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【初心者必見】暗号資産の価格はどのように決まっているのか

暗号資産の世界では、24時間365日休まず世界中の取引所で売買が行われています。株や債権、不動産などと違い、取引所側が一方的に売買を停止させたり特定の条件を設けることがかなり難しいという性質があります。

下がる時はどこまでも暴落し続け、上がる時は尋常じゃないぐらい短期間で高騰することもあります。暗号資産の売買システムは完全な自由市場に近づいており、誰も売買を止めたりできなくなっているという状況があります。

暗号資産を投資を行う際は、大損してしまうかもしれないということをしっかりと理解して売買を行いましょう。そんな中で投資を始めたばかりの方は、いつどのように売買を行えばよいか迷ってしまうという方も多いと思います。

今回は、「そもそも暗号資産の価格ってどうやって決まってるの?」という疑問にお答えするために、売買金額が変動する仕組みについてご紹介いたします。

欲しい人が増えると高騰

暗号資産に限らず、世の中のほとんどの物の価格は、需要(欲しい人の数)と供給(提供したい人の数)のバランスで決まります。

・欲しい(買いたい)人の数が、提供したい(売りたい)人の数よりも多い → 価格は上がる

・提供したい(売りたい)人の数が、欲しい(買いたい)人の数がよりも多い → 価格は下がる

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買う時に「できるだけ安く買いたい」、売る時には「できるだけ高く売りたい」と考える人が世の中では「多数」なので、図のように需要と供給の線が交わる点(売り手と買い手の両者が妥協できるところ)で、市場の価格(最も多くの人が満足する価格)が決定されます。

では、「買いたい人の数」と「売りたい人の数」を実際に確認してみましょう。取引所には、暗号資産の「買い」と「売り」の注文量を一覧で見ることができる「オーダーブック」という表があります。

今回は、世界最大の暗号資産の取引所であるバイナンス(Binance)のビットコインのオーダーブックを見てみましょう。

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買いの注文は「緑色の価格」、売りの注文は「赤色の価格」で表示されていることがわかります。緑と赤、それぞれの合計金額をみてみると、「売りたい人と買いたい人はどちらが多いか」ということが視覚的に確認できると思います。

世界中には数多くの取引所が存在しており、バイナンスだけで暗号資産の価格が決められているわけではありません。しかし、市場価格は取引量が大きい上位の取引所で形成されることが多いので、主要な取引所での売買状況などをウォッチし続けることが非常に重要といえます。

政府がお金を刷ると価格上昇

暗号資産の価格は、日本円や米ドルなど国家が発行する法定通貨を物差しとして価値が測られることが多く、「ビットコインの価値が上がった」などといわれる場合は、法定通貨に対して価値が変動していることを意味します。

日本円しか持っていない場合は気付きにくい事ですが、日本円の価値自体も日々変動しています。

需要と供給の価格メカニズムは、円やドルなどにもあてはまり、国がその供給量を増やせば増やすほど、通貨の価値は目減りしていくのです。

不況になると、国は借金をして通貨をたくさん刷って市場にばらまきます。

アメリカ政府がどのくらいのお金を市場に放出してきたか(いくら刷ってきたか)を確認できるサイトもあります。

アメリカのセントルイス連邦準備銀行が、一般に経済統計データを公開している「FRED」というサイトを見てみましょう。

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出典:FRED ECONOMIC DATA

1980年から現在までの、アメリカドルの供給量(Money Stock)推移を見てみると、コロナウイルスが猛威を振るった2020年3月から急激に米ドルの供給量は増加しています。

アメリカ政府が、ドルを刷って市場にばら撒くと、通貨の価値が下がる「インフレ」が起こります。暗号資産の価値を測る役割を果たす「物差し」が小さくなるということは、逆から見れば暗号資産などの他の資産の価値が大きくなることを意味します。

また、多くの人々がコロナ対策の給付金などで、株式や不動産、暗号資産などを購入しているため、アメリカドル以外の資産が軒並み高騰するということも起こっています。

大口送金で価格は乱高下

ブロックチェーンの世界で暗号資産をたくさん保有しているユーザーは「クジラ」と呼ばれています。そして、暗号資産の価格変動を予見する材料として、このクジラの動きを監視することは非常に重要といえます。

