、  


・前提として図書室は静かに本を読む場所

・休み時間ではなく放課後なので、
 生徒の数は少ないかもしれない

・主人公は隣にいるので、
 そこまで距離が離れていない

・作業をしながらなので、
 台詞にあまり意味や含みは持たせず
 自然なトーンの方が適している



という情報がト書きから考えられるため

「そんなに大きく声を張る必要はなく、フラットに喋る」

という演技の組み立てと準備ができるのです。

これらの要素を演技に落とし込んだうえで
下記の台詞を読むと、

「ごめん、そっちの棚にある紙取ってくれる?」

前者のボリューム感の発声となります。

が、
この台詞のト書きがもし仮に

(トイレの中から、リビングにいる主人公に向かって)

というト書きだった場合、

「ごめーん!!そっちの棚にある紙取ってくれるーーーー!?」

と、後者のような発声になるのは容易に想像ができるでしょう。
(遠くに呼びかけているので、語尾もピタッと止まらずに、伸びて息を吐ききっていますね)


更に、
空間の話をもう少しだけ掘り下げると

・のどかな高原でピクニックをしている時
・高級レストランのようなフォーマルな場所での食事の時

などのようにTPOに応じて
同程度の距離やボリュームの台詞でも
(ノイズ除去・コンプレッサーなしの音声のためご容赦ください)

A…のびのびと出した30dbの音声と、
B…意図的に抑えるようにして出した30dbの音声


といった具合で異なる聴こえ方を表現し
緊張感や空気感を変える方法もあります。

※「db」には、
電気の波の電圧の単位や、音の大きさの単位、波の平均値など
複数の用途がありますが、ここでは単純に音の大きさとお考え下さい。


(2)体勢


もし演じているキャラクターが
うずくまっているのであれば
顔が下を向いている表現をしてみるのも
面白いですし

濡れ場のシーンなどでも、
強い衝撃を受けていたり
体重などの負荷がかかっているのであれば
重量感や異物感を伴った声の出し方になった方が
よりわかりやすく
リスナーさんにキャラクターの状況が
伝わりやすくなります。

体勢の情報があると
声優はより鮮明に
その時の状態をイメージしやすくなり
表現にのせることができます。

その結果、演技の受け取り手であるリスナーさんに
より具体的なイメージが湧きやすいお芝居を提供できるのです。



②のまとめ


このように、

・キャラクターがいる場所や空間がどんなところか
(広さや声の伝わりやすさ、話す上で求められる空気)

・相手との距離がどの程度あるのか

・どんな体勢をしているのか

ということが判断できると、
演じるキャラクターが
「どの程度の声量や距離・感覚で話す必要があるのか」
を想像することが出来るため

演技のボリューム呼びかけの強さ
バイノーラルの場合はマイクへの距離アタック位置が変わります。

表記する場所は
各トラックのはじまりや、場面転換が行われた時。

また、濡れ場で体位が変わったりした場合
都度、変化が起こる台詞の前

ト書き等で
その位置や空間・距離感の変化の説明を
入れて頂けるととてもありがたいです。






③状況・心理状態・キャラクター自身の感情


(1)状況と心理状態


声優が演技をつくる判断材料、
1にキャラクターの特徴
2に空間・距離と来て
3つ目に挙げるのは状態・心理状態・キャラクター自身の感情です。

状況心理状態に変化が生じると
キャラクターの感情に変化が生まれ
台詞を読む速度語気の強さが変わります。

気持ちが焦っていると早口になったり、
気持ちが和んでいるとゆっくりとした口調になるのは
皆さん経験があるのではないでしょうか。

例えば、キャラクター自身が

・おしっこを我慢していて、早くトイレに行きたいのに個室が開かない
というシーンなら
状況は→肉体的・社会的なピンチ。
そのときの心理状態は恐らく→焦り・不快感・不安などを感じているはず。

反対に、

・トイレに間に合ってほっとしながら用を足している
というシーンならば
状況は→もう時間も膀胱も周囲の目も、気にする必要はなく
心理状態も→安らぎ・安堵・開放感に変わっていることでしょう。

こちらのいわゆる「おしがま」のシーン
前者も後者も同じ、約8秒の台詞なのですが
同じ時間でも声に出す文字の量や読む速度・テンポが大きく異なります。


また、演じるキャラクターの
ひとり芝居のシーンだけでなく
二者関係においても同様です。

相手に強く訴えかけたい気持ちがあれば、
はっきりとした発声に。
急かしたい気持ちがある時は速い発声になり、
語気も強めになるでしょう。


相手に優しく語りかけるとなれば、
穏やな発声となり
落ち着かせたいときは
ゆっくりとした発声になります。

このような具合で、
状況や心理状態に伴い生じたキャラクターの変化を
声の表現として台詞に乗せていきます。

(2)キャラクター自身の感情


また、
キャラクター自身の持っている感情の種類によって
相手への台詞のぶつけ方や音も異なってきます。

例えば、
同じ焦りという心理状態でも、
苛立ちという感情から来る焦りと
恐怖という感情から来る焦りでは
発声にこのような違いが出ます。

「お願いだから早くしてよ!急いで!」


また、感情が変わると
台詞を言う時の音選びが変わることがあります。

以下はあくまで
数ある解釈の中での変化をつける一部の例ですが


「その程度で、私に勝てるとでも思っていたのか」


相手に問いかける気持ちが大きければ
疑問形となり語尾があがり、
自分の確信や嘲笑の気持ちの方が大きければ
断定しているので語尾が下がる。


「もう…いい加減にしてよ!」

怒りが勝っていると、
語尾が上がって相手に言い放つ表現になり
悲しみが勝っていると
語尾が下がってしょんぼりとした表現にした方が
整合性が取れる

などがあります。


③のまとめ


状況や心理状態がわかると
台詞を読む速度語気の強さが決まり

キャラクター自身の感情がわかると
台詞の語尾の音相手へのかけ方などの
台詞の伝え方が変わります。

ここは演者が読み取るのが
仕事の部分ではありますが、
どうしても譲れない表現や、
絶対に読み違えないで欲しい表現は

(悲痛に、切羽詰まった様子で)
「ねぇ…お願い…!」

(確信しているので語尾は上げないでください)
「イジワルされたい、そうでしょう」

などのように、
かかる台詞の直前にト書きで書く
ベターでしょう。




④書き手の意図と強調・視点と演出・修飾語の位置


(1) 書き手の意図と強調


こちらについても、
読み取るのは演者の仕事になります。

ある程度慣れていれば『ここがポイントだな』
というのは何となくわかってくるのですが

ライターさんに
ほんの少しだけ欲とお願いを申し上げると、

書き手側の意図を
わかりやすく伝えることができれば
演者の表現計画においても
『ここを魅せなきゃ!』がより大きくなり、
演技に反映される確率がググっと上がります。

わかりやすい例をひとつ挙げると

「本当はキミ……マゾ、なんでしょう…?」

のように

3点リーダーと句点で明らかに
単語を立てるための間を作っている
台詞であると、

「あ、筆者さんはここで『マゾ』を強調して
 リスナーさんをゾクっとさせたいのだな。」

という意図を
わかりやすく受け取り表現することができます。

また、
音声作品によくある表現で

有声囁き中に、
部分的に無声音で単語を言わせる指示

があると、台詞にメリハリが生まれて
その部分をリスナーさんに強調したいことが
わかります。

上記で挙げた例は様々ある魅せ方の一部で
シナリオライターさんによって色んな
強調したい要素があるかと思いますが
絶対に拾って欲しい・優先したい演出があるときは
ト書きで対象の台詞の直前に