例えば、クジラが取引所で大量のビットコインの売り注文を出すと、先ほどの需要と供給のバランスが崩れて、価格が大きく下がる要因となります。逆に大量のビットコインの買い注文を取引所で出せば価格は上昇します。

オーダーブックでは、「既に出された注文」を一覧で見ることができますが、「これから出される注文」が予見できれば、今後の価格の変動も予想できるということになります。

では、これから出される注文の内、「売り」と「買い」の注文のどちらが多くなるかをどのように判断すれば良いでしょうか。

ブロックチェーンがその他の金融サービスと全く違う部分は、誰でもリアルタイムにネットワーク内の送金状況を見ることができるという点です。そして、「クジラと取引所」の間の動きを見ることで価格がある程度予見できるようになります。

ブロックチェーン分析会社のデータベースを利用すると、取引所の入出金アドレスを簡単に知ることができます。例えば、「取引所バイナンスに大量のビットコインが送金された」というような大口送金をリアルタイムで通知するホエールアラートというサービスも存在します。

大量の暗号資産がブロックチェーン上で動く原因は、誰かが「何らかの理由」で送金を行っているからなのですが、そのコインを売却するための送金である可能性が非常に高くなります。(大口送金の中には、ある暗号資産を別のブロックチェーンに移管するトークンスワップのための送金もあります)

CryptoQuontと呼ばれるブロックチェーン分析会社のリサーチによれば、ビットコインの価格と、クジラが取引所に送金を行う額には相関関係があるようです。

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出典:CryptoQuant

このグラフで言われているのは

・グジラが取引所へ大量入金 → 大量に売る可能性が高い → 価格は下がる

・グジラが取引所から大量出金 → 売らずに長期で保管 → 価格は上がる

というメカニズムが働きます。

時間の経過で価格は上がる

ビットコインは、今この瞬間にも新たに発行され続けています。発行されるペースはプログラムで一定に決められているというのがビットコインの最も重要な性質の一つです。

円やドルは、国の偉い人たちが「刷る」と判断すれば、供給量が増えるのですが、ビットコインに関してはそうはいきません。

ビットコインが誕生した時点から、「この数量」「このペース」でしか発行できませんというルールがプログラムで決められています。このルールを変えることはほぼ不可能であり、ビットコインを発明した人でさえルールを後から変更することはできません。

さらに、この発行量は4年に1度のペースで半分になってしまう(半減期)というルールがあります。時間を経るごとに新たに供給されるビットコインの量は減少するわけなので、需要(欲しい量)と供給(供給できる量)のバランスから考えると、価格は上昇するということに繋がります。

時間が経つだけでビットコインの価格は上昇するのかと疑ってしまうかもしれませんが、実際にこの主張を裏付けるデータがあります。

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出典:Investopedia Bitcoin Halving LUKE CONWAY

ビットコインの新規発行量半減タイミングの1回目は2012年、2回目は2016年、3回目は2020年に行われ、4回目は2024年に予定されています。
1回目から3回目のビットコインの価格推移を見てみると、指数関数的に上昇していることがはっきりとわかります。

大国の規制発表で暴落の可能性

普段から注視していなければならないのは、各国政府が暗号資産に規制をかけるかというニュースです。

2017年に暗号資産のバブルが大崩壊しましたが、その引き金となったのが、中国政府が暗号資産の取引所を禁止するというニュースでした。

2017年までは、暗号資産の世界において中国は世界の中心であり、人民元やドルに比べて自由に移動できるビットコインを多くの中国富裕層が保有していました。

しかし、中国政府の取引所への規制発表により、彼らが持っていた暗号資産を国内では換金できなくなるという不安が広がり、多くの投資家がビットコインを売りまくりました。結果として、価格は大暴落し、バブル崩壊となったわけです。

現在は2017年と違い、様々な取引所が世界中に存在し、各国で法整備が整ってきているので、1国の政府発表が暗号資産全体に及ぼす影響は限定的ですが、アメリカのような大国で重要な発表があれば、他国もそれに追従する可能性も大きくあります。