(『乳首』の部分だけ無声音でお願いします)
「実はここもイジってるんじゃないの…?乳首♪」

とするなど、予め記載しておくと確実でしょう。

また、Wordなどで台本を作られている場合は
太字やマーカー、アンダーライン
など、
強調したい単語に印をつけて表記をしたり
するのも視認性が良くおすすめです。



(2)視点と演出


創作劇でよくある演出の中に
読み手側の視点の変化があります。

具体的には、
モノローグ(ナレーション)、独り言(心の中)、台詞
の違いがあるのですが、

これらも全て声の出し方や
相手への呼びかけの度合いが変わってくるので
文字で伝える時には明確に表記を分けて
差別化をすることが重要です。

「え、なんでこんなことになってるの…」

モノローグ・ナレーション
→状況に左右されない、客観的な解説や状況説明を行う

予め役名の部分や演技指示・対象の台詞の前に
『モノローグ・ナレーション』とわかる表記があると確実です。

独り言(心の声)
→自分の感情は乗せるが、独り言なので
他人に聞かせたり呼びかける目的はない

文字を()で囲ったり、
対象の台詞の前に『心の声』などを記載し
通常の台詞と異なる表記があると、
演者にわかりやすく伝わります。

台詞
→会話や意思疎通が目的なので
相手に呼びかける表現をする。

通常の台詞に関しては
基本的な表記がシナリオライターさん毎に
お決まりだと思うので、
演者にその共有や伝達が完了していれば
特別細かく何かを書かなくても大丈夫です。

視点や演出が変わる表現だけ
差別化の表記をお願いいたします。




(3)修飾語の位置


修飾語がある文章、
特に被修飾語が複数ある文章の場合
演者の解釈や文章の意味によって
読み方や文章を切る位置が
大きく変わることがあります。

例えば
「美しいおねえさんの髪」
という文章があった場合。

この美しいが修飾されるのは

「おねえさん」?なのか「髪」?なのか

どちらでしょう。

順番通りに行けば、
「おねえさん」な気もしますが

文章後半の「おねえさんの髪」を
所有格がついた名詞として捉えるつもりの場合だと
髪を修飾することになります。

人によってどちらとも受け取れてしまうんです。

このような文章は
単語や文節を切る位置で
意味が変わってきてしまうため、
書き手と演者にズレが生じやすい部分でもあります。

これの予防策として、
修飾語と被修飾語の配置を変えて
より適した順番にする
…という方法があります。

先ほどの文章も

「おねえさんの美しい髪」

と順番を整理して
このような言い回しに変えてみることで
『美しい』は髪への修飾か!と、
修飾語のかかる位置がわかりやすくなります。


また、
順番を整理するのが面倒・難しい場合は
句点を使用して

「美しいお姉さんの、髪」

とハッキリと分けることで
違うところで文章を切られる、
というリスクが大きく下げられます。

句読点の量を増やすと文字数と費用が上がるから、
と不安に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが

貴方がアイデアと時間をかけて生み出した
大切な作品を、より理想に近づけられるメリットと

イメージ違いによる
有償リテイクで生じる可能性のある
費用と時間のデメリットを秤にかけるのであれば、

台本に加筆する方がより安全です。
もしそういった部分がある方は
是非取り入れてみてください。


④のまとめ


拾って欲しい意図や
明確に強調して欲しい単語や表現があるときは
対象を太字にしたり、アンダーバーマーカー
引いたりなどで強調したり

予めト書きで、対象となる台詞の直前に
(「乳首」を強調して読んでください)
などの指示があると、
齟齬が発生する確率が大きく下がるでしょう。


また、読み手の視点が変わる場合には
モノローグ、ナレーション、心の声、
などの記載による明確な差別化をしたり

修飾語の位置の整理や、句読点をうまく利用することで
より読み手に意味や流れが伝わりやすい台本となります。



⑤持続のスタート→クライマックス→終わり




これは
キャラクター本人目線として考える部分と言うよりは
演者として考えるべき部分になります。

持続する表現として代表的なのは
泣きの芝居や、音声作品だと射精の前後などです。

例えば、
悲しみなどの感情は二次感情なので
コメディやファンタジーなどの題材でない限りは
いきなりカットインのように
ドーンと泣いたりすることは稀なのではないでしょうか。

悲しくなってしまうトリガーとなった
出来事があり、
それがじわじわと心に効いて…

我慢して、我慢しようと思ったけれど
堪えきれなくなり
思わず涙が溢れてしまったり、
糸が切れて、堰を切ったように泣き始める。

そんなスタートまでのプロセス、
あなたも人生の中で経験があるかと思います。


それを生き物らしい自然な表現にするには
ジェットコースターのような、
クレッシェンドのような、
グラデーション状に出していくのが
人間には浸透しやすいです。

射精も放出に向けて
徐々に気持ちを高めていきながら
グラデーションを描いていきますし

フィニッシュの後に
すぐにケロっと回復していたら…

リスナーさんは
「え、俺との行為のリアクションは嘘だったの!?」
と寂しくなるでしょうから
(嘘喘ぎも好きな方もいるでしょうが、ここでは割愛します)