ネットで盛り上がると高騰

暗号資産を売り買いしているのも結局のところは人間です。売買を行う際には、多くの人が何らかの情報を得てから行動を起こすと考えると、ネットに溢れるデータを市場心理の指標として利用することも有効になります。

全世界で特定のキーワードがどのくらい検索されているかが確認できるサービス、Googleトレンドを使うと、世界中の人達の関心度をみることができます。

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出典:Google TrendsTradingview

過去5年間の「Bitcoin」の検索数と価格の推移を見比べてみると、2017年の暗号資産ブーム、そして2020年末のブーム再来でどちらのグラフも顕著に増加していることがわかります。

2017年は「Bitcoin」の検索数が過去最高を記録しましたが、2020年は急激な価格上昇にもかかわらず、その半分ほどしか検索数が増えていません。2017年には多くの人がビットコインを知らなかったことでアクセスが急増したことが考えらえます。

また、多くの個人ユーザーが参加していた2017年のブームに比べると、2020年は機関投資家、大企業など参入など比較的少数のプレイヤーが価格を押し上げているということも考えられます。

注目している人口が増加することは価格上昇に繋がりますが、少数のお金持ちが相場を支えている場合は必ずしも検索数との相関が一致するわけではないということも覚えておきましょう。

暗号資産に限らず、世の中のありとあらゆる商品やサービスはSNSでの「バズり」によって火がつくことを考えれば、それらの動きをみれば価格の上昇を予見することも可能となります。

例えば、2020年にはテスラCEOのイーロンマスク氏がビットコインに関するツイートを頻繁に行うようになったことがきっかけとなり価格は大きく上昇しました。

ただ注意しておかなければならないのは、ネットの影響力は暗号資産の種類によって大きく違うということです。ビットコインのような暗号資産の時価総額はすでに100兆円を超えており、日本国内で流通している現金よりも大きい金額となっています。

ここまで大きくなった資産の価格をネットでの発言で動かせる人はテスラのような超巨大企業のCEOや大国のリーダーなどしかいません。

ただ、それ以外の取引量の小さい暗号資産はネット上での比較的小さな発言やニュースなどに影響を受けやすくなります。例えば、有名You Tuberなどが市場規模の小さいマイナーな暗号資産を自身のファンにおすすめしたりすると、価格は急激に上昇するという現象がおこります。

需要と供給のバランスから考えれば当然ですが、もともと保有しているた人が少なかったところに、突然大きな需要が生まれるので、価格も上昇するというわけです。

暗号資産は世界規模のプロジェクトがほとんどを占めています。一部、日本人にだけ人気がある暗号資産、または中国人に支持されているコインなどが存在しますが、多くの場合は英語のキーワードで検索してみることをおすすめします。なぜなら大部分の日本語の情報は日本人にしか見られておらず、日本人が暗号資産の価格に与える影響はそれほど大きくないからです。

ハッシュレートが上がると価格も上昇

ビットコイン投資を行う投資家の中で昔から注目されているのが、「ハッシュレート」という数値です。ビットコインを新規に発行するためには、多くの電気が必要となります。ハッシュレートとは、そこでビットコインを発行するために使用されている電力を数値化したものです。

言い換えると、ハッシュレートはビットコインの発行を行っている「マイナー」の人達の、コインをどのくらい欲しいかという度合いを表しています。

マイナー達がもっとビットコインが欲しいと思えば、より多くの電力をマイニングに投下し、結果として全体のハッシュレートは上昇します。逆に、ビットコインに魅力がなくなり、欲しいというマイナーが少なくなればハッシュレートは下落してしまいます。

そのような意味で、ビットコインとハッシュレートには非常に興味深い相関関係があるのです。

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出典:Cryptoslate Shaurya Malwa

マイニングを行っている業者は、「投下する電力コスト」と「利益として得られるビットコイン」を緻密に計算して、どのくらいのマシンを動かすかという決定を行います。彼らは必ず損をしないように、暗号資産に対する市場予想を組み立てて実行しています。そのような意味で、彼らの価格に対する見通しがハッシュレートを通して垣間見えるということになります。

暗号資産の価格は様々な複合要因によって変化していきます。ハッシュレートのような単一の数値が全てを決定するわけではありませんが、参考としてチェックしてみることもおすすめします。

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