しばらくは息を切らしたり、
弱めの発声で疲労感を出したり
ところどころ声を掠れさせて事後感を出したり、
などを見事にされている声優さんも多くいらっしゃいますね。

このように、
台本全体の起承転結
山場となるシーンの前後の流れ、
感情のスイッチが入るきっかけとなった部分から
演者はお芝居を構築していきます。


⑤のまとめ


これを台本から読んで組み立てるのは
声優の仕事!ですのでこちらに言及するのは
非常におこがましい気持ちがあるのですが…

少しだけワガママを申し上げさせて頂くと
泣きが始まる場所射精のタイミング
わかりやすく表記されていると
クライマックスに向けての盛り上がりの山や
テンポづくりがスムーズに逆算できます。

また、
どうしてもこだわられたい部分があるときは
やはりこちらもト書きで書いて頂いたり、
速度やテンポを、BPM(音楽の速度)で伝えたり
予め使用予定の効果音を共有する、などといった
「個人差によるブレの無い共通認識」でお伝え頂くのも
非常にわかりやすくありがたい方法です。


さいごに



以上、
共通して演者の皆さんが考えそうな
主要な部分を大きく⑤つに分けてご紹介しました。


これらが簡潔に揃っている台本を拝見すると
声優側は


①外観と年齢はこれくらい、
内面はこういう性格で、主人公をどう思っていて
こういう生い立ちがある
(声質や演技のベース、他者との関わり方)

②この場所の広さはこのくらい
ここは○○をする場所、
距離と体勢はこうだから
声の大きさと負荷はこのくらい
(距離・ボリューム・TPO・重量感)


③状況や心理状態はこうで
キャラ自身はこんな気持ちだから
喋る速度や投げかけ方はこうで
(感情・速度・語気)

④そしてこの書き方だと
ライターさんは『はじめて』を
意識してそうだから強調してみよう。
ここに心の声のシーンがあるから、
演技で差別化しよう。
文の意味的に文節はここで切ったら
リスナーさんは聞き取りやすいかな
(演出・文章を区切る位置)


⑤ここで射精なら、
クライマックスから逆算して、
ここから徐々に速度を早めていこう。
ここで泣き始めるなら、
この辺りからウルウルしたら
より自然かもしれない
(起承転結・きっかけ・流れ)




という風に
角要素からあらゆる表現計画が考えられていきます。

だいたいの台本は大丈夫なのですが、
仮にこれらの情報が著しく不足していたりすると
演者個々人の想像力や引き出しに
お任せする形になってしまいます。


それが面白いし、
○○さんの出してくるものを見たい!

というタイプのクライアントさんであれば
問題ないと思いますが

思っていたのと違う!となってしまったり
リテイク依頼のために時間が失われるのは
クライアントさん側も演者側も可能であれば避けたいもの。

拘りの表現がある場合や
自分の理想どおりの音声を狙うには
これらの情報適切な場所簡潔に提示することが重要です。


簡潔に…というのがまた難しくはあるのですが、
要点をおさえて、誤解の無いようにする
ということをなんとなく覚えておいて頂くと
徐々に「こうしたほうがいいかな?」の感覚が
掴みやすくなってくると思います。

演技をしている声優は、走行中の車。
ディレクションや演技指示はカーナビのようなもの。
作品の完成、というゴールにたどり着くために
台本という地図を見ながら、
ト書きという標識を見て走ります。

上記の要素がわかる要点をおさえて頂くと
我々演者は途中で迷ったり、
止まってマップを見直すことなく
スムーズに目的地に向かえるので
非常にありがたいな…と思うのです。


とても長くなってしまいましたが
ここまでお読み下さり本当にありがとうございました。

あなたの創作が、より楽しく快いものとなりますように。



今後もnoteでは、

個人で活動するフリーランスの
クリエイターさんに向けて
私が役に立った経験・知識のメモや

これから音声やシナリオ制作をする方に向けて
知っているとよりスムーズなオーダーができる
お役立ち情報などを

濃密に、まとめていく予定です。

とても励みになりますので、
好き🩷とフォローだけでも押して頂けると
嬉しい限りです。

ゆっくりになりますが
文章を綴るのも大好きなので
どうぞ今後とも海音ミヅチを
よろしくお願いいたします。



※音声トラックの写真は、
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